表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/41

第六話 パンサーラビット

 西の方向にしばらく歩くと、今見つけた川に到着した。


 水の色は透明で小魚が泳いでいる。


 ふぅ……飲めそうでよかった。


 遠目には綺麗に見えても近くで見るとドブ水なんてこともあるからな。


 さて、ここからが問題。この水をこのまま飲むかどうかだ。

 一度火にかけるのが常識的な行動だと思うのだが、これだと飲みたい時にすぐ飲めない。


 というか水筒の水はここに着くまでに飲んでしまって、今もう喉が乾いている。


「……少しだけ少しだけ」


 一口だけ水を口に含んですぐに吐き出してみる。

 特に変な味や舌が痺れる感覚はなかった。


 これならいける……気がする。


「大丈夫。絶対に大丈夫」


 王子として強い体を作る訓練は積んである。


 ウジの湧いた生肉を食ったこともあるし、山中訓練の携帯食に毒を混ぜられたこともある。


 俺は川に顔を近づけると思い切って水を飲んだ。

 ゴクリと喉が鳴って味は…………うまいっ!


 うまいぞこの水!

 こんなに美味な水が毒ということはないだろう。


 俺は入るだけ水を水筒に詰めて、バケツ五杯分ほどを《解体》のスキルで体に収納した。

 水が建築資材に含まれているのは驚きだがラッキーだ。


 これで水不足は解消できたな。


 次は食料だ。


 ビスケットと干し肉、干し魚はもう残り少ない。

 木苺のような食べられる木の実は発見できたが、これだけじゃお腹がふくれないからな。


 やっぱり肉だ。

 新鮮な肉が食いたい。


 俺は家に戻りつつ獲物を探すことにした。

 できるなら捌いたことのある鶏か兎がいればいいんだが。


「うーん、ないなぁ……」


 動物の足跡を探すが中々見つからない。

 そもそもこの森に普通の動物はいるのか?


 もしかして魔物しかいないんじゃ……。

 そう考えていると目の前に兎タイプの魔物が現れた。


「キ、キキー!」


 鋭い二本の牙が特徴のパンサーラビットか。

 強さは前に倒したスライムと同じ『低級』ってとこだな。


 小さいが好戦的なタイプの魔物だ。

 この場で俺を食うつもりだな。


「キイ、キイイイイッ!」

「よっぽど腹が減ってるみたいだな。悪いがディナーになるのはそっちだ!」

「キウ゛ィィッ!」


 パンサーラビットはゴムボールのように木々を蹴って、かく乱戦法を仕掛けてきた。


 こっちが目で追えなくなったところで首に噛みつくつもりだろう。


 低級な魔物にしては考えているようだが甘いな。

 俺は木を蹴る瞬間にその幹を《解体》した。


 狙いを外したパンサーラビットは藪に突っ込んでいく。


「グ、キイイッ!」

「終わりだ。《建築》《ウォーターボディ》!」

「キッ!?」


 《解体》した幹をパンサーラビットに向かって《建築》する。

 《ウォーターボディ》を付与した幹は小さな体を飲み込んだ。


「…………ッ!」


 水風船のようにプニプニした幹は簡単に牙で切り裂けない。


 数分するとパンサーラビットはぐったりして動かなくなった。


 よし、今日の夕食が出来たな。


 家に戻ると血抜きや毛皮を剥ぐ前に、パンサーラビットを《解体》してみることにした


 解体『パンサーラビット』

 ・スキル《跳躍》レベル1を取得。


 短い距離だが物を飛ばすスキルだ。

 弓矢がないからありがたい。


 スキルが有用なもので助かったが、ここからが本番だ。


 血や毛皮、骨、内臓など食べられない部分を除いて肉だけを取り出すように意識する。


 …………。


「よし、やった!」


 新鮮な肉だけを体から取り出すことができた。


 《建築》も便利だが《解体》スキルの応用力はすごいな。


 これならすぐ魔物を食品に加工できる。


 あとはコイツを料理するか。


 火打ち石と小枝、あと《解体》した薪で手早く火を起こして丸焼きにする。


 味付けは塩だ。


 普通の人間なら魔物を食べることに抵抗があるかもしれないが、俺は気にしない。

 なぜなら限界まで腹が減っているから。


「うん、パンサーラビット美味いな」


 ムシャムシャと肉を食べる。


 魔物を食べるのは初めてだったが味は普通の兎と同じ、いやそれより上かもしらない。

 肉汁のあふれる胸肉をほおばりながら、俺は食べられる喜びを噛み締めた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ