23 謁見の間へ
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「さあ、そろそろ勝負を仕掛けましょう!」
「そうじゃな……!」
第2王子と第2王女(に化けたレイス)がクリーセェ様を潰す為に動いた今、こちらも行動を起こした方がいい。
相手もこのクリーセェ様の捕縛作戦に失敗したことが分かれば、次の動きに移るはずだ。
拠点の襲撃が失敗した上に、死者の軍団が潰されたとなれば、そろそろ手段も選んでいられなくなるんじゃなかろうか。
たとえば国王にあること無いこと吹き込んで操るとか、あるいは国王を亡き者にして強引に王座を奪うというような、強硬手段に出る可能性だってある。
それをさせない為にも、今すぐにでも国王と接触した方がいいだろう。
まあ、既に万が一に備えて、手は打ってあるけど。
そんな訳で、これから王城へと突入する。
城へ行くのは王族全員と私、ラムちゃん、エルシィさん、カトラさん、ラヴェンダ、カプリちゃん、そしてアイーシャさんだ。
他の者達はお留守番をしてもらおう。
さすがに動物や魔物は、城には連れて行けないし。
人の姿をしていれば別なんだけどね。
でもクルルとキララはあの姿のままが可愛いので、本人が望みでもしない限り、変えさせるつもりはない。
「後は頼むね、ジュリエット」
「お任せくださいませ」
屋敷はジュリエットとエレンに任せておけば、大丈夫だろう。
「それじゃあ、行きますよ」
私達は城へ──王妃様の居室へと転移した。
そこから王のいる場所を目指すことにする。
「国王陛下はあっちですね」
「分かるのか?
確かにそちらは、謁見の間ではあるが……」
私が迷い無く歩いて行くのを見て、王妃様が首を傾げる。
「あちらに多くの人が集まっていますから……。
その中にはクレセンタ様の偽者の気配もあるので、今頃は陛下にあることないこと吹き込もうとしているのではないでしょうか?」
『ひぇ』
クレセンタ様が、怯えたように小さな声をあげた。
これから彼女を殺した者達がいる場所へ行くのだから、当然の反応なのかもしれない。
一方──、
「それは早く行かねばならぬのぉ」
クリーセェ様は足早になって、先頭を進む。
危機感を覚えいるというよりは、ちょっと楽しそうなのだから大物だ。
で、謁見の間に辿り着くと、その大きな扉の前には衛兵の姿がある。
「そこを開けよ!」
と、王妃様が命じるけど、衛兵達は動かない。
「誰も通さないようにと、命じられております」
「それは誰にだ?
その命令は、この妾からのものよりも重いものか?」
そう王妃様が詰問しても、衛兵は動かない。
あ~、これは洗脳状態とかになってるんじゃないかな?
邪魔だから排除しちゃおう。
「カトラさん、眠らせることができる?」
「やってみますね」
カトラさんの「催眠」の魔法を受けて、衛兵はあっさりと倒れる。
これで扉は開くけれど……、
「まずは中の様子を、覗いてみましょう」
私は扉を少し開けて、中を覗き込む。
そこで見た光景は、「視覚共有」で眷属達も見ることができる。
ただ、眷属ではないクリーセェ様には見せることができない……ということは無いのだが、お互いに「視覚共有」を持っていないとちょっと面倒くさいので、彼女には直接見てもらうことにする。
謁見の間の1番奥にある王座には、国王の姿があった。
60歳近いと聞いたけど、見た目だけなら50歳くらいかな?
日本ではまだまだ若い年齢だけど、この世界ではではそろそろ平均寿命に近いはずだ。
でも王族は食事による栄養状態は良いだろうし、最先端の医療も受けられるから、平民の平均が当てはまるのかは分からない。
そもそもレベルが高い人って、寿命が延びるのではないか……という気もするし。
常人の何倍も生命力がある者が、普通の寿命になるとは思えない。
私の余命は、どれくらいあるんだろうなぁ……。
まあ、いずれはお姉ちゃんに吸血鬼にしてもらって、永遠に一緒に生きるつもりではいるけれど。
……おっと脱線した。
で、その国王だけど、髪が真っ赤で、何処となくクリーセェ様に似ている。
何だかんだで、クリーセェ様が1番国王の血を受け継いでいるんじゃないかな?
ああ……だから国王は、誕生した順番や性別、そして母親の身分では後継者を決めなかったのかもしれない。
本心では自分に1番似ているクリーセェ様に、跡を継がせたいのかもねぇ……。
まあ、ちょっと贔屓だけど、クリーセェ様はちゃんと実績も積んでいるし、人格的にも問題は無いと思うので、結果オーライ。
というか、他に適任者がいないし……。
あとは大臣とか、国の重鎮が複数人いるようだ。
偽クレセンタ……つまりレイスや第2王子は、彼らを説得……というか、言いくるめようとしているらしい。
「父上、どうか逆賊クリーセェを討つ為に挙兵を!!
奴は義母上のみならず、タルスやミーヤレスタをも拉致しております。
もう放置はできません!!」
騒いでいるのは第2王子かな?
クリーセェ様と兄妹なのだから特別不細工ということはないはずなのだが、性格の悪さが顔に滲み出ているのか、あの顔は嫌いだなぁ……私は。
というか、ラムちゃんにしたことは絶対に許さん!
「ああっ……我が妹、ミーヤレスタが、今頃どのような悲惨な目に遭っているか……。
父上、どうかご決断を……!!」
レイスもなんか言っているけど、それを見たクレセンタ様やミーヤ様が複雑な顔をしている。
「最近のお姉様……、あんな風に私を心配してくれたことなんて無いなの……」
このミーヤ様のつぶやきだけで、レイスの言動が嘘だということが分かる。
そしてクレセンタ様は、妹を慰める為に抱きしめてあげたいと思いつつも、それでは生命力を奪ってしまうのですることができず、ミーヤ様の周囲をウロウロとしていた。
何か言ってやればいいのに、口下手だなぁ……。
それにしてもレイスって、意外と演技派だなぁ……。
ただ、国王の反応が鈍く、焦りを感じているようにも見える。
本来は洗脳の術とかが、効いている予定だったのだろう。
実際、大臣の中には、彼女らの主張に同調して声を上げている者もいた。
だけど国王には、それが効いていない。
まあ、事前に対策はしてあるしね。
「クリーセェ様、このまま言われっぱなしってのは無いでしょう?」
「そうじゃな、そろそろ行くか」
私が扉を開けると、クリーセェ様を先陣を切って謁見の間に踏み込んだ。
「父上、その者達の言葉に耳を貸してはいけませぬ!!」
そんなクリーセェ様の声を受けて、謁見の間にいた者達の視線が私達へと集中した。
前章の終盤で、王位継承権の問題を片付けるのに最低3話はかかるな……と思って、次章に持ち越したのだけど、もう20話超えていますね……。




