第十八話 幻狐族のスキル
「それじゃフィーナ見せてくれるか」
「はい」
一緒に暮らすと決めて最初にしたことはお互いのスキルの確認だ。
この先魔物と戦う時に、相手のできることがわからないと話にならない。
すでに俺のスキルは《建築》《解体》と取得した魔物の分を全部説明している。
「いきます。《ドッペルゲンガー》!」
フィーナの両腕がワーウルフのものに変化すると、鋭い爪が伸びる。
そして庭に立てておいた材木をバラバラに切り裂いた。
「《ミラージュスタイル》!」
今度はフィーナの姿が五人に分身した。
本物はこの中の一人だけらしい。
息の合った連携攻撃で岩を砕く。
「《スピードスター》!」
フィーナの姿が消え、一瞬にして俺の目の前に現れた。
脚力を強化して高速で動くスキルってことか。
「どうですかアレン様。わたしお役に立てそうでしょうか?」
「すごいぞフィーナ。さすが魔法戦士だな」
「やったぁ! 嬉しいです」
フリフリと抱き心地の良さそうな尻尾を振るフィーナ。
人間よりも感情がわかりやすくて和む。
「幻惑系のスキルが多いのは種族の特徴なのか?」
「そうですね。幻狐族は敵を惑わして戦うのが得意です。ただ火力はないので冒険者になった子は攻撃力の高いパーティーを探してました」
応用力の高いスキルを習得していると、そういう弊害もあるのか。
「だからわたしは幸運です。アレン様と一緒に戦えますから」
「お、おう。そうだな」
なにか戦闘職ばりに頼りにされている気がする。
一応俺は建築師なんだが……まあいいか。
これからは俺ももっと強くならないとな。
その夜、俺は久しぶりに風呂を沸かしていた。
岩でできた浴槽に水を入れ、底に置いた薪に火を点ける。
お湯が沸いたら火傷をしないように木製のパレットを浴槽に敷いて入浴する仕様だ。
風呂は好きだがこの手順が滅茶苦茶めんどうなので、俺もまだ一回しか入ったことがない
だが今日は特別な日なのでがんばって火の番をする。
よし、できた。
「フィーナお湯が沸いたぞ。先に入っていくれ」
「わたしは後から入りますのでアレン様がどうぞ」
「いいのか? じゃあお先に」
服を脱いでかけ湯で体の汚れを落としてから入る。
体が湯に浸かるとつま先から頭に向かってジーンと痺れがきた。
あー、気持ちいい。
久しぶりだからすごく沁みるな。
これはフィーナも満足してくれるだろう。
「あの……アレン様ご一緒させて頂いてもいいですか?」
「へ?」
後ろを振り返ると、生まれたままの姿のフィーナがいた。
頬をリンゴみたいに赤くして、大事な部分は手と尻尾で隠している。
いや何が起こっているんだ?
これが幻術か?
「ま、ままままま……まあいいけど」
「ありがとうございます」
戸惑う俺を余所にフィーナは体を洗い、ちゃぽんと湯舟に浸かった。