20 逆 賊
おお……っ!
アイーシャさんがレベルアップすることで習得した「大浄化」は、一撃で巨人を塵へと変えていく。
凄い! さすが性女……もとい聖女!!
「ありがとう、助かったよ!」
「使徒様から命じられた、修行の賜でございます」
うん、レベル上げをさせて良かった。
『マルル様っ!!』
その時、クレセンタ様の叫び声が上がった。
残った巨人達が、こちらに──いや、アイーシャさんに向かって押し寄せてきたのだ。
彼女の危険性を悟って、真っ先に排除することにしたのだろう。
しかしただのスケルトンやゾンビに、そんな判断ができるはずがない。
「やっぱり、群れを統率している者がいる!
でも、何処にいるか分からないっ!!」
「オー、それなら、我に任せてくださーい!」
カプリちゃんが大きく息を吸う。
「火炎息」!?
彼女が使うそれの威力じゃ、森が完全焼失しかねない。
森の恵みを糧にして生活している人達が、一気に困窮してしまう。
「カプリちゃん、森を無くしちゃうのはちょっと……!!」
『大丈夫でーす!
我が手に入れた、新たなパワーを見てくださーい!』
口から光が漏れ出ているカプリちゃんは、念話で答えた。
その直後、彼女の口からは、光の奔流が溢れ出す。
あれ……これ……。
炎じゃなく、浄化の光?
実際、その光を浴びた巨人は、波にさらわれた砂の城のように形を失っていく。
けれど森の木々等は、まったく無傷だった。
え~と、これは……あ、カプリちゃんに「属性付与」ってスキルが増えている。
つまり違うスキルに、任意の属性を付与して効果を変えるってことかな?
今回は「火」属性の息に、「聖」属性を乗せたって感じなのだと思う。
状況によって使い分けられるのは、かなり便利かもしれない。
これも『神獣』というギフトを、得たおかげだね。
「あ……敵の反応が、全部消えた……!」
さすがカプリちゃんの全体攻撃!
広範囲を飲み込んで、位置を特定できなかった群れの統率者も、問答無用で消滅させてしまったようだ。
これで森の方の問題は解決かな。
ほんと、眷属が1人か2人多くいるだけで、全然違うなぁ……。
しかしこれで全部終わった訳ではない。
「あのっ、屋敷の方で、何かあったんですか!?」
「あ……はい。
私どもが屋敷へ戻った時には、襲撃を受けていたのでございます」
『襲撃!?
妹の……ミーヤレスタは無事なのですか!?』
クレセンタ様が慌てる。
まあ……私の眷属が10人以上いるような場所が陥落するとは思えないけど、被害が皆無とは言えないかもしれないもんなぁ。
「ええ……我が方が優勢でしたし、死者も出ていなかったので、私達はこちらへと援軍に参ったのでございますよ」
そう答えるアイーシャさんは、少し歯切れが悪そうだった。
まだ戦いが終わっていないみたいだし、何かまずいことでもあるの!?
「とにかく屋敷にもどります!」
私達は転移して、帰ることにした。
「……!!」
そして屋敷に戻って、まず目に入ったのは、土下座をしているラヴェンダだ。
「何……してんの?」
「援軍を頼まれていたのに、すぐに連れて行くことができず、大変申し訳なく……!」
ああ、そのことか。
「いいよ、結果的にはなんとかなったし。
こちらも大変だったんでしょ?」
「それだけではありません!
私が連れてきた王女様が、ことの発端です!
私が気付いてさえいれば……!」
え、なに?
ミーヤ様がどうした?
『ミーヤレスタ!?』
クレセンタ様は、妹のところへ飛んでいく。
居場所は……まあ、「万能感知」で分かるか。
一応屋敷の中にいるようだし、拉致されたりはしていないようだ。
「どういうことなの……?」
「それが……」
ラヴェンダの話によると、この屋敷に騎士団が押しかけたのが、彼女が戻るちょっと前。
そしてクリーセェ様を「逆賊」と断じ、その身柄の引き渡しを要求してきたのだという。
罪状は「王妃ナスタージャと第3王子タルス、及び第4王女ミーヤレスタの拉致監禁容疑」──。
これは王家に弓引く蛮行だという。
……全員自分の意思で来ているので、完全に濡れ衣だ。
騎士団の構成も第2王子派と第2王女派の者を中心に構成されていたらしいし、そのつもりで来ているのだろう。
まあ、連中ならやりかねない話ではあるのだが、ちょっと動きが速すぎるかな……?
実際、王妃様と第3王子も、そしてミーヤ様も、屋敷に連れてきたのは昨晩から今日の午前中にかけてだ。
しかも転移系のスキルで運んだから、誰かに追跡されている可能性も無い。
それにも関わらず、居場所の特定が速すぎる。
いや、所詮は濡れ衣だから、本人が何処にいても関係ないと考えている可能性もあるけれど……。
しかしラヴェンダによると、衝撃の事実が判明した。
「私が連れてきた王女様にゴーストが取り憑いていて、情報を流していたのです……!」
な、なんだってー!?
全然気付かなかったんだけどぉ!?
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