第二十話 二人で暮らす
本格的に二人で暮らすとなると、もっと大きな家が必要だろう。
レベルが上がったことで基本の《建築》スキルの精度も上がった。
この家を改築する時が来たようだな。
「おはようございますアレン様」
「フィーナ、まだ寝ていていいんだぞ」
「いえ、大丈夫です。すぐ朝ごはんにしますね」
ベッドから起き上がり身支度を整えていく。
まだ眠いのか狐耳がペタンとしおれていた。
揚げ魚と木の実のクレープを食べ終わると、俺は改築のことを話した。
「わたしも賛成です。今の家はちょっと狭いですし……新しい家を見てみたいです」
「よし、じゃあどんな感じにするか決めようか」
外観や内装、新しく備え付ける家具など話し合いは深夜まで続いた。
「家ってのはかっこよさだ! ドラゴンにも勝てる最強の城塞を造るぞ!」
「ダメですダメです! わたしはオシャレで友達に自慢できるお家がほしいです!」
「こんなところに友達なんてこねーだろ!」
「ドラゴンだって来ませんよ!」
カッコ良さ重視の俺とオシャレ重視のフィーナで議論は平行線を辿ったが、最終的にフィーナの私室にレアな資材を投入することで決着した。
家のイメージが決まったら次は資材集めた。
材木はそこら中にあるので、外壁に使う岩石を取りにいこう。
「アレン様、この辺りでいいですか?」
「ああ、頼む」
「いきます。《ドッペルゲンガー》!」
初めに岩石を見つけた場所の木や雑草を《解体》し、採石場として使うことにした。
今までは武器としか見ていなかった岩石だが、そびえ立つ断崖の天辺には質のいい石があるとフィーナが見つけてくれたのだ。
今は切り出す場所にワーウルフの爪で印をつけているところである。
「できました」
「よし、《解体》」
足場を《建築》して《解体》で岩を体の中に収納する。
スキルレベルが上がって馬車九台分の量を一度に取り込むことができた。
これなら何度も来なくても大丈夫だな。
資材が集まると家に手を当て、外観や内装をもう一度強くイメージする。
またゼロから立て直すのは大変なので、元の家をベースにして増築するつもりだ。
最低限必要な家具は先に準備しておいた。
しかしこれ頭が痛くなるな。
初めにログハウスを造った時とは労力が比べ物にならん。
オシャレさとか無視してもっと簡単な構造でいいんじゃないか?
そう思って視線を横にやるとフィーナが期待に満ちた目で俺を見ていた。
尻尾をパタパタと振って「ご主人様期待してます!」と言わんばかりだ。
……やるか。
「《建築》!!」
俺のイメージ通りに外観が変化した。
よし、成功だ!
壁は頑強で二階建て、広くなった新しい我が家の完成だ!
外から見ると城を宿屋サイズにした感じである。
「やりましたねアレン様!」
「おう! さっそく中を見よう!」
扉を開け中に入ると、広いリビングが目に飛び込んできた。
パンサーラビットのカーペットにソファー、テーブルにはフィーナが書いた花の絵を元にした彫刻が彫られている。
台所は石造りで火を起こせば焼くのも煮るのも思いのままだ。
他にも食料棚に食器棚、料理に必要な物が一通りそろっている。
「見てください! わたしの部屋すごいですよ!」
自分の部屋を見たフィーナが興奮してピョンピョンとジャンプしている。
まあ俺は《建築》したから知っているんだけどな。
彼女の部屋には暗いところで淡く発光する『メルライト鉱石』を天井に使っている。
カーテンを閉めれば夜空にいるような光景が見えるはずだ。
ベッドは《ウォーターボディ》をふんだんに使い、クローゼットも上質な木で造られ、カーテンは滑らか、小物入れも充実、貴族の私室並みのクオリティだと自負している。
「わたしのイメージ通りです。ああ……素敵」
うっとりと壁を撫でるフィーナ。
気にいってくれたようで何よりだ。
ちなみに俺の部屋はベッドと机、クローゼットが置いてあるだけだ。
この方が自分のシンプルで使いやすいし、ここに来る前の自分の部屋を思い出せるからな。
ちなみ対魔物用の兵器もあるのだが黙っておこう。
フィーナの言うオシャレさとはほど遠いからな……。
「? アレン様どうかされました?」
「い、いや、なんでもない」
こうして俺とフィーナの新居が完成したのだった。




