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第五話 解体スキル

 スライムというと弱そうなイメージを受けるが、人間の顔に取り付き水の体で溺死させる恐ろしい魔物だ。


 再生能力もあり倒すには素早く切り刻むか、魔法で吹き飛ばすしかない。


 俺の力で倒すことができるか……いや、待てよ。


 《解体》のスキルがあればスライムをバラして収納できるかもしれない。


「ニュニュ、ニュー!」


 スライムはおかしな鳴き声を出しながら飛びかかってきた。

 俺はカウンターを合わせるように《解体》を発動し、プニプニした体の一部に触れる。


「ニュウウウゥツ!」

「くっ、ダメか」


 生き物を直接バラして収納することはできないのか、スキルが弾かれる。


 だが、そんな時のためにもう一つの手を打っておいた。


「《建築》」

「ニュ? ぶにゅうぅっ!?」


 スライムは元の形に《建築》し直した大岩に潰され息絶えた。


 水の体がパシャパシャと周りに飛び散る。


 よし! 生まれて初めて魔物を倒したぞ!


 それも一対一なら大人の男でも不覚を取るスライムをだ。


 ずっと下位王子として馬鹿にされてきたから、すごく達成感がある。


 そういえば倒したスライムは《解体》できるのだろうか。

 俺はスライムの破片に向かってもう一度スキルを使ってみる。


 おっ、今度は成功したみたいだ。

 体の中にスライムの存在を感じる。


 いや……それだけじゃない。

 自分のスキルを確認する時のように、頭の中に文字列が浮かんだ。


 解体『スライム』

 ・スキル《自動修復》レベル1、《ウォーターボディ》レベル1を取得。


 スキルを取得???

 建築師ってこんなこともできるのか!?


 普通の生産職ならあり得ない高スぺックだ。


 この取得したスキルを建築した物に付与できるなら、どんな魔物にも負けない家を造ることだってできるかもしれない。


 よし、水場は明日探そう。

 俺は急いでログハウスに戻ることにした。


「えっと……これでいいのか?」


 戻ってきた俺はさっそくログハウスにスキルを付与してみた。

 ぱっと見は変化がないが、手で触れてみると以前との違いはすぐにわかった。


 《ウォーターボディ》を付与した壁はプニプニと波打ち、《自動修復》を付与した壁はナイフでつけた傷をあっという間に修復してしまった。


 これで魔物の襲撃にあってもしばらく時間を稼げそうだ。


 付与したスキルに《解体》を使うと再び体に収納することができた。

 付与の失敗を気にしなくていいのは助かるな。


 早くも日が沈んできたので、今日の探索は終わりにしよう。

 俺は食事を摂り、眠りについた。


 翌日。


 水筒の水がいよいよ尽きそうだ。

 今日こそは気合を入れて水場を探さないといけないとな。


 しかし、今までのようにただ歩き回っても見つけられる可能性は低いだろう。


 俺は昨日ログハウスに戻る時に思い付いた方法を試すことにした。


 まず六本の大木を《解体》し材木にする。


 そして俺の前に積みあがった材木を一本の大木として再び《建築》する。


 ただし、建築物は俺の足元から生えてくるように。


「お、おおおおおおおおおぉ!?」


 足元が急速に盛り上がり、上に向かって体が加速する!

 俺は振り落とされないように必死に枝にしがみついた。


 《建築》が終わると頬にビュービューと風が吹きつけてきた。


「おお……すごい景色だ」


 《建築》した大木の天辺からはパラアキラの森が一望できた。


 地平線まで緑が続き俺のいる場所がヤバいところだと一発でわかる。


 それはともかく景色は綺麗だ。


 天にまで届きそうな巨大樹に、群れになって飛んでいく怪鳥たち、そして血管のように森のあちこちを川が流れている。


 ……あった!


 そう川、ずっと探していた水場を発見できた。


 これでようやく水がなくなる恐怖から解放される。


 一番近い川は俺の家から五キロも離れていないようだ。

「巨人の探し物は足元」という格言通り、欲しいものは意外と近くにあったようだ。


 俺は大木を少しずつ《解体》し地上に降りると、川に向かった。





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