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零の怪
よく夢を見る。
それは“幸せ”な夢だったと思う。
自分と、他に二人いて、三人で“幸せ”な時間を過ごす夢。
そこには自分が想像しゆる以上の“幸せ”があって、自分はこれ以上の“幸せ”を知らないと思えるほど“幸せ”な夢だった。
だけど、終わりは必ず決まっていた。
一人が、必ず死んで終わる。
死ぬ人は決まっていて、自分ではない、二人の内の片方が必ず死んだ。
そこで、必ず目が覚めた。
起きた時には夢の内容なんて忘れていて。
だけど、“幸せ”な夢だったという記憶と、それは失われてしまった絶望感だけが、自分にはあった。
これが、自分の記憶なのか、他の誰かの記憶なのか、そもそも記憶ですらないのか、それは自分には分からない。
でも、きっと、目覚める度に抱くこの感情は、きっと自分のものなのだと思う。