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4 王室幽霊

「何事じゃっ!?」


「姫様っ!?

 あの……これはっ……!」

 

 私の悲鳴を聞きつけて、クリーセェ様達が部屋に踏み込んできた。

 そこには半裸でラムちゃんにしがみつく、私の姿が……。

 それを見て、クリーセェ様の目がつり上がる。


「何をしているのじゃ、おぬしらっ!?」


「いや……違っ……違わないけど」


 まあ、人に説明しにくいことをしていたのは、事実だが……。

 そんなことより──、


「いっ、今、幽霊がっ!!」


 私が悲鳴を上げた瞬間に消えてしまったけれど、あれは確かに半透明の人影だった。


「幽霊?

 マルルはそんなのが怖いのか?」


「ご主人、可愛いです」


 お姉ちゃんやラヴェンダは笑うけど、私は前世からホラーなのは苦手なんだよ……。

 もう今となっては、散々グロい物を見てきたから、慣れているんじゃないかと思ったんだけど……。

 でもやはり魂に染みついた物は、簡単に拭いきれないようだ。


 それに理解できない物というのは、純粋に怖い。

 あの幽霊には明らかに実体は無かったし、かといって魔力の反応も無かったので、魔法的な物とも違う。

 これでは対処の仕方が分からない。


「え、盛り塩とかすればいいの?

 それとも、教会に聖水的な物がある?」


 オロオロとする私に、クリーセェ様は、


「そもそも本当に幽霊なんぞいたのか?

 私はずっとこの屋敷にいたが、見たことないのじゃが?」


 と、そんな疑問を口にした。


「でも私は確かに……!

 ラムラス様は見ましたか?」


「いや……私は……」

 

 ……私しか見ていないのか。

 でも、見間違いとかではなかったずだ。


「ふむぅ……。

 そういえば100年ほど前にこの屋敷で謀殺された、王女の霊が出るという噂はあったが、ただの怪談だと思っておった」


 え、王女の霊!?

 まさか幽霊にも『百合』が効いて、私が引き寄せちゃったの!?


「そ、それは本当ですか!?」


「単なる噂じゃろ。

 実際、本当に見たという話は聞いたことが無かったからのぉ……。

 兄上の配下達も、そんな話はしておらんかったぞ?」


「確かに幽霊(ゴースト)のような魔物が出るのならば、以前から騒ぎになって、退治されていても不思議ではないですねぇ……」


「カトラさん!」


 遅れてエルシィさんと一緒に来たカトラさんが、そんなことを言った。

 たぶん2人で行為の最中だったから、遅れて来たんだね……。

 邪魔をしてゴメン。


 というか、幽霊って魔物として実在するんだ!?


「退治……できるものなんですか?」


「光に弱い……とは聞きますね。

 あとは、聖職者が使う神聖魔法が効くとも」


 ……いないな、眷属の中に聖職者は……。

 冒険者の斡旋所になら、いるかな……?

 朝になったら、スカウトしにいこうかしら……。


「でもどうしよう……。

 今晩はもう、この部屋で眠れる気がしない……」


「ふふん、マルル殿は怖がりじゃのぉ。

 なんなら私と部屋を交換するか?」


「じゃあ、お願いしようかな……。

 行こうか、ラムラス様」


「待てぃ、ラムラスは置いて行け!

 またいかがわしいことを、するつもりじゃろぉ!!」


 えー?

 まだ幼いクリーセェ様には、性的なことに忌避感があるのかな?

 私のことを、ラムちゃんを悪い道に誘う悪い子だと思っている?

 ある意味、間違ってはいないけどぉ!

 

 あっ、親密度がちょっと下がってる!?

 百合の影響下に無い場合は、やっぱり下がるんだ!?

 今後はゆっくりと理解してもらうように、彼女の前での行動は慎重にしよう。


「わ、分かりました。

 ラムラス様、大丈夫?」


「ええ……。

 まあ、大丈夫でしょう。

 私もクリーセェ様によく説明しておきます」


「うん、お願いね。

 じゃあおやすみ」


 それから私は、クリーセェ様の部屋だった場所へ行く。

 彼女と寝ていたジュリエットも一緒に部屋を移動したので、そこには誰もいない。

 エルシィさんとカトラさんは部屋に戻って続きをするだろうし、お姉ちゃんも警備に戻った。

 カプリちゃんとクルルやキララは……そもそも何処にいるのかな?

 残るは……、


「ねえラヴェンダ、一緒に寝てくれる?」


「わふぅ!

 勿論です、ご主人!」


 今晩はラヴェンダを抱き枕にして寝よう。

 でも、寝る前にご褒美をあげなきゃ。


 ラヴェンダは私を舐めるのが好きだ。

 私の何処を……というのは無い。

 何処でもだ。


 私はラヴェンダに身を任せ、心地良い刺激を感じていた。

 こうやって人の体温を感じていると、安心する……。

 

 しかし不意に視線を感じ、そちらの方を向くと──、


「ひっ……!?」


 床から半透明の女の顔──その上半分が生えてこちらを見ていた。

 あの幽霊、私を追ってきたの!?


「ひゃああぁぁぁぁ──っ!?」


 今夜はいつもとは違う理由で、眠れそうに無い。

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