第十六話 トイレの建築
「なるほど面白いな」
魚料理を堪能した翌日、俺は《解体》したパペーティアセンチピード・マザーのスキルを確認していた。
さすがに上級クラスだけあって今までの魔物とは桁違いに強い。
解体『パペーティアセンチピード・マザー』
・スキル《パペーティア》レベル5、《溶解の毒液》レベル4、《対毒》レベル4、《壁面歩行》レベル4、を取得。
この中で一番便利なのはやはり《パペーティア》だろう。
家の庭に積んでおいた木材にスキルを使ってみる。
「ギイ、ギィィ」
「おおっ、ホントに動くんだな」
木材がムカデの形になってカシャカシャと地面を這っている。
俺が頭の中で右、左と命令するとその通りに移動する。
次はコイツを今倒したパンサーラビットの死骸に入れてみる。
「キー! ニー!」
「跳ねろ」
「ニー! イー!」
《パペーティア》で操作したパンサーラビットは、命令通り生きているように飛び跳ねた。
心なしか血色も良くなり、これならぱっと見死体とはわからないだろう。
跳ねる以外にも「回れ」「足踏みしろ」「三歩下がってから真横に跳ねろ」など、細かい動きも思いのままだ。
さすがに元のスペック以上のことはできないが、戦いに雑用にと便利に使えそうだな。
スライムや倒した他の魔物にも使ってみよう。
さらに、昨日の戦いで俺のスキルは3にレベルアップした。
《建築》レベル3 触れたものを24時間以内なら指定した時間に建築できる。
《解体》レベル3 触れたものを24時間以内なら指定した時間に解体できる。
要は時間をズラしてスキルの効果を発動できるようになったわけだ。
まあ今のところ特に有効な使い道は思いつかないが、何かの役に立つこともあるだろう
「あのアレン様、少しよろしいですか?」
色々と考えているとフィーナが話しかけてきた。
なぜか顔が赤く見える。
また熱でも出たのだろうか?
「ん? どうした?」
「あの、大変申しにくいのですが……お手洗いを造っていただけると助かります……」
しまった。すっかり忘れていた。
俺はその辺の藪でしたり穴を掘っては埋めていたので、まったく気にしていなかったのだ。
そういえば昨日の夜、何回かフィーナが席を外していた気がいる。
たしかにうら若き女性にずっと野外でさせるわけにはいかないな。
これは早急に対処しないと。
「悪い! 今すぐ造るからな」
「いえ、お世話になっている身なのにすみません」
しかし、トイレってどう造ればいいんだ?
小屋や便座はすぐにでもできるが、肝心の排泄物を処理できない。
王都なら水洗式のトイレもあるんだが、レバーを押せば水の流れるあの仕組み、まったくわからん。
汲み取り式だと匂いの消し方がわからんし、素人の俺がやるとハエなんかが大量に発生するかもしれない。
んー、どうするか。
そうだ。こういう時こそゲットしたスキルの出番じゃないか。
「よし、できた」
俺は《解体》で深く穴を掘ると四方に板を立てて小屋を造る。そして床に板を張って穴の入口を狭め、その上に洋式便器を設置した。
洋式なのはフィーナの希望だ。
便座の横には台を置き、木箱に尻を拭くための葉っぱを詰めておいた。
かぶれる葉とかぶれない葉の見分けは体で覚えたからな。
「アレン様ありがたいのですが、その処理はどうするのでしょうか?」
「まあ見ててくれ」
便器の中に葉っぱを落として少し待つ。
すると褐色の塊が現れ葉っぱを飲み込んだ。
「こ、これは!?」
「《パペーティア》を使ったスカベンジャースライムの死体を穴の中に入れておいたんだ。俺の命令を聞くから絶対に襲われたりしないしよく働いてくれるぞ
「《パペーティア》ってあの大きなムカデのスキルですよね? どうしてアレン様が……?」
「そういえば言ってなかったな。《解体》した魔物のスキルは取得できるんだ。俺が大木の剣を持ち上げられたのもそのおかげさ」
「…………ッ!!」
フィーナは驚きすぎたのかその場で気絶してしまった。
うん、気持ちはわかる。
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