19 死の巨人
死者の群れが押し寄せてくる。
私達はそれを押しとどめているけど、この戦いはいつ終わるのか分からない。
敵の数は確実に減っているはずなのに、それをまだ実感できないのだ。
それだけ敵の数が多い。
やはり戦力が不足しているなぁ。
援軍を呼びに行ったラヴェンダは、どうなったのだろう?
転移系のスキル「影移動」を使ったから、あの屋敷に戻る過程で何かがあったとは考えにくい。
となると、屋敷で何かがあった?
なに……?
一体何が起こった?
う~ん、「念話」を送ってみるか。
『あ、ご主じ……今……──』
あらら……距離が離れすぎている所為か、ハッキリとは通じない。
「視覚共有」も駄目だし……。
まあ、ラヴェンダが生きていることだけは確認できたけど、心配だな……。
かといって、この場から離れれば、王都に死者の群れが押し寄せる。
王都は壁に囲まれているから、暫くの間は突破されることはないだろうけれど、その壁の外に住み着いている市民権の無い者達は、あっという間に蹂躙されてしまうだろう。
やっぱりこの場を離れる訳には、いかないなぁ……。
それだけに、このまま普通に戦っていたんじゃ駄目だな……。
もうレイスに気付かれていると判断して、派手な攻撃を使った方がいいかな?
いや、まずは何か有効なスキルが無いか、検討して……。
お、クレセンタ様が持っていた「自然操作」の上位スキル、「自然支配」が使えそうだ。
「え~い!!」
私は「自然支配」で、スケルトンやゾンビの足下の地面を操り、大きく陥没させる。
それは巨大な地割れみたいなもので、飛行能力を持つゴースト以外は、乗り越えてくることはできないだろう。
迂回するにしても、かなり時間がかかるはずだ。
「これでゴーストだけに集中できるから、先にゴーストを全滅させちゃおう!」
『わ、分かりました!』
ゴーストさえ倒してしまえば、移動速度が遅いスケルトンやゾンビは後回しにしてもいい。
一旦王都に戻って、状況を確認する余裕もできるはずだ。
ところが、だ──、
「うえっ!?」
ゴーストをあらかた片付けた頃、地割れの向こう側にいた死者達が1ヶ所に群がっていく。
そして彼らは融合し合い、やがて巨大な人型へと変形していった。
骨と肉を寄せ集めた巨人の姿へと──。
うわぁ……20mくらいある。
これだけ巨大な存在だと、地割れも簡単に乗り越えてくるんじゃ……。
当然、その攻撃力だって、今までの比ではないだろう。
踏まれただけで、圧死するなんてことも有り得る。
しかもその巨人が、何体も出現していた。
こりゃ、「自然支配」で地割れを広げても、巨人同士で融合して乗り越えてきそうだな……。
となると、巨人を倒す以外の選択肢は無くなってしまうんだけど、生半可な攻撃では、生き残った部分が再び融合して巨人となるか、あるいは元のスケルトンやゾンビとなって襲いかかってくるだろう。
もう、面倒臭いなぁ!
こうなったら、全力を出すしかないか……!
広範囲で森を破壊してしまうし、レイスに気付かれてしまうだろうけれど、この際仕方がない。
私は最大出力の「火炎息」を、巨人達に向けて撃ち放つ。
結果、巨人だけではなく、森が灼熱の炎に包まれた。
たぶん関係の無い多くの動植物も巻き込まれているだろう。
だからやりたくはなかったけど、やらざるを得ないほど、私達は追い込まれていたと言える。
しかし──、
「な……!」
激しい炎の中でも、巨大な人影は消えない。
効いていない……なんで?
その理由は、すぐに分かった。
巨人が大きすぎて、中まで火が通らない──それもあるだろう。
だけどそれだけじゃない。
巨人の表面に、スケルトンの骨が集中している。
そう、燃えにくい骨が表面を覆って、内部を守っているのだ。
あー……確かに火葬場で、燃え残った遺骨を見たことがある。
硬貨が溶け落ちるような熱でも、意外と燃え残るんだよね、骨って……。
あの焼却炉って、1000度前後だっけ?
本家のカプリちゃんならともかく、私の「火炎息」ではその程度の熱しか出ないってことかな?
いや……それに相手はただの骨じゃない。
魔法で操られている存在なのだから、魔力で防御するくらいのことはしているのかもしれない。
……でも、スケルトンとゾンビの集合体にしては、ちょっと頭が良すぎるような……。
何処かに群れを統率しているのがいる……!?
でもあちこちに敵の反応があるから、特定できない……!
取りあえず広範囲攻撃を、繰り返すしかないのかなぁ。
足止めにはなるし、群れの統率者にまぐれ当たりするかもしれない。
「えーい、『極寒』!!」
これで山火事の消火と、一時的に巨人を凍結させて、動きを止めることができた。
……が、これは本当に一時しのぎ。
すぐに巨人は動き出しそうだ。
こうなったら、相手が消滅するまで「火炎息」を連発するか?
そう考えていた時──、
「お待たせいたしました、使徒様!」
背後から聞き覚えのある声が、聞こえてくる。
これはクラグド山脈までレベルアップしに行っていた、アイーシャさん!?
それに──、
「ただいまでーす!」
カプリちゃんも!
ようやく援軍が来た!
「戻って来ていたんだ!
でも、どうしてここに!?」
彼女達は、私達が森に出掛けていたことは知らなかったはずだ。
「ラヴェンダ様に、教えていただきました」
「えっ、あっちは大丈夫なの!?」
「ええ、詳しい話は後ほど……。
まずはこの迷える死者達に、安らかな眠りを──。
『大・浄・化』!!」
アイーシャさんが叫んだ瞬間、眩い光が巨人を飲み込んだ。
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