表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/41

第十五話 生産職の戦闘

 フィーナが伏せたのを確認すると、俺はバラバラなった木材を杭に《建築》四方八方に伸ばした。


「グウウウウウッ!」

「ガゥッ! ガアアアアアアアアッ!」

「キャウンッ! クウウウンッ!」


 わざとらしい悲鳴を上げながら胴体に杭をめりこませるワーウルフ。

 俺はその中の一体に近づくと《解体》した。


 肉や骨がバラバラになって俺の体に収納されていく。

 生きているものは《解体》できないので、やはりこいつらは人形だ。


 そして、ワーウルフの肉体の中で唯一収納できずに、弾かれるものがあった。

 木を《解体》する時と同じように。


「ギイイッ!」

「ビンゴ! お前が正体か!」


 俺の前に転がり出たのは一匹のムカデだ。

 こいつは図鑑で見たことがある。


『パペーティアセンチピード』獲物の耳から侵入し、脳を食いつくして体を乗っ取る邪悪な魔物。


 そして、そうやって侵入するのは子供で、全体の動きを指示する母親がいるはずだ。


「出てこい! そうしないとお前の子供が死ぬぞ!」


 俺は子供ムカデを踏み潰しながら大きな声で叫ぶ。

 こうされては黙っていられないはずだ。


「ギル、ギルギルギル……キシャアアアアアアアアアアアッ!」

「これが人形遣いの正体……あ、アレン様すぐに逃げないと!」


 木々を踏みつぶし母親が現れる。


 上級魔物『パペーティアセンチピード・マザー』宿屋程度ならぐるぐる巻きにできる巨体を前に、フィーナが青ざめながら叫ぶ。


 王都なら騎士団が百人がかりで戦う相手だが、俺には関係ない。

 あのゴブリン戦で戦い方は理解できた。


「心配するな。すぐに終わらせる」

「無理ですそんなの! 戦闘職のわたしでも絶対に勝てませんよ!?」

「生産職だって守られてばかりじゃないんだぜ。《建築》!」


 周りの木々を連続で触り一つの形にまとめる。

 大木のように長く太い巨大な剣に。


「シャアア……キイイイイイイイイイイイイイイイッ!」

「ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおおおぉ!」


 マザーは怒りに任せてこっちに突っ込んでくる。

 その巨体で轢き潰すつもりなのだろう。


 俺はレベル2のスキルで巨大剣を持ち上げる。

 この重量だと長くは無理だがそれでかまわない。


「大樹の重剣!」


 マザーの来る方向に巨大剣を振りぬく、というか重さに任せて倒す。


「ギッ!? ギガァアアアアアアアアアアッ! ギ……ギギ……」

「はぁはぁ……狙う獲物を間違えたな」


 巨大剣の下敷きになり、パペーティアセンチピード・マザーは息絶えた。

 この重さだと刃がなくても問題ないな。


「キィッ!」

「キキィ……」


 母親が倒されたことで子供たちはワーウルフの体を捨てて逃げ出した。

 これでもう俺たちを襲おうとは思わないだろう。


「す、す、す、す……」

「す? どうしたフィーナ」

「すごすぎます! アラン様はやっぱり勇者様ですよ!」

「だから生産職は勇者になれないって」

「関係ありません! わたしが決めました!」

「お、おい」


 興奮したフィーナが抱き着いてくる。

 う……胸の柔らかい感触がヤバいな。


「また助けられてしまいましたね。ようやく恩返しが出来ると思ったのですが」

「気にするな。その内返してくれればいい」

「そうですね。……考えてみます」


 フィーナは顔を朱色に染めながら言う。

 何を考えているんだろう。


「とにかくコイツをバラして帰るぞ。それでご飯にしよう」

「はい! とびきり美味しい魚料理を作りますね!」


 耳をピョコピョコ、鼻をフンフン鳴らすフィーナをなだめながら、俺はマザーの《解体》に向かった。 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ