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『第3回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』シリーズ

最高の密室

作者: 佐藤そら

 内定をもらった中から、俺がこの会社を選んだのは、実に不純なものだった。

 

 さまざまな企業が入ったオフィスビル。

 初めて面接で足を運んだ時、エレベーターに乗り込んだ俺は、行き先のボタンを押すのに手間取った。

 その時、居合わせた女性が親切に教えてくれた。

 彼女は凛としていて、キャリアウーマンといった雰囲気だ。

 

「初めて来た時、わたしも迷いました。面接ですか? 頑張ってくださいね」

 

 彼女はにっこり微笑んだ。

 その笑顔は、雰囲気とギャップがあり、このドキドキは面接に対するものなのか、俺は疑うほどだった。

 

 

 めでたく新入社員になった俺は、社内で彼女を探した。

 年上の彼女とのオフィスラブに期待をしていたが、彼女の姿はそこにはなかった。

 

 

 

 そんなある日、エレベーターに乗っていると、彼女が乗り込んできた。

 

 いたぁ!

 

 彼女は、俺には全く気付いていない様子だ。

 それもそうか。

 俺は5階のボタンを押したが、彼女は15階のボタンを押した。

 彼女は別の階で働いていた。

 俺は、何かと居合わせるタイミングを探した。

 けどそれは、出社のタイミングくらいしか見つけられなかった。

 毎朝、彼女がエレベーターに乗り15階のボタンを押す姿を俺は見つめていた。

 

 

 何の進展もなく、会社にもなれた頃、事件は起きた。

 退勤し、エレベーターに乗り込むと、そこには彼女が乗っていた。

 エレベーターの中は、二人きりだ。

 

 こ、これは、一緒に帰れるチャンス!?

 話しかけてみる?

 この後、ご飯行きませんか的な?

 いやいや、そんなことをしたら、絶対変な奴だと思われる!

 

 

 突然、エレベーターがとまった。

 

 

 え……

 まさか、これって、閉じ込められた!?

 

 そんなドラマみたいな話あります?

 こんな究極な状況あります?

 エレベーターは最高の密室じゃないか!

 おいおい! 今は喜んでる場合じゃねぇだろ!

 

 我に返り、俺は非常ボタンを押す。

 ふと横を見ると、彼女がしゃがみ込んでいた。手は震えている。

 閉所恐怖症?

 彼女のこんな姿は初めてだ。

 

「だ、大丈夫ですか? 今、助け呼びましたから!」

 

 彼女の返事は小さく、聞こえなかった。

 

 

 ほどなくして、エレベーターは動き出した。

 彼女はホッとした様子だった。

 

 

 

 翌朝、再び彼女とエレベーターで居合わせた。

 彼女は、5階のボタンを押した。

 続けて15階のボタンを押す。

 そして、俺の方を見た。

 

「君って、面接の時、ここで会ったよね?」

 

「お、覚えててくれてたんですか!?」

 

 彼女はクスッと笑った。

 

 

 これはきっと、誤解じゃない。

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― 新着の感想 ―
[一言] あ、 最高の密室だ!! しかも… いい感じの… 品の良い感性が私には欠けているんだなあ…(-_-;)
[良い点] まさに最高の密室!!
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