27 不死王との戦い
昨日は間に合いませんでした……。
アークリッチが放った「混沌の奔流」という魔法は、部屋全体に広がって壁や天井を吹き飛ばした。
しかもそれらはただ吹き飛ばされただけではなく、長い年月によって風化したかのごとく、石壁が乾いた泥みたいにあっさりと崩れる。
これは気をつけないと、床も落ちるな……。
あ~あ、荘厳な謁見の間が、見るも無惨な状態になってしまったよ……。
そしてその攻撃を受けた私達も、無事ではなかった。
事前に防御魔法を何重にもかけていたけど、今の一撃で防御魔法の効果は打ち消されてしまっている。
なんだか攻撃を受けた肌が、火傷をしたように熱い……!
実際には火傷はしていないと思うのだけど、何が有害な魔力に侵食された──って感じかな……?
肌がボロボロに荒れている……!!
仲間達も、かなりのダメージを受けていた。
とっさに影の中に潜り込んだラヴェンダと、「暗黒闘気」で全身をガードしていたお姉ちゃん以外は、生命力が半減してしまっているのだ。
あの攻撃の直撃を受けていたら、死者が出かねなかったぞ!?
でも、私達には回復手段がある。
「クレセンタ様、『快癒の風』を!!
アイーシャ様は、もう1度『聖域』をお願いします!!」
「「は、はいっ!!」」
そして今度こそ「属性付与」で、物理攻撃にアークリッチの弱点だと思われる「聖」や「火」の属性を付与し、有効打を与える。
次は詠唱をする暇を与えないぞ!
剣に付与を受けたお姉ちゃん達は、アークリッチに向かって走る。
『小癪な!!』
だけどアークリッチも、迎撃の為に魔法を放った。
ただその威力がどんなに高かったとしても、広範囲に広がるようなものでなければ、お姉ちゃん達ならば十分に躱せる。
魔法攻撃を躱しつつ剣の間合いに入った刹那、それぞれが最大の一撃を撃ち込んだ。
『ガアァァァっ!!』
効いた!
……効いてはいるけど、致命傷って感じではない。
アークリッチも防御魔法を使っている上に、素の耐久力が高いのかもしれない。
それでも確実にダメージを与えている。
これを繰り返していけば──、
「消え……!?」
ところがアークリッチは、唐突に床に沈み込んだ。
これは……ラヴェンダと同じ影移動!?
逃げて……はいないと思う。
アークリッチから放たれる、凄まじいまでの邪悪な気配は消えていない。
だけど強すぎるそれが周囲に充満しているので、逆に位置が特定しづらい。
おそらく影の中に潜んで、攻撃の機会を窺っていると思うんだけど……。
『ご主人、下っ!』
「なっ!?」
その時、ラヴェンダからの「念話」が伝わり、私は慌ててその場から飛び退く。
するとその場には私以外の影だけが残り、そこからアークリッチが飛び出した。
危なっ、ラヴェンダが警告してくれなきゃ、攻撃が直撃していたかもっ!!
──って、床から現れたアークリッチの手が、ラヴェンダの首を鷲掴みにしている!!
影の中で鉢合わせたっ!?
彼女は「混沌の奔流」の直撃を受けていないから防御魔法はまだ生きているけど、それの効果が切れたらあっという間に生命力と魔力を全部奪われかねない。
「私のラヴェンダを放せっ!!」
私はお姉ちゃんからコピーした「暗黒闘気」を発動させた。
このスキルは闘気を自在に変形させて、攻撃にも防御にも使える。
細く伸ばした闘気を鞭のようにしならせて、アークリッチの腕を強く打ち据えた。
「わふっ!!」
攻撃の衝撃で、ラヴェンダが床に投げ出される。
私はそんな彼女を庇うように、アークリッチとの間に立った。
「ご、ご主人、ありがとうございます!」
「ううん、お互い様だから!」
さあ、反撃だ!
私は槍状に伸ばした暗黒闘気をいくつも生み出し、アークリッチの胴体へと突き入れる。
ただ、彼にとっては害の無い属性攻撃であるらしく、さほどダメージは感じさせなかった。
しかしアークリッチからは、困惑の反応が返ってくる。
『これは……ツングーダが得意としていた……!?』
……ツングーダ?
ああ、あの魔王候補の吸血鬼か。
確かに「暗黒闘気」はあいつの得意技で、私もその使い方を参考にはしている。
そのツングーダと顔見知りだということは、このアークリッチも魔王候補だということで、間違いないんだね。
「そいつは私達が倒した!!
次はあんただ!」
『ツングーダが人間相手に倒れたとは聞いていたが、まさかこのような小娘に……!!
だが、我はあやつのようにはいかぬぞ!!』
そんなことを言っているアークリッチだけど、カプリちゃんの存在に気付いていなかったみたいだし、ツングーダよりも格が落ちるような気がする……。
実際、今彼の身体に突き刺さっている「暗黒闘気」──その危険性が分からないようじゃなぁ……。
「『属性付与』!!」
そう、これでアークリッチの体内へ、「聖」属性の攻撃をすることができるのだ。
彼の体内に突き刺さった「暗黒闘気」の色が、黒から白へと変化していく。
さすがに体内からの弱点属性での攻撃は、防御のしようがないだろう。
『ガッ、ガアアァ!?』
アークリッチミイラのような顔が、苦悶の表情を浮かべた。
よし効いている!
「みんな、今の内にっ!!」
「了解!!」
みんなの一斉攻撃が始まる。
これで肉体へのダメージは、十分なものになるはずだ。
実際、アークリッチの姿は、攻撃を受ける度にボロボロになっていく。
既に死体であるその身体を、簡単に再生する手段は無いようだ。
よし、これなら──、
「アイーシャさん、お願いします!!」
「ハイ!!
女神様、我に力をっ!!」
アイーシャさんによる「大浄化」の光が、アークリッチを飲み込んだ。
拙作の『乗っ取り魂~TS転生して百合百合したいだけなのに、無慈悲な異世界が私の心を折りにくる。』が、ついに総合評価8000ポイントを突破しましたー!
こちらでも追いつけるように頑張ります。




