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第二十五話 フィーナのコスプレ

「んー、いいですよ。でもただでじゃないですからね。わたしだって恥ずかしいんですから」

「なんなりと申し付けてくださいませ」

「一週間、わたしの代わりにお皿洗いとお洗濯をお願いします。それで手を打ちましょう」


 よっし、それくらいならお安い御用だ。

 フィーナのコスプレをじっくり見られるチャンスだからな。


 これがお店なら金貨を払ったって惜しくない。


「ではアレン様、どんな衣装をお望みですか? なんでもしてあげますよ」

「踊り子でお願いします。よかったらアドリブでセリフも……」

「承知いたしました」


 妖艶な笑みを浮かべてノリノリでうなずくフィーナ。

 なんか恥ずかしがってたわりには乗り気だな。


 《ドッペルゲンガー》を使うと衣装がメイドから踊り子に変化していく。


 まるで下着のように露出の多いエキゾチックな衣装、豊満な胸元も細くくびれたウエストも、扇情的なおヘソもすべて丸見えだ。


 踊るときになびかせるベールがフィーナの魅力をより高めている。


「あら新しいお客さんね。わたしの踊りたくさん見ていってちょうだい♪」


 腰をくねらせてリズミカルな踊りを俺に見せつける。


「こういう所は初めて? ふふ、かわいいわね」


 顔をいきなり近づけられドキドキしてしまう。

 これが本物の舞台なら周りの客に注目されてしまうだろう。


「はぁ……あああ……んっ、んんぅ」


 体が熱くなってきたのか悩ましい声が漏れ出る。

 やわらかな唇からこぼれる吐息がエロチックだ。


 ヤバい。

 今が夜ということもあって、なのにヘンな気分になってきた。


「い、いい踊りなんだけど他の衣装も見たいかな。次はお任せで」

「……お任せでいいんですね?」

「お、おう」


 フィーナは悪戯っぽく微笑んでこちらを見てくる。

 あれ? なんか変なスイッチが入った気がするぞ?


 スキルが発動し再び姿が変わる。


 今度の衣装はカジノでよく見るバニーガールだ。


 きわどいレオタードに網タイツ、ウサギ耳のカチューシャと蝶ネクタイ、大胆な衣装に俺の目が釘付けになる。

 大胆に開いた胸元、その中身がタプンッタプンッと揺れていた。


 思わずゴクリと生唾を飲み込む。


「お客様、当店のカジノは初めてですか?」

「う、うむ」

「ではわたしがお教えしてさしあげますね。手取り……足取り♪」


 そう言って体を押し付けてくるフィーナ。

 なんだなんだ今日はいつになく大胆だぞ!?


「あ、今赤くなりましたね。ダメですよギャンブルでお顔に出しては。ね?」


 耳に息を吹きかけられ、さわさわと太ももを撫でられる。

 ちょ、ちょっと過激すぎないか!?


 窓の外を見ると吹雪の隙間から満月が見えた。

 そういえば思い出したぞ。


 獣人は満月の夜になると気分が高まるらしい。

 さっきからやたら色っぽい表情をしているのはそのせいなのか!?


「……フィーナありがとう。じゃあ夜も遅いしそろそろ寝ようか」

「えー、楽しいのはここからですよ。《ドッペルゲンガー》!」


 三度目の衣装交換。

 目の前に現れたのはシスターの格好をした狐娘だった。


 黒いシンプルな修道服に頭のヴェール、体の線がでないのは「わたしは神に捧げれた身。男性と関係を持つことはありません」という意思表示だ。


 その神聖な衣装もフィーナが着ているとヤバい気がするのは、なぜなのだろうか。


「あなたからは悪魔の気配がします」

「そ、そうか? そんなことないと思うぞ?」

「いいえ、わたしの聖なるロザリオが反応しています。これは早急に悪魔祓いを行う必要がありますね」


 とろんとした瞳でフィーナが俺に覆いかぶさってくる。

 彼女の体が密着すると俺の力が抜けていく。


 抵抗したいと思う気力がコーヒーに入れた角砂糖のようにとろけていく。


「あなたは何も心配しなくていいんですよ。わたしにすべてを委ねてください。これは主にも認めれられた行為なのですから♪」

「あ、えっと」


 フィーナの顔が俺の顔に近づいてくる。

 その先ことは色々ありすぎて、ちょっと言葉にできない。





 ☆






 そして何度も太陽が沈み月が昇った。


 芋を食べたり氷に穴を開けて水を汲みにいっている内に吹雪は止み、雪は溶けていった。


「温かくなってきたな」

「はい」


 パラアキラの森に春が来た。




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