表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/41

第二十八話 VSレッドドラゴンPart1

 レッドドラゴンが第一防衛ラインに到達した。


 俺たちはそこから百メートル離れた第四防衛ラインで、投石機に岩をセットする。


 そして前方のレッドドラゴに目標を定め、発射した。


「撃てーッ!」


 深紅の体表目掛けて岩が放たれた。






 ☆




 side:レッドドラゴン


 生まれた瞬間に彼は自分が最強であることを自覚した。


 頑強な鱗に鋭い牙、大空を自由に飛び回り気に入らない相手は火炎で黒焦げにする。


 体長がまだ人間サイズだった頃から、レッドドラゴンは負け知らすだった。


(弱い。どいつもこいつも弱すぎる)


 成長し巨大な体を手に入れると、ますます敵はいなくなった。

 魔物も冒険者も騎士団でさえも、爪の一撫で火の一吹きで命を終わらせる。


 そうして戦いに飽きたレッドドラゴンはパラアキラの森に辿り着き、しばしの休眠を取ってから暴れることにした。


 森のすべてを焼き尽くそうとすれば、必ず強者が阻みに現れると考えたのだ。


(さて楽しむか)


 雪が解け腹が減るとレッドドラゴンは活動を開始した。

 手始めに目についた魔物を食い殺し、木々を焼き払う。


 あえて空を飛ばずに徒歩で進撃する。

 その方が獲物の悲鳴を楽しめるからだ。


(つまらん。出てくるのは雑魚ばかりか。この森には強者がいると聞いたのだがな)


 声を震わせながら話しかけてきた老魔法使いを思い出す。

 自分たちの国を見逃す代わりに、魔物の集まる森の位置を教えてきたのだ。


 もし嘘ならジジイの国を焼き払おうと考えていたその時、前方に木の杭でできた柵を見つけた。


 人間が魔物との戦いでよく用いるものだ。


(おもしろい。こんなところに人間がいるのか)


 明らかに自分へ向けられた障害物を前に、口元が三日月めいて吊り上がる。

 弱者を踏みにじることほど楽しい遊びはない。


 軽く前足を振るうと、ガラガラと音を立てて柵は崩壊した。

 皮膚にわずかな痒みを覚えたが、気にするほどのことでもない。


「撃てーッ!」

(ほう)


 少し離れた場所から岩が飛んでくる。

 それはレッドドラゴンの体に命中し、砂ぼこりで鱗を汚した。


「ゴオオオオオオオオオオオオッ」

(くだらん真似を。オレの体を汚した報い、思い知れ!)


 口を開きスキル《紅蓮の息吹》を発動する。

 鉄をも溶かす炎熱がいくつかに分けられた柵を、投石機をまとめて焼き払った。


(弱者が。この森に住む人間なら多少楽しめると思ったのだがな)


 焼け跡を眺めつまらなそうに鼻を鳴らす。

 その時、首筋にチクりとした痛みを覚えた。


「《ドッペルゲンガー》!」

「ガウウウゥ!」

「ガルルルゥッ!」

(なにっ!?)


 狐耳の娘とワーウルフが爪で首筋を引っ掻いたのだ。


(どうやって逃れたのかは知らんが寿命が少し伸びただけのこと──、ご、オオオオオオォ!?)


 突如、体の下から大木が生え、強烈に腹部を突き上げられた。

 鱗の薄い部分を攻撃され、レッドドラゴンは初めて顔をしかめた。


 その場で羽ばたき辛うじて空中に留まる。


(魔法使いか。消えろ!)


 大木とその根元にいる人間に向けて火炎を放つ。

 幹を燃やしつくし地面に広がった炎は逃げようとするワーウルフたちをすべて焼き尽くした。


 奇怪な魔法を使う人間もまとめて死んだだろうと、レッドドラゴンは考えた。


「《スピードスター》!」


 狐娘が人間を抱えて走っていく姿が見えた。

 そのまま石造りの建物に入っていく。


(なるほど。そこが貴様らの棺桶か)


 レッドドラゴンはニヤリと笑うと、建物に向かって突撃した。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ