3 王都の拠点
屋敷の制圧は終わった。
第2王子派の死者12名。
つまりそれだけの人数が、ラムちゃんの陵辱に加わっていたということだ。
ラムちゃんが受けた恥辱は、相手に死という形で返したが、しかしこれでもまだ全員ではないだろう。
全員を特定するのは不可能かもしれないが、少なくとも第2王子を始末するまで、この復讐は終わらない。
その為の戦いを、この拠点となる屋敷から始める。
ただ、その為の人員が心許ない。
屋敷を維持管理するのだって、それなりの人数が必要だしね。
そんな訳で拘束した第2王子派の人間を、「女体化」のスキルで私の眷属にして、この王都で働く人員になってもらおう。
「なっ……!?
……なんなんじゃ、それは……?
男が女に……?」
クリーセェ様が、心底ドン引きした目で私を見る。
「こうして女性にしておけば、私を裏切ることはまずありませんし、第2王子派の情報も簡単に話してくれると思いますよ。
このようにして、敵陣営を切り崩していくことも可能です」
それに私でなくても、お姉ちゃんが持つ「魅了」のスキルを使えば、同じようなことができる。
それならば、わざわざ女体化させずとも、男にも効くし。
ただ、永続的な効果は無いみたいだけどね……。
「なんという、デタラメな能力じゃ……」
「そういう反応は、なんだか新鮮ですねぇ」
「何故、嬉しそうなんじゃ……?」
なんというか、ツッコミが無ければボケも成立しないように、やっぱりそういう存在は必要だと思うんだよね。
私がボケで、クリーセェ様がツッコミだ。
私達は、いいコンビになれると思う。
「さて、後片付けは新たな眷属達に任せて、夕食にしましょうか」
一応携帯食料などは持ってきているけど、そういえば料理が得意な人間はいないな……。
勿論、スキルの「料理」を使えば、誰だって普通に料理を作れるのだが、やはり普通止まりなのだ。
スキルを持つということは、あくまでそれができるようになったというだけで、その質は本人の資質や熟練度に左右されるらしい。
落ち着いたら、ここにティティを呼び寄せようか。
そして食事が終わったら、今晩はもう寝ることにしよう。
今日は色々とあったから、みんなも疲れているだろうしね。
で、この屋敷は王家所有の豪邸なので、部屋は沢山ある。
けれど戦闘で壊れたり、第2王子派の男達が荒らしたりした所為で、かなり酷い有様の部屋もあるなぁ。
まるでゴミ屋敷だ。
これ、騎士とか地位のある人間の所業じゃないな。
たぶん第2王子は裏社会の組織とも繋がりがあって、その構成員を雇ったのかも。
その辺も後で、眷属化した者達に聞いてみるか。
場合によっては、そちらの組織も潰す必要があるしねぇ……。
ともかく片付けないと使えない部屋も多いから、今晩は1人で一部屋という訳にはいかないかもしれない。
2人で一部屋を使ってもらうか。
え~と、私は……、
「ラムラス様は、私と同じ部屋で寝ましょう」
「は、はい!」
「む……!」
クリーセェ様が、少し不機嫌そうな顔になる。
久々に再会したラムちゃんと、積もる話もあるのだろうけど……。
私はこそっと、クリーセェ様へ耳打ちする。
「あの、ラムラス様は今日、自ら手を汚したので、精神的に不安定になっていると思います。
私がそれを慰めますので、今晩はどうか任せてください」
「……むう、そういうことなら……」
ふぅ、クリーセェ様も納得してくれた。
でも実際、ラムちゃんはグロいのとかが苦手な所為で、スキルを使って目を瞑りながら戦っているくらいだし、そんな彼女が自信を辱めた相手だとしても、10人以上も手をかけたとなれば、精神的にはかなり消耗していることだろう。
クリーセェ様は、ジュリエットと一緒に寝てもらおうかな。
ジュリエットには、今後クリーセェ様の側近として働いてもらおうと思っているので、これを機会に仲を深めてもらおう。
まあ、ジュリエットからしたら、エレンと一緒に寝たいのだろうけれど……。
「それじゃあ、後はあたしに任せて、おやすみマルル。
行くぞ、エレン」
「は、はい。
おやすみなさいませ、マルル様」
吸血鬼で、基本的に夜は眠らないお姉ちゃんとエレンが、夜間の警備を担当する。
まあ、この2人に任せておけば問題は無いだろう。
「お姉ちゃん、おやすみ。
必要なら眷属を増やしてもいいからね」
王族を相手にするのなら戦力強化も考えて、吸血鬼を増やしても悪くはないよね。
それから私とラムちゃんは、割り当てられた寝室に入る。
するとラムちゃんは、
「ママぁ~……」
と、私に抱きついて、私のなだらかな胸に顔を埋め……られてはいないな……。
そんな彼女の身体は、少し震えていた。
「うんうん、怖かったねぇ……」
私はラムちゃんの頭をなでる。
それを暫く続けていると、彼女は落ち着いたのか、次の行動に移った。
そう、私の服をまくり上げて、授乳の真似事を──。
それをすると、彼女は安心するようだ。
「んっ……あまり強くしないでね」
「うん、ママの美味しい……」
まったく、大きな赤ちゃんだ。
そんな行為を続けている時、私はふと、
「ん?」
カーテンの──窓の外に、何かが動いたような気がした。
いや、確かに何かの影が揺らめいている。
ここは2階だけど、飛行能力があるキララやお姉ちゃんなら、いても不思議ではない。
だけど気配が感じられなかった。
姿が見えているのに、気配を感じないというのは、ちょっと有り得ないことだ。
なんだろう……?
風で飛んできた布か何かの影が、映っている?
それとも幻覚……?
──と、思っていたら、窓から半透明の人型が、通り抜けるように入り込んできた。
は!? 幽霊っ!?
「ほえあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──っ!?」
私は転生してから初めてというレベルの、大きな悲鳴を上げた。
歯科に通うことになったので、執筆に十分な時間がとれず、結果的に更新できない日が出てくるかも……。




