プロローグ 悪夢の異世界転生
新連載です。よろしくお願いします。
私には前世の記憶がある。
前世ではしがないOLをやっていたはずだけど、最後の方は働いていた記憶しか無い。
働いている時には気付いていなかったが、所謂ブラック企業というものだったのだと思う。
毎日のように辞めたいと思っていたのに、生活が苦しくて貯金も無く、辞めた瞬間に食べていけなくなりそうだったので、辞めるに辞められなかった。
そもそも残業はほぼ毎日な上に、休日出勤も多い環境では、転職先を探す暇など無かった。
結局私は過労死でもしたのか、それとも精神を病んで自ら命を絶ったのか、気がついたら別の女の子になっていた。
8歳くらいの時に、姉から棒で頭を殴られたのを切っ掛けにして、突然前世の記憶が蘇ったのだ。
そして今私がいるこの世界が、異世界なのだということを理解した。
文明レベルが中世くらいだし、見たことの無い生物や魔法なんてものまで存在する。
web小説や、漫画・アニメなどでよく見る、異世界転生というやつだ。
だけど私に高揚感は無かった。
前世で生きていた日本の生活水準に慣れていた私としては、こちらの生活はキツイ。
食事は少ない上に不味くて不衛生だし、家は隙間風が吹き込むようなボロボロで冬は寒く、トイレも汲み取り式で汚い。
夏場には虫も沢山出てくる。
何よりもキツイのは、お風呂が無いことだ。
川や井戸水で水浴びするしかない。
だが、冬は寒すぎて無理なので、濡れタオルで身体を拭くしか無いというのは、風呂好きな日本人としては心が折れそうになった。
そして子供でも容赦なく農作業などにこき使われるし、夜になったら電灯が無いので蝋燭の薄暗い灯りしかなく、何もすることが無いので眠るしかない。
そして日の出とともに、また働かされる。
勿論、娯楽になるようなものは存在しない。
テレビもスマホも、マンガもゲームも、遊技場の類いさえ酒場以外は存在しない。
……まさかブラック企業に勤めていた頃よりも、ブラックになるとは思わなかったよ……。
当然、私はこの世界に馴染めなかった。
結果、不平不満が態度にも出てしまい、その所為で両親や姉から叱られることも少なくなかった。
早くこんな生活から抜け出したい……!
私は貧困層に生まれたからこんな酷い生活を送らなければならないけど、上流階級ならばもっとマシだと思う。
もっとも普通はいくら努力したって、貧困層から抜け出すのは難しい。
教育を受けていないから、字すらも読めないし、肉体労働しかできないからだ。
だけど、一発逆転のチャンスはあった。
この世界では12歳になると、神様から「ギフト」という加護を授かるらしい。
その時に得られるギフトによっては、超人的な力を得ることもあるのだとか。
中にはそのギフトの力で、王様になったという人もいるそうだ。
よし、私も凄いギフトを得て、この最低の生活から抜け出すぞ……!
……そう意気込んだものの、実際に得られたギフトは──、
──『百合』。
……なんぞ、これ?
とりあえず明日も更新します。
あと、そろそろ完結する『乗っ取り魂~TS転生して百合百合したいだけなのに、無慈悲な異世界が私の心を折りにくる。』の方も読んで頂ければ嬉しいです。