11 姉妹の仲
「お姉様が、怖い……?
躾が厳しい御方なのですか?」
第4王女のミーヤ様は、姉である第2王女が怖いという。
具体的にどう怖いのか、私は聞いてみた。
「違う!
お姉様は優しい!
……優しかったのよ。
お母様が亡くなってから、ずっと私に寄り添ってくれていて……。
でも、数ヶ月前から急に、優しくなくなった……」
ふむ……優しかった姉が、豹変したと……?
甘い性格では、厳しい王位継承戦の中では生き抜けないと判断し、言動を改めた……ということも考えられる。
あるいは自身に危険が迫っており、妹を巻き込まない為に、あえて突き放すような言動をしている可能性もある。
ただ、第2王女と第4王女が仲違いをしているとか、王位継承戦に消極的だという話は聞いたことは無いので、表向きには姉妹で協力して継承戦に挑んでいるということになっているはずだ。
だから後者の理由は考えにくい。
いずれにしても、こんな小さな子が1人でうろついているのは危ないなぁ。
第2王子派に見つかったら、拉致されかねない。
「でもお1人でいるのは危ないので、私がお部屋までお送りいたしましょう」
「いやっ、帰りたくない!」
ここは明確に拒否された。
うむぅ……『百合』が効いていてもこの反応ってことは……余っ程嫌なんだろうな。
「それでは少しだけ私が遊んであげますから、それが終わったら帰りましょう」
「遊んでくれるの!?」
ミーヤ様の顔が、喜色に輝く。
なんだかんだで、1人でいるのは寂しかったのだろう。
「じゃあ鬼ごっこでもしましょうか。
まず姫様が逃げて、私が追いかけます。
捕まえたら交代です」
「面白そうなの!
私は捕まらない!!」
と、ミーヤ様は駆け出すが、私はその進行方向に転移する。
「なっ!?」
「はい、捕まえましたー!」
「えっ、今どうやったの!?
ずるいなのっ!?」
「次は姫様が鬼ですよ」
「まっ、待つなの!」
私は逃げる。
まあ、さすがに今度は、手加減するけどね。
それから小一時間ほどミーヤ様は駆けずり回り、その結果──、
「はぁ、はぁ」
大の字になって、地面に転がることになった。
体力を使い果たしたようだ。
「お洋服が汚れますよ、姫様。
さぁ、起き上がって、お部屋に戻りましょう」
「……」
ミーヤ様は、不承不承ながらも頷いた。
さすがに疲れてしまい、部屋で休みたくなったのだろう。
よし、狙い通り。
それから私は、ミーヤ様の案内で姉妹の居室へと向かう。
その道すがら、
「今度は負けないなの!
だからまた私と遊ぶのよ!」
と、催促された。
短時間でかなり懐かれたようだ。
やはり子供や動物は単純なのか、親密度が上がりやすいな。
ステータスも確認できるようになったけど、ギフトも授かっていない子供だと、特筆するようなこともないなぁ。
でもそれだけに、最低限の身を守るスキルは「下賜」しておこうかな。
あと、正式な名前は「ミーヤ」ではなく、「ミーヤレスタ」であることが分かった。
『では、姫様。
私が必要な時は、強く頭の中で呼びかけてください。
近くにいれば、声が届きます』
「えっ、頭の中に声が!?」
『「念話」のスキルですよ』
『えっ、これ私にも使えるなの!?
声、届いている?』
「はい、届いていますよ。
でも、この力は秘密にしておいてくださいね。
信用できる人にしか、使っては駄目ですよ」
「うわー、すごーい!」
私の注意を聞いているのかどうか、ミーヤ様はスキルを使えるようになったことにはしゃぐ。
可愛いなぁ。
今後の王位継承戦がどのように動いたとしても、彼女の安全だけはなんとしてでも確保したいねぇ。
その後、姉妹が住んでいるという、居室の入り口に辿り着く。
守衛がいたので、用件を伝えた。
「迷子になっていた王女殿下を、お連れしました」
まあ、「遊んでいた」と、本当のことは言えないからねぇ……。
「おお、ありがとうございます。
さ、殿下、こちらへ……」
守衛はそそくさと、部屋の中へミーヤ様を入れようとしたが──、
「待つの!
お礼に彼女を、お茶にお誘いするのよ!」
と、ミーヤ様は、私を部屋に招き入れようとした。
私としては第2王女の顔を見ておきたかったので、渡りに船だ。
「しかし殿下……。
クレセンタ殿下がなんと言うか……」
「う……でも」
クレセンタは第2王女の名前かな。
確かにクリーセェ様から聞いた名前は、そんな感じだったと思う。
あまり興味が無かったから、ぼんやりとしか憶えていないが……。
そしてミーヤ様も姉の名前を出されると弱いようで、強く出ることはできないようだ。
それでも私と離れたくないのか、食い下がっている。
すると部屋の奥の方から──、
「何事です、騒々しい」
17歳くらいの少女──ミーヤ様を大きくしたような容姿の人が出てきた。
これが第2王女のクレセンタかな?
見た目だけなら、気品に溢れていて、姉妹の中では1番王女っぽく見える。
というか、なんだか見覚えが……。
何処で見たんだっけ?
おかしいな、初めて会ったはずなんだけど……。
それになんだか彼女が醸し出す雰囲気が、やたらと不穏だ。
ミーヤ様じゃないけど、確かに怖いぞ、この人……!?
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