表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/41

第三十二話 移動城塞ローテンベルク

「っ……大丈夫かフィーナ!」

「はい……なんとか……」


 《ドッペルゲンガー》が解除されると、俺とフィーナは絨毯の上に倒れた。


 周囲には壊れた食器や家具が散乱している。


 どこから攻撃を受けたのかまだわからないが、命があっただけマシだと思おう。


 《嗅覚探知》にもやはり魔物や人間の気配はない。


 超長距離魔法なら今すぐにでも追撃がくるはずだし、魔力の気配も感じられない。


 ひとまず危機は去ったはずだ。


「くそっ、ひどいな」


 外に出てダメージを確認する。

 四本の脚はすべて折れ、壁や屋根にも亀裂が入っていた。


 とにかく応急処置だけでもしておこう。


「《解体》《建築》」


 壊れた部分を一度《解体》して再度《建築》し直す。


 手持ちの資材だけでは完璧に直せないが、これで動くと壊れるようなことにはならないはずだ。


 壊れた脚はレベル4を解除して、また生やせばいい。


 ただ今日はもう体力が限界なので、できそうにないな。


 移動するのはまた明日だ。


「フィーナ、中の片づけ手伝うよ」

「お願いします。あーあ、このお皿お気に入りだったのに……」


 フィーナは耳と尻尾を萎れてさせながら、真っ二つになった皿を見つめていた。。

 悲しんでいる姿を見ると俺もつらい。


 材料が手に入ったらすぐに新しいのを造ろう


 そうやって家の中を片付けている内に夜になってしまった。


 収納しておいたパンサーラビットの肉とイカ芋のサラダを食べて、俺たちはすぐにベッドに入った。


 翌日。


「よし、準備もできたし出発するぞ」

「アレン団一番隊員のフィーナです。隊長、一言よろしいですか?」

「なんだフィーナ隊員」

「本日の目標はなんでしょうか? まったく未知の場所に着陸してしまいましたが。わたしはもうすごく不安です」

「まず村を探すとこからだな。ここが一体どの地域なのか聞いておきたい。それから方針を立てるのだ」

「なるほど、たしかに。それではお願いします!」


 小芝居を挟みつつ俺はスキルに意識を集中させる。


 《建築》レベル4を発動し、四本の脚を復活させる。


 これでようやく家ごと移動できるようになった。


 あとは進む方角を決めるだけだ。


 東の方角を見るとはるか遠くに塔のようなものが見えた。

 《嗅覚探知》にもわずかだが生き物の痕跡があったので、東に行ってみよう。


 ただ距離が離れているので、相手が人間が魔物かわからない。

 こればかりは俺の運に期待するしかないな。


「それでは出発!」


 ガシャガシャと脚を動かし、我が家が進み始めた。

 けっこう振動がくるが、ゴーレムを操っているみたいで楽しいな。


 そうだ、せっかくなので我が家に名前をつけよう。

 龍騎兵が愛ドラゴンに名付けるように、カッコイイ名前がいい。


 いや、それだとフィーナが怒るか?


「フィーナ、家の名前を決めようと思うんだが何か希望ってあるか?」

「……別に何でもいいです……好きにしてください……」


 スタート時のテンションはどこへやら。

 げっそりした声で返事が戻ってくる。


 フィーナを見ると顔をブルーベリー色にしながら窓から顔を出していた。

 もしかして酔ってるのか?


「だ、大丈夫か?」

「わたしこの動き苦手です……頭がグラグラして……うっ」


 こっちを見るなという目をされたので離れておこう。

 変な水音が聞こえてくるが、確認する勇気はない。


 さすがに体調が心配なので何回か休憩を入れながら進むことにした。


 むしろなぜ俺が平気なのか不思議だ。


「フィーナ具合はどうだ?」

「ちょっとマシになってきました。うう……まだ慣れませんけど……」


 気の毒だが住家と家財道具をすべて運ぶにはこの方法しかない。


 できるだけ早く村が見つかればいいんだが。


 ちなみに我が家の名前は『移動城塞ローテンベルク』に決定した。

 フィーナにはまだ言っていないが、われながらナイスネーミングだと思う。


「おっ、あったぞ」」

「やったぁ……ようやくですね……」


 移動を初めてから三日後、ついに俺たちの前に村が見えてきた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ