8 エルフさん強化計画
チエリーさんと話していると、ある事実が判明した。
「え、チエリーさんって、まだギフトを授かってないの?」
「んだ……。
お金が無かったでよ……」
教団に寄進しないと、ギフトを授かる為の儀式をしてくれないもんねぇ……。
しかし──、
「じゃあ、私が儀式をしてあげるよ!」
今や私にかかれば、無料でギフトを入手できますよ!
アイーシャさんからコピーした「天啓」のスキルを使えば、私でも儀式は行えるからだ。
「え……マルルさん、教団の人だっただか……?」
「知り合いがいるだけだよ。
その人からやり方を教えてもらったの」
「ほぁ~……凄いなぁ」
そんな訳で、ぱっぱと儀式をやってしまおう。
私は教団の信者ではないから、正式な儀式の作法なんて知らないし、こだわりも無いのでテキトーにしちゃうよ!
「どう?
お告げはあった?」
「ああ……『緑の守護者』ってのが、伝わってきただよ」
チエリーさんは初めての経験に興奮したのか、耳をピコピコ動かしながら答えた。
くっ……可愛い!
それにしても、なんだか凄そうなのが出たね。
それを所持した状態でレベルアップをしたら、レアスキルが手に入りそうだ。
「チエリーさん、これからちょっと森で狩りをしにいきませんか?」
「え……?
今からじゃ、あんまり時間が無いんじゃ……?」
「『転移』の魔法があるので、そうでもないです。
それに見せたいものをあるし」
「『転移』を……。
そういうことなら……」
そんな訳で、チエリーさんを連れて森へ行くことにする。
今回はいきなり花畑へと転移した。
「ここは……?」
「キララの仲間の為に、作った花畑だよ。
チエリーさんなら植物に詳しそうだし、良かったらここの管理も手伝って欲しいかなぁ……って」
「ああ……あの大きな蜂の……」
森で育って虫に慣れているであろうチエリーさんでも、さすがにキララの恐ろしさは理解できるのか、ちょっと口元を引き攣らせていた。
でも畑を見ると、すぐに真剣な顔になる。
「どうかな、苗の状態?」
「……なんだべ、これ……?
ちょっと苗が疲れているだよ……。
肥料をやった方がいいべ」
「ああ、私が急成長させちゃった所為かな?」
確かに苗が萎れているように見える。
低い気温の所為かと思ったけど、どうやら違うらしい。
それをすぐ見抜くとは、さすがはエルフだ。
「そんなこと、できるべか!?」
チエリーさんは驚くけれど、私の「自然支配」を解除できた彼女ならば、おそらく同じことができるはずだ。
「でも、肥料とは言っても、すぐには用意できないなぁ。
う~ん、回復魔法の要領で、魔力や気を畑に流してみたらどうだろう?
どうですかね、チエリーさん?」
魔力や気は人の生命活動にも少なからず必要なものだから、それが充実していると怪我や体力の回復も早い。
だから植物にも、有効なんじゃないかな?
そもそも「自然支配」で急成長させた時も、それらを使っていたと思う。
「う~ん……どうだべか……?
ちょっとやってみるべ」
チエリーさんは土に触れて、魔力と気を送る。
ただ、肥料でも多すぎれば植物が枯れるように、多くを与えすぎてはいけない。
彼女はそれを理解しているのか、繊細な力加減で少しずつ……少しずつ、土に力を与えていく。
……心なしか、萎れていた苗が真っ直ぐになったような気がする!
「おお……元気になったべ!」
どうやら成功したようだ。
この技術を有効活用できれば、農業に大きな恩恵を与える可能性がある。
そういう研究をする為の部門を作って、チエリーさんに任せるのもいいなぁ。
その為にもチエリーさんとの「親密度」を上げつつ、彼女が何者かに狙われても自衛ができるように、レベルをあげなきゃね。
という訳で、レベルアップの為の狩りを、早速始めよう!
「……あ、チエリーさん、お肉は大丈夫?
食肉用の魔物を、狩ろうと思っているんだけど」
「オラ、肉は大好きだべ!」
ああ……エルフって菜食主義者のイメージがあったけど、違うのか。
それともハーフだから?
とにかくそういうことならば、索敵にかかった大物を遠慮無く狙うことにしよう。
で、2人で協力して狩りをした結果、親密度も上がってステータスを見ることができるようになったよ。
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・チエリー 52歳 女 LV・18
・職業 冒険者
・生命力 93/93
・魔 力 201/201
・ 力 73
・耐 久 84
・知 力 149
・体 力 98
・速 度 81
・器 用 85
・ 運 84
・ギフト 緑の守護者
・スキル
植物交信
必 中 弓
照 明
空間収納
完全隠蔽
万能強化
万能耐性
万能感知
万能障壁
無限再生
魔力循環
視覚共有
自然支配
守りの風
快癒の風
転 移
直 感
霊 感
大 浄 化
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数値で言えば、初めて会った頃のカトラさんと、そんなに大きな違いは無い。
エルフという種族の特性なのか、魔力や知力は高めな気がするけれど、特別強いというほどではなかった。
ついでにスキルも「下賜」しておいた。
今は「下賜」によって与えた「自然支配」に統合されているけど、元々は「植物支配」というスキルを持っていて、どうやらこれで私の「自然支配」を解除したようだ。
また、攻撃魔法や耐性なども、私が与えた上位スキルに統合されているので、彼女が元々持っていたスキルは、「植物交信」と「必中弓」と「照明」しか残っていない。
授かったギフトによって独自色が出てくるのは、まだまだこれからだろうね。
取りあえず畑の状態を見抜いた「植物交信」はかなり使えそうなので、「直感」と「霊感」を組み合わせて能力を鍛えてもらおうと思う。
上手くいけば植物や森に憑いている妖精や精霊と、交信できるようになるかもしれないし、それらを操ることによって、「森の中でならば最強」という存在が誕生するかも。
「さあ、狩りをしながら、色々と魔法を教えるからね!」
「下賜」したスキルって、本人はステータスを見られないから、持っていることに気付かない場合も多いし、使い方を教えないと活用できないから、これからかなりの訓練が必要だ。
「お、お願いするだ!」
でもチエリーさんもやる気はあるようで、これは期待できるね。
いつも応援ありがとうございます。




