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Fight.1 自然なキスまでは、まだまだ。

「あのっ…私とこれからいっぱい、一緒にいてください!」

 その時僕はどんな顔をしていただろうか。

 あまりに急で、何がなんだかわからなかった。

 そんな突然の告白。それから彼女と付き合うようになり、それから4ヶ月。

 いや、正確に言えばまだ3ヶ月だろうか。

「あの時はびっくりしたよ…告白されてないって思っていただなんて、ショック」

「まだそのこと言うか…」

 そう、僕は彼女にそんなあいまいな告白の仕方をされたせいで、1ヶ月もの間その言葉を愛の告白だと受け取っていなかった。

 …なんだか男の僕が愛の告白なんて言葉を言うのも気持ち悪い感じはするが、とにかくそういうことだ。

 結果としては、僕が気持ちを抑えることができなくなって改めて告白して…

 当然彼女には怒られたけど、でもお互いに気持ちを確認できたということにはなったのだから、これはこれで良かったのかもしれない。

 と、思いたいところもあったりして。

 そういえばその時…

「ん?どうしたの?」

 彼女が僕の視線に気付いたのだろうか。僕が大口を開けたら一口で食べることができてしまいそうなその小さな口から、言葉が紡ぎだされる。

「いや…」

 見ていたのは、彼女の口というよりは…その唇。

 特に何をしたいというわけでもないぞ、と自分自身に言い訳をしたところであんまり意味がないか。

 どうしても、意識してしまうのは仕方のないことだった。

 気持ちが通じ合った時、突然彼女からお互いのそれを触れ合わせてきたのだから。

「責任、取ってもらうからね」

 なんて彼女が舌を出して言いながら。

 実はあれからというもの、一回もそこに触れていない。

 まともに気持ちが通じ合った時から考えればいきなりキスから始まった関係にしては、3ヶ月もの間何もないというのも変な気はするが…

「今日はどうするんだ、と思って」

 しばしよこしまな考えをしていたのを頭から振り払って、無難に返事を返してみる。

「…本当にそんなこと考えてたの?」

 彼女は勘がするどい。付き合っていたという認識がおのおのでずれていたのがきっかけだったのか、それからというもの、ずいぶんと敏感になっているらしい。

「なんでそう思うんだ」

「私の顔をじっと見てたから」

 まさか、答えに程近いところまで当ててくるとは思わなかったが。

 唇を見ていたところまで気付かれなかったのは幸いだったかもしれないけど。

 でも、これはチャンスなんじゃないだろうか?

 彼女の様子をうかがってみる。

 何も言わずに、その丸くかわいらしい目が僕だけをとらえている。それはもう、吸い込まれそうなくらいに…

 だから、自然と体は動いていた。

 彼女の肩をつかんで…

「ん、なに…?」

 顔を、近づけて。

「あ…」

 吐息だけが、僕の顔をかすめる。

 僕からはじめて仕掛けた、2度目の口づけ。

 

「…ようやくしてくれた」

 彼女がうつむいて言う。でも、すぐに顔を上げて。

「どこを見てたのかなんて、わかってたんだから」

 結局、彼女には全てお見通しだったらしい。

 

 自然なキスまでは、まだまだ。

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