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『第3回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』シリーズ

最高の密室

作者: 佐藤そら
掲載日:2021/12/13

 内定をもらった中から、俺がこの会社を選んだのは、実に不純なものだった。

 

 さまざまな企業が入ったオフィスビル。

 初めて面接で足を運んだ時、エレベーターに乗り込んだ俺は、行き先のボタンを押すのに手間取った。

 その時、居合わせた女性が親切に教えてくれた。

 彼女は凛としていて、キャリアウーマンといった雰囲気だ。

 

「初めて来た時、わたしも迷いました。面接ですか? 頑張ってくださいね」

 

 彼女はにっこり微笑んだ。

 その笑顔は、雰囲気とギャップがあり、このドキドキは面接に対するものなのか、俺は疑うほどだった。

 

 

 めでたく新入社員になった俺は、社内で彼女を探した。

 年上の彼女とのオフィスラブに期待をしていたが、彼女の姿はそこにはなかった。

 

 

 

 そんなある日、エレベーターに乗っていると、彼女が乗り込んできた。

 

 いたぁ!

 

 彼女は、俺には全く気付いていない様子だ。

 それもそうか。

 俺は5階のボタンを押したが、彼女は15階のボタンを押した。

 彼女は別の階で働いていた。

 俺は、何かと居合わせるタイミングを探した。

 けどそれは、出社のタイミングくらいしか見つけられなかった。

 毎朝、彼女がエレベーターに乗り15階のボタンを押す姿を俺は見つめていた。

 

 

 何の進展もなく、会社にもなれた頃、事件は起きた。

 退勤し、エレベーターに乗り込むと、そこには彼女が乗っていた。

 エレベーターの中は、二人きりだ。

 

 こ、これは、一緒に帰れるチャンス!?

 話しかけてみる?

 この後、ご飯行きませんか的な?

 いやいや、そんなことをしたら、絶対変な奴だと思われる!

 

 

 突然、エレベーターがとまった。

 

 

 え……

 まさか、これって、閉じ込められた!?

 

 そんなドラマみたいな話あります?

 こんな究極な状況あります?

 エレベーターは最高の密室じゃないか!

 おいおい! 今は喜んでる場合じゃねぇだろ!

 

 我に返り、俺は非常ボタンを押す。

 ふと横を見ると、彼女がしゃがみ込んでいた。手は震えている。

 閉所恐怖症?

 彼女のこんな姿は初めてだ。

 

「だ、大丈夫ですか? 今、助け呼びましたから!」

 

 彼女の返事は小さく、聞こえなかった。

 

 

 ほどなくして、エレベーターは動き出した。

 彼女はホッとした様子だった。

 

 

 

 翌朝、再び彼女とエレベーターで居合わせた。

 彼女は、5階のボタンを押した。

 続けて15階のボタンを押す。

 そして、俺の方を見た。

 

「君って、面接の時、ここで会ったよね?」

 

「お、覚えててくれてたんですか!?」

 

 彼女はクスッと笑った。

 

 

 これはきっと、誤解じゃない。

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― 新着の感想 ―
[一言] あ、 最高の密室だ!! しかも… いい感じの… 品の良い感性が私には欠けているんだなあ…(-_-;)
[良い点] まさに最高の密室!!
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