6 大聖堂の出会い
「おー、カテドラルでーす!」
教団の大聖堂に入る。
入り口を抜けるとすぐに、礼拝所と思われる場所になっていた。
一般の信者が礼拝しやすいようにする為かな?
「うわぁ……天井が高い」
高すぎて開放感よりも、圧迫感を覚える。
実際、石造りの天井が落ちてきやしないか……と、少し怖くなった。
こっちの方が火災には強いとは言え、木造の方が安心感があるね……。
いや、木造でも天井が落ちてきたら、普通は死ぬけどさ……。
それにしても礼拝所の中には、一般人と思われる人の姿が結構あるね。
私のようにお願いがあるのか、それとも礼拝でもしにきたのかは分からないけれど、意外と堅苦しい雰囲気では無い。
え~と、受付のようなものは無いから、教団の人に直接話しかければいいのかな?
話しかけるなら、女の人がいいな。
あ、聖職者っぽい格好をした、眼鏡のお姉さんがいる。
綺麗な銀髪の美人さんだ。
よし、あの人にしよう。
「あの……教団の方ですよね?
お願いがあるのですが……」
「はい……なんでございましょ……──」
お姉さんは、私の顔を見るなり絶句した。
そして跪き、祈るようなポーズで──、
「おお……神よ……!」
とんでもないことを言い出した。
えっ、なにこれ!?
『百合』が効きすぎた!?
「なんだ……?
どうした……?」
「アイーシャ様が、跪いて……!?」
周囲に人が集まり、ざわつき始めた。
というか、アイーシャ様!?
この人、もしかして偉い人!?
……って、一瞬で従属度が100%になっている!?
───────────────
・アイーシャ 24歳 女 LV・23
・職業 司祭
・生命力 123/123
・魔 力 265/265
・ 力 86
・耐 久 99
・知 力 184
・体 力 156
・速 度 111
・器 用 123
・ 運 179
・ギフト 聖女
・スキル
祈 り
魔力感知
魔力操作
聖 域
杖 術
浄 化
聖 光
解 毒
癒やし大
直 感
天 啓
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ステータスも見られるようになったけど、ギフトが『聖女』!?
もしかしてこの人、教団ではトップクラスの存在なのでは!?
そんな人が私の下に付くって、教団的には大事件じゃん!?
どうしてこうなった!?
その後私達は、騒ぎになったので別室へと通された。
なお、カプリちゃんは面倒くさそうにしていたので、先に帰ってもらった。
一緒に来た意味が、あまり無かったね……。
で、その部屋では聖女アイーシャさんの他に、教団のお偉いさんと思われる人達が何人かいて、かなり居心地が悪い。
なんでこんな権力者達に、囲まれなければならないのか……。
私はただの平民なんですけどぉ!?
「どういうことなのですか、アイーシャ様!?
教団の象徴たる聖女のあなたが、あのような……!!」
「私のことなど、どうでもよろしいのでございます!
あなたちこそお控えなさい!
こちらこそ女神様の使徒──我らが仕えるべき、尊き御方でございます」
おっとぉ、なんだか不穏当な発言が飛び出したぞ!?
私が女神様の使徒とか……そんな大それた存在ではないんだけど……。
──って、
───────────────
・マルル 12歳 女 LV・56
・職業 女神の使徒
───────────────
私の職業が、冒険者から変わってる!?
うわぁ……これ完全に、神様の仕業だよ……。
ギフトだって神様から授けられたものだし、そういう存在が実在することは間違い無いんだよね……。
その神様が、私に何かをさせようとしているってこと……?
「信じられぬ……。
この娘が女神様の使徒……などとは……」
ですよねぇ。
皆さんの反応も懐疑的だ。
私もその空気に乗っておこう。
「そうですよ、私はそんな大層な者ではありません」
しかし私の言葉を受けても、アイーシャさんは──、
「なにをご謙遜なさっているのですか?
その身から溢れる神聖な気配、それは間違いなく女神様に近しいものでございます!」
と、彼女の意思は変わらない。
え~、私からそんな気配が出ているの……?
あ、でもそういえば以前、『百合』は魔物と反対の属性なのではないかと感じたことがあったっけ。
吸血鬼化とか魔物に関係する身体変化を防ぐことができる「万能耐性」でも、『百合』にはまったく効果が無いみたいだし、『百合』が神聖な属性だというのは、有り得る話なのかもしれない。
ああ~、もう要件だけ済ませて帰りたい。
「あの……私は、幽霊を追い払ってくれる神聖魔法を使える人を、お借りしたかっただけで……」
いやもうぶっちゃけ、アイーシャさんからスキルをコピーできるので、わざわざお願いしなくてもいいんだけど、私が幽霊に対して冷静に対処できるか分からないし、ここはプロに任せよう。
「それならば、私が参りましょう!」
と、名乗り出るアイーシャさん。
「いけません、アイーシャ様!
あなたほどの御方が、そんな雑事などっ!!
他の者に任せればよいのです!」
「何を言うのです!
使徒様のお近くで働くことほど、重要で誉れ高きことはございません!!」
と、教団の関係者の間で「誰が行く、行かない」で議論が紛糾したけど、アイーシャさんが折れることはなく、結局彼女が幽霊退治をしてくれることになった。
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