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24 王の御前で

「貴様……っ!!」


 クリーセェ様の顔を見て、第2王子とレイスの顔色が変わる。

 自身の不利を、悟っているかのような顔だね。

 実際のところ、元々竜退治を達成することで継承権争いのトップに立っていたのはクリーセェ様であり、彼らのやっていることはそれを(くつがえ)そうとする悪あがきだ。


義母(はは)上達は、私が保護しておりました。

 兄上は既に私の側近を拉致し、斬り落とした両手を送りつけて脅迫するような真似をする御方だ。

 しかも犯罪組織との繋がりや、婦女子に乱暴をするという噂は絶えなかったが、兄上の手から救い出した者の証言からそれも証明された。

 母や妹が相手でも、何をするのか分かりませんでした(ゆえ)……」


「なっ!?

 濡れ衣だ!」


「そうですか。

 それでは、私が母上達を拉致したというのも、濡れ衣ですな。

 証拠が無い」 


 第2王子は色をなして反論するが、クリーセェ様は冷静な態度だ。

 どちらの言葉に説得力があるのかと言えば、やはりクリーセェ様の方だろう。

 更に──、


「そうね……(わらわ)も、エルナスとクレセンタからは危険を感じておりましたわ。

 妾達は不穏な動きを感じ、自らの意思で信頼できるクリーセェのところへ身を寄せていたのです」


 王妃様がクリーセェ様を擁護する発言をしたことで、謁見の間はざわついた。

 ただ、レイスに思考の誘導を受けているのか、元々第2王子と第2王女の派閥の者なのかは分からないが、クリーセェ様と王妃様を非難するような声も混じっている。

 

 ……それ、不敬罪にならない?

 正妃だよ?


 実際、国王も不機嫌そうな顔をしている。

 そしてついには──、


「黙らんかっ!!」


 国王が一喝し、謁見の間は静寂に包まれた。


「余の妻の言葉を疑うのか……?」


 ですよねぇ。

 国王にそのように問われて、釈明する者はいなかった。

 そうすることで、わざわざ発言者が誰なのかを特定させるような、藪蛇は()けたかったのだろう。


 で、室内が静まったところで、改めてクリーセェ様が発言する。


「父上、兄上には更に、魔王軍と繋がっている疑惑がございます。

 事実、王都近隣の森には、数えきれぬ魔物が潜伏しておりました。

 兄上はそやつらの力を借りて、王位を簒奪しようとしていた疑いがあるのです。

 まあ……そやつらは既に、ここにいる我が配下によって殲滅されておりますが……」


 紹介を受けて、私達は礼をする。

 今までは周囲から「なんだこいつら?」って目で見られていたので、ようやくそれから解放されるかな?

 

 それはともかく、クリーセェ様の衝撃的な告発によって、再び室内がざわめいた。

 そんな中で第2王子の声が、一際大きく響く。


「なっ、知らんっ!!

 知らんぞっ!?」


 その慌てぶりから、実際に知らなかった可能性はありそうだ。

 ただしそれは、すべてを把握していなかったという意味で、部分的には知っていたはずだ。

 少なくともレイスに力を借りているのは、事実なのだから。

 知らなかったのは、「魔王軍」ってところかな?


「ど、どこに証拠がある!?

 私がそのような恐ろしいことを(くわだ)てたという、証拠が……!!」


「それは兄上と結託している姉上……いや、姉上の偽物が、魔物だということだけで十分でしょう」


「なっ!?」

 

 まあ、それを言ったら、魔王候補だったカプリちゃんの力を借りるクリーセェ様も同じなのだが、それは黙っておく。

 で、当のレイスだが、意外と動揺していない。


(わたくし)が偽物……。

 何故妹に、そのような悲しいことを言われなければならないのでしょうか……」

 

 と、弁明するレイスに対し、


「お姉様じゃない!!

 あれはお姉様じゃないなの!!」


 ミーヤ様が叫ぶ。


「ミーヤレスタ……一体何を……」


「お姉様の真似は、やめるのよ!!

 本当のお姉様はもっと優しくて、いつも私に寄り添ってくれていたの!!

 ──今も!!」


 ここで「完全隠蔽」によって姿を隠していたクレセンタ様が、姿を現した。

 彼女は既に幽霊ではなく精霊なので、どこか神々(こうごう)しい気配を纏っている。


 それを見てレイスは顔を歪めるが、既にこうなることは分かっていたのか、さほど動揺の色は見えない。

 ただそれだけに、強攻策に出る可能性は高いので、戦闘の準備はしておこう。


 一方この室内は、これまでで1番のざわめきに包まれていた。

 王女が霊体の姿で現れたのだから、当然のことだろう。

 しかし──、


「静まれいっ!!」


 国王に一喝されて、再び静寂を取り戻す。


「クレセンタなのか……?」


 そう呟く国王の顔は、信じがたいものを見るかのようだった。

 ただそれはクレセンタ様のことを信じていないというよりは、彼女の死を信じたくないという風にも見える。


『はい……お父様。

 私はお兄様に拉致されて、口では言えぬような辱めを受けました。

 そして命ばかりか、残った身体(からだ)すらも奪われ、利用されております。

 これでは死んでも死にきれませぬ……!!

 どうか……あの私の身体を奪った化け物──レイスが取り憑いてアークリッチと化したあの偽物を討ち滅ぼしてくださいませ……!』


 そんなクレセンタ様の訴えに、レイスは──、


「馬鹿な!

 そちらの方こそ、私の姿を真似た化け物──!

 騙されてはなりませぬ!」


 と、反論した。

 だが、その瞬間──、


「──っ!?」


 謁見の間の全体が、光りに包まれた。

 アイーシャさんの「聖光」だ。

 それを受けたクレセンタ様が平然としているのに対して、レイスは苦悶の表情を浮かべていた。


 これだけでどちらが邪悪な存在なのか、証明されたことだろう。

 つまり第2王子とレイスは、完全に追い込まれたのだ。

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