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05. 騎士学校へ

「ユリアン、卒業後に騎士学校へ行く気はないか?」


6年生の冬、卒業を間近に控えた僕は今、校長室に呼び出されている。


騎士学校とは、12歳から25歳の若者を対象に3年間、王国を守護する騎士としての教育を施す機関だ。

クラルヴァイン王国の騎士職とは、<剣士><槍士>などの前衛職だけでなく、<魔術士><弓士><僧侶>などの後衛職や支援職も含まれる。

役割は王国の守護だけでなく、当然魔物の討伐や犯罪者の摘発、貴族間の紛争の解決なども行う。

危険な任務が多く、負傷は日常茶飯事、戦死することもたびたびある。

従って騎士職は常に新兵の補充が必要で、入学年齢の幅を大きくしてあるのだ。

とはいえ貴族の家の都合を考慮にいれたり、実績のある冒険者を騎士にスカウトできるなど、そういった理由もある。



5年生時のレベル測定が近づいたころから、僕は自分のレベルに小細工をすることをやめた。


「ユリアン、そのレベル何?HPもおかしくない?どうしたの?何かの故障?故障って何?」

「おい!なんだその職業は!<賢者>ってなんだ!賢いのか!先週のテストの点がよかったのか!」


「リリー、カイ、二人とも後半ちょっと何言ってるかわからないけど、クピド様の加護のおかげだよ」

「クピド様に祈りを捧げるとレベルが上がることがあるらしいんだよね」


ひょんなことから<鑑定Ⅲ>スキル持ちがマイスナーの街には存在しないことを知った僕は、クピド様の加護の効果を詐称したのだ。

詐称は正しくないかな。最近は夜な夜な寝る前にクピド様にきちんとお祈りしているし。嘘じゃないよ。たぶん。

でもこんな簡単な方法で趣味バレの憂いが解決するとはね。4年生の僕の浅知恵も困ったものだよね。



「君の実力であれば騎士学校でも好成績を、いや、トップクラスの成績を残せると確信している」

校長先生は気色ばんで断言している。

「騎士学校ですか・・・全然考えてなかったですけど、少し考えさせてください」


実は、騎士学校への入学は考えてなかったというのは真っ赤な嘘だ。

リリーもカイも騎士学校への入学を目指しているのだ。


リリーは6年次の勉強科目でトップの成績を継続し、高レベルの魔術士を目指し日々研鑽を積んでいる。

カイは実技科目では全て満点。普段厳しい教師からも、必ず素晴らしい剣士になると高い評価を得ている。

2人と幼馴染の僕も「また3人で一緒の学校に行きたいな」と内心考えていたのだった。


でも僕はもともとの才能が絶望的に無いし、今の実力はみんなよりも早いレベルアップのおかげだからね。

リリーにもカイにも、もちろん騎士学校に来るようなエリート達にも、すぐに追いつかれて追い越されちゃうんだけど。

あと、両親は基礎学校卒業後は実家の日用品店で手伝いをするものと考えているはずだ。

説得頑張らなくちゃね。


「ユリアン、おかえりなさい。今日はマイスナーウサギのシチューよ」

「母さん、家族みんなに大事な話があるんだけど・・・」



「いいんじゃないか?なあ母さん」

「・・・え?」

「はい、私も賛成ですよ?」

「騎士か、俺も兄として鼻が高いな。頑張れよユリアン」

「無理はしないでね?怪我にも気を付けるのよ?ご飯ちゃんと食べるのよ?かわいい服を着るのよ?」


レーア姉さんだけ何か方向が違う気がするが、家族みんなの意外な反応に驚いた。


「そりゃそうだろう。お前の学校の成績、<規格外につき評価不可>ってなんだよ。ウチの店の手伝いには向かねえよ」

「そうだね父さん。大事な商品を全部壊されちゃたまらないからね。ユリアンの分も任せといてよ」

「ありがとう。父さん、母さん、兄さんに姉さん、僕、がんばります」



僕は基礎学校を晴れて卒業した。

そして国立騎士学校マイスナー分校への入学試験に臨む。


「受験生の方ー!受験生の方は右手の受付でステータス登録をお願いしまーす!」


簡素な受付に相応しくなく、青いオーラを纏いながらテーブルの上に厳かに鎮座しているのは<賢者の石>。

なんでも前回の魔族大戦の時にいた賢者様が<鑑定Ⅳ>という規格外の魔法を込めた魔道具だそうだ。


「なんだか緊張するわね。でも楽しみ!」

「こんなもん楽勝だぜ楽勝ぉ!」


いつも通りのリリーとカイのセリフを背中で聞きながら、実は緊張しすぎて吐きそうな顔が二人に見せられないユリアンは登録の順番を待つ。

「次の方どうぞー」


「はい、この賢者の石に手を置いてください」

「よ、よろしくお願いいたしましゅ!」

大事なセリフを噛みながら、ユリアンが静かに手を翳す。

「・・・はい?なんですかこのステータス・・・誰か先生を呼んできて!どの先生でもいいから!」


混乱する受付のお姉さんを尻目に、ユリアンは自分のステータスを改めて確認する。



名前: ユリアン

種族: 人族

年齢: 12


レベル: 92


HP:  8391

MP:  6766


状態: 正常

性向: 通常


職業: 賢者

マスター基礎職: 鍛冶士、魔術士、剣士、拳闘士、狩人、僧侶、道化士

マスター上級職: 錬金術師、密偵


スキル:火魔法Ⅴ、水魔法Ⅴ、土魔法Ⅴ、風魔法Ⅴ、回復魔法Ⅴ

    剣技Ⅲ、格闘Ⅲ、弓術Ⅲ

    剛力Ⅲ、俊足Ⅴ、索敵Ⅴ、持久力Ⅲ、回復強化Ⅲ

    鑑定Ⅴ、鍛冶Ⅴ、耐熱Ⅲ、耐魔法Ⅲ

    上級職転職


加護: クピドの加護



「れ、レベルがみんなより早く高くなっただけで・・・実は弱いんです・・・よろしくお願いいたしましゅ・・・」


次々と集まってきては次々と無言で固まっていく騎士学校の教師陣に囲まれながら、ユリアン少年は二度目の噛み芸をしたのだった。



「あぁ?なんだアイツは?随分目立ってるじゃねーか」


遠巻きに騒ぎを見ているのは、既に受付を終えてイライラしながら待ち時間を潰す、槍士風の少年。

体躯はユリアンよりも2回りくらい大きく、逆立てた金髪、装飾を施した派手な槍、同じく派手な皮鎧と派手なマント。


「平民風情が。いかなる時も、このティモ=ナウマン様以上に目立っちゃいけねーな」


まもなく騎士学校の入学試験が開始される。

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