12 襲 撃
昨日はお休みしてしまいましたが、またしばらくの間は無休でいきますよー。
なお、ここら辺から話が血生臭くなっていきます。
夕方になると、私達は所定の場所へと集合した。
男性やお姉ちゃんは外で村の周囲を警戒し、オークが現れたら弓矢などで攻撃することになっている。
それで追い返せれば1番いいのだけど、突破してくるオークもいるだろう。
そいつらが落とし穴に落ちれば、私達の出番だ。
私のような戦えそうな女性と子供、そして老人は、動きがあるまで落とし穴の近くにある家の中で待機し、オークが落とし穴にハマったら飛び出して、トドメを刺すのが役割だ。
一方、戦えそうに無いほど小さな子供や高齢の老人は、隣の村に繋がる街道に1番近い家に避難していて、いざという時は真っ先に街道へ逃げる手はずになっていた……が、正直言って逃げ切れるかどうかは微妙だ。
戦う力も無いのならば、当然逃げる力も無いと考えた方がいい。
たとえオークに追いつかれなかったとしても、隣の村に辿り着く前に体力が尽きて行き倒れになる可能性だってある。
歩いたら1日くらいは、かかる距離だっていうしね……。
ちなみに私も、隣村には行ったことがないから、辿り着けるかどうか分からない。
一本道だというけれど、夜中の街灯も無い道だ。
迷う可能性だってある。
それにオークでなくても、街道には熊や狼などの危険な生き物だって出るらしいから、逃げることが必ずしも生存率を上げる訳ではないというのが、実に悩ましいところだ。
……オークなんか、こなければいいのに……。
でも、やつらはやってきた。
それは陽が沈んで、少し経った頃──。
「オークが出たぞぉぉーっ!!」
誰かの叫び声が聞こえる。
そして大人の男達が、一斉に弓矢を撃ち始めた。
幸いオーク達は、あの山の方から現れた。
これならばこの方向へ集中的に設置した落とし穴が、上手く機能してくれるだろう。
ただ、問題は数だ。
「駄目だ、あまり弓矢が効いていない!」
そんな声が聞こえてきた。
確かに私が見たオークの皮膚は硬くて分厚そうだったから、矢はあまり通らないかもしれない。
運良く目などの急所にあたれば、倒せるかも……って感じだ。
それ以外だと、何十本も矢を撃ち込まないと無理だろう。
おそらく今の弓矢の攻撃では、オークの数はほとんど減っていない。
そいつらが全部、柵を乗り越えてくる。
設置した落とし穴だけで、足りるかどうか……。
そう考えている間に、オーク達が柵を乗り越えた。
そして──よし、落ちた!
数匹のオークが落とし穴にはまる。
それを見て、後続の動きが止まった。
今か!
私は隠れていた家から飛び出して、スキルの「気力集中」を発動。
これによって潜在能力を引き出し、身体能力を大幅に上げた状態で、落とし穴にはまっているオークを槍で攻撃する。
なお、魔力の消費が激しいから、スキルを使うのは攻撃の一瞬だけ。
そして、狙うのは首だ。
上手く目や口の中を狙えるのならば、それが1番いいのだろう。
けれど、攻撃が外れると硬い頭蓋骨で攻撃が弾かれて、致命傷を与えられない可能性があるので、首を狙うのが無難だと思う。
ドスッ!──っと、嫌な感触が手に伝わってくる。
そして凄まじいオークの悲鳴も。
思わず気力が萎えそうになるが、槍は刺さった。
これなら問題無く倒せると思う。
他の人も……大丈夫みたいだ。
だけど──、
「ヴオォォォォーッ!!」
「!!」
オークが吠える。
仲間を倒されて怒り狂ったのか、次々に柵を乗り越えてきた。
落とし穴はまだ少し残っているはずだけど、それではすべてのオークを防ぎきれない。
「う……わ……!」
私は慌てて後退しようとするけれど、オークの方が速い。
このままでは追いつかれる──そう思った瞬間、お姉ちゃんが私とオークとの間に割って入った。
そして一撃でオークを斬り倒す。
「大丈夫だ、マルル。
あたしがついている!」
つ、強いっ!!
元々お姉ちゃんは強いけれど、村でいざという時に備蓄していた「剣」を貸し出されたことも大きい。
やはり武器の性能は大事だなぁ。
お姉ちゃんがいつも使っている鉈だと、こうはいかなかっただろう。
それに他の大人の男達も、複数人で1匹のオークを攻撃して、なんとか撃退している。
これならば、この防衛線はまだまだもちそうだ。
ただ、柵を乗り越えてくるオークの数は途切れない。
一体何匹いるの!?
このまま数が増えれば、さすがにお姉ちゃんだって対応出来なくなるよ……!!
だから私もやれることはやる。
オークの動きをよく観察して、お姉ちゃんが効率的に戦えるように指示を出す。
「お姉ちゃん、先に左のお願い!」
「うん!!」
そしてお姉ちゃんや大人達の攻撃で弱っているオークがいれば、待機している女性や子供達に、トドメを刺すように指示を出した。
よし、なんとかなっている。
このままお姉ちゃんさえ健在ならば、この戦線は維持できる。
……そう過信したのが、フラグだったんだろうな……。
この戦いが次の段階に移りつつあることに、私はまだ気付いていなかった。