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第3話〜慌ただしい転生。そして…

『落ち着きました?』


「………ああ」


あまりに情けない己の最期を知ってしまったショックでしばらく落ち込んでいたユウキだったが、さすがに手乗りサイズの少女に慰められてしまえばいつまでもいじけてはいられなかった。


背景以上にセピア色に染まっていた彼は、虚ろな瞳に希望を灯した。


端から見れば何かキマッている目をしていた。


しかし純粋無垢な妖精には瞳の奥の絶望を汲み取る能力はないようだった。


『それじゃあ時間も押してることですし、次に移りますね?この空間、実は時間制限があるものですから』


シルフィーが申し訳なさそうに頭を軽く下げてきた。


脱線したのはユウキのせいだというのに。


彼はこの正直で真面目な妖精に自らの胸でキュンとするものを感じた。


『テスターをやっていただく以上、アナザーワールドで活動してもらうわけですが、こちらの世界はユウキさんのいた世界とは生態系はおろか法則すらも異なります。そしてコンセプトは【ゲームの世界に入るまでもなくファンタジー】なので、様々なゲーム要素が取り込まれています。危険な【モンスター】や【魔法】、【多種多様な種族】、【恩恵】や【スキル】など、新旧問わず地球のゲーム要素があります。あ、いい忘れましたが、アナザーワールドの管理者は、地球のゲームや二次創作品を参考にアナザーワールドを創ったらしいですよ』


「そ、そうなんだ」


思いの外管理者、おそらく神様的な立ち位置の存在は地球の文化に関心があるらしい。


『さすがに画面中央に選択肢を出したり、いきなり何かの使命を与えられて決められたストーリーに嵌め込まれたり、といったことはないのでご安心ください。コンセプトはアレですが、自由にアナザーワールドを楽しんでいただければ十分です。世界中を巡るもよし、商売をするもよし、ハーレムを築くもよし、魔導を極めるもよし、何でもありだそうです。最も、アナザーワールドは地球同様に実在する世界ですので、国々には法や倫理観、人々にはルールと感情がありますので、留意しておいてくださいね』


まるでゲームであってゲームでない、が裏のキャッチコピーにありそうな説明。


ゲームではモンスターは攻撃できてもNPC は攻撃できないが、現実では刃物を振り回せば誰かが傷付く。


範囲魔法でパーティーメンバーが全滅、自分の技で自滅する、なんてこともあるから気を付けろということだ。


最近のゲームと現実の違いの分からない若者のような行動を取れば相応のしっぺ返しがあるという、言ってみれば当たり前のこと。


シルフィーはその小さな両手を掲げるように伸ばしたかと思うとカーテンを開くような動作で左右に振った。


するとユウキの目の前にゲーム画面などで見たことのある複数のアイコンが表示される。


唐突に現れたそれらに驚きつつ手を伸ばしてみると、実体はないのか透過してしまう。


「これは………」


いきなり現実味のないことをされた佑樹は現実とゲームの違いは何かという問いに晒された。


『これから行うのは、いわゆるキャラメイクですね。名前や種族、見た目を設定します。あくまでテスター用なので不便な点や改善点などがあった場合、私に言ってもらい、申請が通れば改善されます。といっても、世界のバランスが崩れるような、あるいは片寄るような設定はできません』


キャラメイク。


つまり今のユウキの顔や体格はおろか性別までまるで別人になれると?


ネットの匿名性やなりすまし、匿名性故の狂暴性をこの妖精や管理者とやらは知らないらしい。


これは倫理を試しているのか、はたまたモラルに挑戦しているのか。


いや、別人になりすますのではなく、別人になるのだから問題はないのか。


『ちなみに、キャラメイクで変えられるのは性別、種族、髪の色くらいですね。デフォルトは元のままに、設定によって調整するので、違和感はあると思いますが不自然さはないはずです』


「キャラメイクが終わったらもう見た目の変更はできない?」


『いえ、アナザーワールドには性転換薬や見た目を変える指輪などがあるので、キャラメイクはあくまでロールプレイ用ですね』


「性別や種族によって何か能力に差はでる?」


『はい。アナザーワールドはゲーム性の強い世界ですし、法則も異なるためパラメーター次第では子供が大男に腕力で勝つこともありますが、基本的な能力値では女性より男性のほうが腕力では勝っています。しかし柔軟性では女性の方が優れてますし、もちろん個人差もあります。種族に関してもそれは当てはまりますね』


「なるほど………」


意外と現実的な設定らしい。


もちろんアナザーワールドが現実に実在する世界であることは分かっているが。


「さすがに性別を変えるのはちょっとな………。髪型は、この天パ気味な髪をストレートにしたいな………。というか種族はいくつくらい………」


『あ、………時間切れです!』


「へ?」


『説明に時間を取られてキャラメイクや【スキル】などの設定のための時間がなくなってしまいました!』


「ちょ、どういう………」


『本来ならここでした説明はすでに終わってるはずだったんです!でもユウキさんは記憶がなかったので………。なのでキャラメイクやスキル設定などに使われるはずだった時間があと少しでなくなり、強制的にアナザーワールドに転移させられます!』


「ちょっと待って!キャラメイクはこの際いいとして、【スキル】とかこういった異世界転生ものでは重要なんじゃ」


『はい、テスター特典で候補の中から選んでもらうはずだったのですが、もう説明している暇は………!あと10秒で強制転移が発動します!』


「ちょ!?とりあえずなんでもいいからスキルを!」


『は、はい!』


【ユウキはスキル〈???〉を手に入れた】


どたばたと慌てる一人と妖精。


頭の中に事務的な声が響くと同時に、ユウキは白い光に包まれた。


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