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第二十四話 冬が来た

「うう、さむ……」


 俺がパラアキラの森に来てから半年が過ぎた。

 王都にいた時が春だったことを考えると、もう冬が迫ってきている。


 日に日に温度は下がり、チラホラと雪が舞い始めた。


 そろそろ冬ごもりの準備をした方が良さそうだな。


「よいしょ。よいしょ」

「重そうだな。俺が半分持つぞ?」

「わたし獣人なので力には自信があるんですよ。これくらいラクショーです」


 山盛りの薪を片手で軽々と持ち上げるフィーナ。

 俺は《建築》レベル2でずるずると引きずって倉庫まで運ぶ。


 手助けがいるようには見えなかったが、俺も男なのであんなセリフを吐いてみたのだ。


 隣ではワーウルフ(死体)やスライム(死体)が、保存できそうな木の実を持って家に入っていった。


 これとイカ芋が冬の生命線だ。

 大事に食べていこう。


 窓を二重にして、アーマードボアの毛皮で分厚い毛布も造っておく。

 大きな暖炉を設置して、煙突も《建築》しておいた。


 水は入るだけの量を《解体》して、体に収納しておいた。


 ちなみに収納した資材は腐らないようだ。

 何か月も前のパンサーラビットの肉を取り出したが、問題なく食べられたからな。


 改めて思うがなんて便利なスキルなんだ。


 そうこうしている内に本格的な冬が来た。


 雪が膝のあたりにまで積り、吹雪が吹き荒れる。

 川に行ったら氷が張っていた。


 これは備蓄の水が無くなったら苦労しそうだな。


 春まで外に出ない方が良さそうだ。


 俺とフィーナはやることもないので、暖炉の前で火を見つめていた。


 外は満月で夜の闇を黄色い光が照らしていた。

 焔の揺らめきをボーっと眺めるととてもリラックスできる。


 畑の世話に魔物の襲撃と忙しいことばかりだったから、たまにはこういう時間もいいな。


 フィーナも暖炉の火が気に入ったのか、うっとりとした表情で頬に手を当てている。


 それから一時間後。


 二時間後。


 三時間後


 ……さすがに飽きてきた。


 やることがなくて暇すぎる。


 隣を見るとフィーナが顔を赤くして股間を押さえていた。

 火にあてられてのぼせたのだろうか。


 まあそんなことより暇つぶしの方が大切だ。


「フィーナちょっと聞きたいんだが」

「はい……なんでしょうか?」

「ドッペルゲンガーって服装も変化できるのか?」

「できますよ。やってみましょうか」


 フィーナは立ち上がると《ドッペルゲンガー》のスキルを発動する。

 村娘のような衣装が一瞬にしてメイド服に変わった。


「おおおおおおおぉ! おおおぉおおおおおおおおおおお!」

「い、いきなり雄叫びを上げてどうされたのですか?」

「いやすまん。ちょっと興奮しすぎた」


 黒のワンピース、白のエプロンドレス、クラシックなメイド服を着たフィーナが超かわいい。


 スカートの下からはモフモフの尻尾が顔をのぞかせ、フリルカチューシャと狐耳のコラボレーションしている。


 思わず抱きしめたくなるくらい完璧だ……。


 王宮で何人もメイドを見てきたが、一番だと言える自信がある。


「頼む。『お帰りなさいませご主人様』と言ってくれないか?」

「……しょうがないですね。お帰りなさいませご主人様♪」


 ニッコリと笑っておじきをしてもらう。

 なんだが本物の王族になった気分だ。


 つい口元がニヤけてしまう。


「ご主人様大丈夫ですか? さっきからお顔が気持ち悪いですよ?」


 ごく自然な反応としてフィーナが引いている。

 ちょっと男の本能が前に出すぎたな。


 これ以上引かれないように自重しよう。

 俺にも体裁というものがあるからな。


「お願いがありますフィーナさん、他の衣装も見せていただけないでしょうか?」


 気づけば俺は絨毯に五体投地していた。






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