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04. 少年、レベルダウンを試みる

マズい。なんとかしなきゃ。


明日のレベル測定で、レベルがいきなり49になってたら絶対に理由を聞かれる。

「クピド様の加護によるものだ」と話すこと自体は問題ない。たぶん。


でも、夜な夜なの趣味のせいってみんなにバレたら・・・人生終わりだ。


「どんなふうにするの?」「何を使うの?」「どこでするの?」「誰を妄想するの?」「毎日だったの?」


いやいや無理無理。否である。絶対的に断じて否である。

もう二度と学校に罷り越すこと能わず、と僕は愚考致すものである。


「父さんはいつでも相談に乗るぞ。安心しろ。明日一緒に教会に行こうか」

「お母さんの育て方が間違ってたのかしら・・・」

「ユリアン、兄として言おう。こんな弟を持って私は恥ずかしい」

「私はいつでもユリアンの味方だからね?どんなユリアンでも私のかわいい弟よ?」


ああ、これはダメだ。

変な言葉遣いになってる場合じゃない。なんとかしなきゃ・・・。



ユリアンは帰宅後すぐベッドに突っ伏し、あれこれ対策を考えてみる。


「やっぱりダメだよ。詰んでるよ」


当日の朝、急に発熱して真っ青な顔で「今日休みます」作戦も昨日すぐに考えたが。

「レベル測定の日に欠席した生徒は別日に実施します。安心してください」

という校長先生の暖かい無慈悲なお言葉を拝聴し、断念したのだった。


「えー?レベルが高い?なんでだろうね?僕わかんないや」などと知らないフリを決め込む手もあるが。

事象を不可解に思う学校側が「再鑑定を」などと言い<鑑定Ⅲ>持ちを連れて来られたらそれこそ全て終わり。


夕食後さらに1時間かけて考えてみたのだが。

鑑定士のおじいさんをなんとか懐柔するとかね。

あの鑑定士さん教会の偉い人みたいだし、余計にことが大きくなりそうだ。


どう考えても無理だ。もういいや。

僕の安らかな人生は終わったんだ。さようならみんな。

クピド様、一生恨みますからね。


「よし、今日も夜な夜なしちゃおう」

人生に絶望したユリアンはいそいそと現実逃避をするのだった。


「ほへぇ」

いつもの10秒、しかしそれは現在の状況も相まって、もうすぐ10歳になる身としてこれまでにない至福の10秒だった。


そしてユリアンがそのまま睡魔に身を任せようとしていたとき。


『<鍛冶士>レベルが上限に達しました。転職しますか?<YES>or<NO>』


!!!

<鑑定Ⅲ>!!!



名前: ユリアン

種族: 人族

年齢: 9


レベル:50(max)

    転職しますか?<YES>or<NO>


HP:  602

MP:  140


職業: 鍛冶士


スキル:鍛冶Ⅲ

    鑑定Ⅲ

    剛力Ⅱ

    持久力Ⅰ

    耐熱Ⅰ


加護: クピドの加護



レベルに<max>の文字。

もしかしたら・・・これで・・・転職<YES>!!!


『<職業>を選択してください』


う。考えてないよ。

うーん。どうしようかな。

やっぱり<商人>かな?

でもせっかく自由に選べるみたいだし、慎重に・・・。


そうだ。もう擦れたくない。


腕立て伏せで繰り返される地面と下腹部の擦れや、弓術での胸部への衣服の擦れではない。

ユリアンが思い浮かべたのは、柔術の実技科目。


「寝技こそ正義!寝技を制するものが世界を制す!」


などと意味不明な言葉を吐き出す実技教師に、幼い身体を隅々まで蹂躙された記憶。

実は教師は蹂躙などしていないのだが、普通の寝技であっても敏感なユリアンには充分すぎる仕打ちだった。


「ひぅ・・・もぅ・・・やめ・・て・・くださ・・い・・・」


その間、極端な近接戦を必要としない、リリーを始めとする<魔術士>や<僧侶>などは、魔法実技を行っていた。

リリーは少し離れた的に火の玉のようなものを当てながら、ほんのり上気させた顔でチラチラと、ユリアンの穢されていく様子を眺めながら楽しそうに笑うのだ。


<魔術士>だ。

僕はもう擦れたくない。

近接実技は免除となる。

リリーが風魔法で首筋にいたずらしてくるのも同じ風魔法で防げるだろう。

日焼けしたカイの浅黒い肌を、火魔法でさらにこんがりと焼き上げることもできるだろう。

それは無理か。


『<職業>を選択してください』


<魔術士>!


『職業<魔術士>を獲得しました』


そして<鑑定Ⅲ>!



名前: ユリアン

種族: 人族

年齢: 9


レベル:1


HP:  602

MP:  140


職業: 魔術士

マスター職業: 鍛冶士


スキル:鍛冶Ⅲ

    鑑定Ⅲ

    剛力Ⅱ

    持久力Ⅰ

    耐熱Ⅰ

    火魔法Ⅰ


加護: クピドの加護



やった!レベルダウン成功!

これで夜な夜なの趣味はバレないぞ!


<職業>が<鍛冶士>じゃなくなったのと、<マスター職業>などという9歳に相応しくない存在は、何かの間違い、ということにしよう。

スキルも変なので何かの間違いにしよう。あれ・・・?できるかな・・・。

鑑定士のおじいさん、ごめんなさい・・・。


そしてクピド様、一生恨むとか言ってごめんなさい!

ありがとうございます!敬愛しております!


よしこれでおっけー。急転直下の万事解決。みんなおやすみ・・・


・・・じゃない!

<レベル1>はマズい!

去年のレベル測定ではレベル3だった。

こっそり見たカイとリリーのレベルは4だ。他のクラスメートもみんな4だ。

ということは、せめてレベル4までは上げないと不自然だ。


レベル測定は明日。

明日までに3つレベルを上げないといけない。


「男には、やらなければならない時がある。それが今さ!」


ユリアンは宝物の雑誌を片手に、颯爽とトイレへ向かうのであった。


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