16 王都へ
いやぁ……まさか幼児化したラムちゃんに、授乳プレイするとは思わなかったよ……。
なんだか気持ちよさとは別の、満ち足りた感覚があったね……。
あれが母の喜びか……。
ちょっと子供が欲しくなったけど、男がいらないんだよなぁ……。
女の子同士で、子供が作れればいいのに……。
一方、子供役のラムちゃんだが……、
「あ~~~!
うぁ~~~!」
冷静になったら急に恥ずかしくなったらしく、顔を両手で覆って呻いていた。
私も恥ずかしかったけどね?
でも、これで拉致されていた間のことを、忘れた……という訳では無いのだろうけれど、少しでも気が紛れてくれたのならば良かった……。
「ま、マルル殿……。
先程のことは、2人だけの秘密にしてくださいね?」
「分かったよ、ラムちゃん」
「そっ、その呼び方も、2人きりの時だけですよ!?」
「はいはい」
さて、問題はこれからだ。
私はラムちゃんが落ち着いた頃を見計らって、質問した。
「ラムちゃん……思い出すのも嫌だと思うけど、これだけは教えて。
ラムちゃんを拉致したのは誰……?」
「それは……!」
ラムちゃんの顔が強ばる。
身体も少し震えているようだ。
「ラムちゃん、無理はしなくてもいいんだよ?
後でもいいからね」
私はラムちゃんを抱きしめた。
すると彼女の震えは、徐々に収まっていく。
「いえ……大丈夫であります。
私は……宿屋で入浴時に襲撃を受けました。
どうやら湯船に毒が混ぜられていたようで、ろくに抵抗することもできず……」
ああ、ラムちゃんのほどの実力者が、簡単に拉致されるのはおかしいと思っていたけど、毒かぁ……。
確かに毒耐性系のスキルは持っていなかったな。
今は「万能耐性」を付けているから、もう大丈夫だけど……。
「どのみち武器も無い状態では、毒が無かったとしても勝てなかったでしょう。
相手もそれほどの実力者でありました。
顔は隠していましたが、体付きはまだ若く、その若さであれだけの実力者は、王国でもそう多くはありません。
かつて騎士学校に通っていた頃に、訓練で剣を合わせたことがあるブジアルド侯爵家の長男・ガルカランに似ていました。
ブジアルド侯爵家は、第2王子派です」
やはりクリーセェ様と王位を争っている第2王子……エルナスといったっけ?
そいつの仕業か……。
しかし証拠としては、まだ弱いな……。
「それと……私の監禁中に訪れた男達の中に、第2王子がいたと思います……」
は? 王子が直接陵辱に、加わっていたって言うの……!?
「そ、それは本当なの!?」
「は、はい。
第2王子とは、クリーセェ様と一緒に1度だけ会ったことがありますが、あの顔と声は間違い無いかと……。
あの男、女癖が悪いことで有名で、あの我らを値踏みするような、下卑た視線は忘れようもありません」
ラムちゃんは、ブルリと身体を震わせた。
一体第2王子に、何をされたというのか……。
さすがにそれを聞くことはできないけど、かなり酷いことをされたのだろう。
……よし、第2王子のぶち殺し確定!
最低でも暗殺はする。
だが、まずはクリーセェ様の安全確保だ。
おそらくラムちゃんを人質にされていた所為で、今は身動きが取れなくなっていたはずだけど、ラムちゃんの無事を知れば動き出すだろう。
だからこそ、その前に第2王子派は、強攻策に出る可能性がある。
そうなる前に、私達がなんとかしなきゃ。
「ラムちゃん、私、王都へ行ってクリーセェ様を助けてくる。
その間、ラムちゃんはここでゆっくり休んでいて」
「いえ、私も一緒に行かせてください!」
「え……でも……」
王都に行けば、ラムちゃんは自身を苦しめた者達と、再び相対することもあるだろう。
それは精神的に、かなり辛い想いをする結果になるかもしれない。
「騎士道を歩む者として、このまま泣き寝入りはできぬのであります。
どうか雪辱を果たす機会を私に……!
それに我が剣は、マルル様に捧げたく思います。
あなたを守る剣として、一緒に行かせてください!」
と、ラムちゃんは私の前に跪き、頭を下げる。
「え……?
剣を捧げるって、私を主君として仰ぐってこと?
クリーセェ様は?」
「クリーセェ様は、あくまで友です」
ああ、主従かと思っていたけど、実際にはそういう関係だったんだ。
私を主君に……っていうのは驚いたけど、ラムちゃんの気持ちも無碍にはできないなぁ。
なにせ私の可愛い娘だし。
「分かった!
ママと一緒に行こう、ラムちゃん!」
「そ、それはやめてください!
そういうのは、また次の機会に……」
と、ラムちゃんはゴニョゴニョと抗議するけど、顔を赤く染めてまんざらでもなさそうだった。
少なくとも「次の機会」は期待している。
「でも、まずはお父様にちゃんと挨拶して、元気な姿を見せてあげてね。
出発はそれからだよ」
「は、はい」
伯爵も娘のことについて、かなり心配していることだろう。
まあ幼児プレイという、ある意味もっと心配な要素を、増やしてしまったような気もするけど……。
さて、私はカプリちゃんに連絡を入れて、出発の準備をしよう。
彼女の転移魔法を駆使すれば、今日中に王都へ到着することも可能なはずだ。
これから忙しくなるぞ!
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