第18話〜初めての街
要石を越える際にモスとスラが不安定な状態になったり、微精霊たちが森の境界ギリギリでユウキを引き留めようとしたりといった一幕もあったが、半時程度で何事もなくツキワの街の外壁までたどり着くことができた。
ユウキやマリアーナは気付いていなかったが、移動中はクニツナが薄い殺気を放っており、低ランクしかいないこの森のモンスターたちはこぞって巣穴へと逃げ帰っていたのであった。
ちなみにクニツナがS級の冒険者であることをユウキが知るのはほんの少しだけ後のことになる。
そうとは知らずにユウキはやけに得意気な顔をしたモスの背中に乗って、そして自身の頭の上にスラを乗せたままマリアーナ達の後ろをついて来ていた。
始めは歩いていたユウキだったが、幼女の体は体力も相応でしかなく、さすがにクニツナにおぶられるのは中身が男子高校生としてはプライドが許さなかったため、自身よりやや大きいモスの背中に揺られることとなったのである。
ステータス的に成人男性よりも数値上は高いはずだが、数値化されない部分で【幼女化の呪い】はユウキの足を大いに引っ張っていた。
モスは人に害なすモンスターであることを忘れたのか、澄んだ瞳でユウキを乗せて堂々と歩いている。
「モスちゃんとスラちゃんはユウキちゃんのじゅうま?だったんだ」
マリアーナは興味津々、といった様子でモスを見ているが、種類が異なるとは言え同じ猪型のモンスターであるブラックボアに殺されかけたばかりであるため、近づこうとはしなかった。
スラはいつの間にか澄んだ青色の体から小麦色に代わり、ぱっと見た限りでは麦わら帽子のようにも見える姿へと変形している。
どうやらシルフィーが何やら教え込んでいるようだった。
シルフィーの存在はまだクニツナやマリアーナにも知られていない。
「身分証を見せてくれるか?マリアーナの嬢ちゃんの連れでも、一応仕事なんでな。身分証がなければギルドで仮証明書を発行することもできる。その場合は手続きと50ギルカが必要だ」
ツキワの街に着いて早々に一行は門番に引き留められた。
そして持ち物を厳重にチェックされる。
モンスターのいるこの世界では集落程度の村であっても塀や堀を築いて入り口には見張りを置いている。
これはモンスターだけでなく、敵対した組織の人間や指名手配された罪人の出入りを監視するためでもある。
そしてごく稀にモンスターの卵や違法の品を密輸する者もいるからだ。
内心で焦るユウキ。
この世界での身分証明書のようなものは当然のように持っていない。
ましてや森の奥にいたため貨幣など持っているはずもなかった。
モスやスラは簡単な審査で無害だと分かればギルドで従魔登録するために首輪を付けて入ることはできるが、本職のテイマーや調教師が調教したわけではないので不安は残る。。
ユウキは幼い(外見の)ため、クニツナが保証人として全て手続きする。
なので問題はないのだが、堀の深い強面の門番や馬車に乗った商人、様々な色の髪をした人種を見て緊張してしまっていた。
日本人に近い見た目の人間も少ないがいるにはいる。
しかしまるでコスプレのようなフルプレートや大剣を携えた、本当に様々な種族の人。
これぞファンタジー!な世界観に、転移してからずっと森の中で生活していたユウキは気圧されてしまっていた。




