第三十八話 VS大食いワーム
ワーム系の魔物は人間くらい簡単に丸呑みできる巨体が特徴だ。
視力は良くないが微かな音も聞き逃さず、的確に獲物を追い詰める大地のハンターなのである。
「シュー、グシュウゥー」
「あたしが切り込む! お前たちは援護しろ!」
生臭い息を吐きだす大食いワームにカレンが突撃する。
分厚い皮膚に生半可な斬撃は通用しないが、どうするつもりなのだろうか。
「くらえ! 《雷刃》!」
カレンの剣が雷を帯びると腹部を切り裂いた。
青白い電撃が迸り、緑色の体液がブシャアアアァーっと飛び散る。
あれは『剣士』のスキル、流派は『雷神流』だな。
男ならだれもなりたいと思う戦闘職の一つだ。
ぶっちゃけうらやましい。
「シュギイイイイイイイイイィツ!」
「今だ! 畳かけろ!」
「おおおおおおぉ!」
「い、いっくぜえ!」
電撃と斬撃の二重ダメージで悶絶する大食いワームに、男たちが一斉に襲い掛かる。
同じ部位を連続で斬りつけ、分厚い皮膚を貫いていく。
その度にミミズめいた巨体が苦しそうにくねった。
「わたしたちの出番はなさそうですね」
フィーナが胸を撫でおろしながら言う。
一体多数とはいえ、中級魔物を圧倒できるのはさすがだ。
初めは頼りないと思っていたが、以外とこの村の戦力は充実しているのだろうか。
「トドメだ! 《大雷刃》!」
雷が伸びてカレンの剣が巨大化する。
これは勝負あったか。
いや……。
「みんな逃げろ!」
「アレン?」
「なんだよ兄ちゃん……」
「シュー、シュゴオオオオオオオッ!」
「「「「「うわ、ああああああああああああああああ!」」」」」
大食いワームは口から未消化の食物を吐き出した。
つまり、人間や魔物の骨を。
頭蓋骨やあばら骨が辺りに散乱し、カレンたちが吹き飛ばされる。
「ぐっ、くそぉ」
「シュウウゥ……」
剣を落としたカレンに大食いワームが迫る。
これは傍観してる場合じゃないな。
「フィーナ!」
「はい! 《スピードスター》!」
フィーナは俺を担いで、カレンの前に立ちふさがった。
「バカ! なんで出てきた! 生産職の勝てる相手じゃない!」
「《建築》」
返事をする前にスキルを発動する。
無数の牙が見える口に木材を突っ込んだ。
「ッ……シュウウッ!」
「《ドッペルゲンガー》!」
「《建築》《溶解の毒液》」
「シュ、グウウウウウウウウウゥ……ッ!」
ワーウルフの爪が頭部を切断し、《溶解の毒液》を付与した三角錐の石が胴体を貫く。
ドタンッと地面に倒れ、ビクビクと巨体を痙攣させる大食いワーム。
ワームは生命力が強く、死んだと思っても立ち上がってくる。
念のため木の杭で貫いておこう。
「大丈夫かカレン。危ないところだったな」
「あ、あんた……」
また驚かせてしまったかな。
生産職だと人前で戦いにくいのが難点だ。
フィーナも最初は戸惑っていたし、引かれてしまうかもしれない。
だが、カレンの言葉は俺の想像していたものとまったく違った。
「あんたすごいじゃん! あたしと一緒にクエストいこうよ!」
へ?




