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17 王都到着

「ラムラス……本当に行くのか……?」


 ランガスタ伯爵は、心配そうな顔で問う。

 昨日瀕死の状態で帰ってきた娘が、翌朝にはもう王都へ戻ろうというのだから当然の反応だ。


「心配はありません、父上!

 私にはマルル様が付いております。

 マルル様は、無敵です」


 いや……私が無敵っていうより、取り巻きがね……?

 特にカプリちゃん。


「確かにそうなのだろうが……」


 伯爵はラムちゃんの言葉を受けてもなお、心配そうだった。

 それでも彼女は、私と一緒にいた方が精神的に安定しそうなので、やっぱり連れて行った方がいいのだろう……とは思う。


 あと、この伯爵邸の庭には、我が眷属の戦力が集結しているので、「無敵」というところに納得せざるを得ないようだ。

 たぶん一国を攻め滅ぼせる戦力だからなぁ。

 それがなんとなくでも分かるようなので、伯爵もかなりの実力者ではあるのだろうね。


 で、王都へ行くのは、私とラムちゃんの他に──、


 お姉ちゃん。

 エルシィさん、カトラさん。

 クルルと、キララ。

 ラヴェンダ。

 カプリちゃん。

 そしてエレンとジュリエットだ。


 エレンとジュリエットは、当初は連れて行くつもりは無かったんだけど、第2王子の派閥を根本的に潰すことになった今、末端のソイゲント男爵を監視する意味も無くなる。

 それならばこの2人をクリーセェ様の側近に付けて、働かせた方が良いように思う。

 特にジュリエットは、「政略」というスキルを持っているし、『女帝』というギフトは貴族の政争の中で活かせそうな気がするからね。


「それでは伯爵様、ご令嬢をお預かりいたします。

 決して悪いようにはしません」


「いや……こちらこそ、娘をよろしく頼む」


 私達は、お互いに頭を下げる。


「それからクリーセェ様は、必ず王座に就けます。

 そのつもりでご準備くださいませ」


「う……うむ」


 伯爵は少し尻込みした様子で答えた。

 ちょっと第2王子に対する、殺気が漏れてしまったかなぁ?


 次にラムちゃんが、父へ別れの挨拶をした。


「父上、いってまいります」


 頭を下げる娘を前にして、伯爵は一瞬答えに詰まる。

 しかしすぐに、意を決したように口を開いた。


「ああ……。

 ラムラス……私はそなたを厳しく育ててきたが、そなたを失いかけた時、それだけでは足りなかったのだな……と、悔いた。

 もっと愛情をかけてやれば、良かったのでは……と。

 

 思えば我々は、会話も少なかったな……。

 私は不器用で、今まではできなかったが、色々と話したいことがある。

 必ずまた帰ってくるのだぞ……!」


「はい、次に会う時は、母上のことを沢山を教えてください!」


 父と娘の別れは終わったようだ。

 2人の間に何があったのか、それは私には分からないけど、永遠に会えなくなる可能性に直面してようやく、お互いに言いたいことが言えるようになったのだろうね。

 ……私は結局、両親とは本音で語り合うことはできなかったので、少し羨ましい。


 それでは出発しますか。


「カプリちゃん、王都の方角はあっちだって」


「オーケー!

 じゃあ全員、ハンドを繋いでくださーい!」


「ん、手を?

 今までの転移とは違う?」


 お姉ちゃんが首を(かし)げる。

 確かに普通の転移魔法ならば、術の効果範囲内にいれば問題無い。

 だけど今回はちょっと急ぐので、通常の転移はしない。


「バラバラにならない為だから、全員手を放さないでね」


「バラバラ……?」


 なお、手を握ることができないクルル(縮小済み)とキララは私が抱きかかえ、私はお姉ちゃんとラムちゃんに両肩を掴んでもらう。

 これで全員が輪のように繋がった。


「よし、みんないいね?

 カプリちゃん行って」


「ハーイ、ゴーですよー!」


 次の瞬間──、


「「なっ──!?」」


「空ぁ!?」

  

 私達は空中に投げ出された。

 このままでは墜落するが、そうはならない。


「えっ!?」


 私達は再び転移する──が、そこはまた空中だ。

 しかも、転移はまだまだ続く。


 これは空中に転移してから、カプリちゃんの視界が届く十数km先の空間までまた転移し、それを何度も繰り返すことで、大幅に移動時間を短縮しようというものだ。

 転移魔法って基本的には、行ったことが無い場所には跳べないけど、目で見える範囲ならば問題無いからね。

 

 普通の人間ならば、目の届く範囲などたかがしれているし、転移魔法を何度も連続して使えないけど、上位竜であり桁外れの視力と魔力があるカプリちゃんだからこそ可能な、高速移動方法だ。


 ただ、空中を移動している為、うっかり手を放したら空に置き去りにされ、墜落死する危険性もあるが……。

 まあ、カプリちゃんの術の効果範囲は広いので、そう滅多にある事故では無いと思うけどね。

 手を繋いでいるのも、あくまで念の為だ。


「あ、都市が見えてきたでーす!」

 

 お、もう王都に着いたのか。

 30分もかからなかったなぁ。

 この方法を、もっと早く思いつけば良かった。


 ともかく、ここからが本番だ。

 待っていてね、クリーセェ様。

 今助けに行くから!

 当初は王都の事件まで片付けるつもりだったのですが、あと数話では終わらない気がしてきたので、王都での話は次章に持ち越します。そんな訳で、第6章完。

 次回は幕間のエピソードです。

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