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第十一話 狐娘、フィーナ

 そんな耳と尻尾なんて見つけた時はなかったぞ。


 そういえば、獣人は人里だと差別を受けることがあるため、見た目を変化させるスキルを持っていると聞いたことがある。


 つまりスキルが解除されたのだろう。


 まあ獣人だろうが悪魔だろうが俺の敵でなければなんでもいい。

 しばらく様子を見てみるか。


 俺はベッドの横に椅子を用意して、彼女の容体を見守ることにした。

 《ウォーターボディ》と木材で水枕を造って、頭の下に置いておく。


 これで少しでも熱が下がるといいんだが。


 念のため《指揮》で身体能力も上げておいた。


 これで何かあってもすぐに反応することができるだろう。

 後は朝まで様子を見ていよう。


 朝まで……。


 …………。


 ………………。


「ハッ!? え、あれ?」


 目が覚めたらもう太陽が昇っていた。


 しまった。最近寝不足だったせいで普通に寝てしまった!


 ベッドを見ると女性の姿はもうなかった。


 ……やっちまったな。


 もし女性が悪党だったら何か呪いのスキルをかけられているかもしれない。


 もしくは保存した食べ物を全部盗まれたり──


「おはようございます。お目覚めになられたんですね」

「お、おう!」


 扉を開けて女性が入ってきた。

 食べ物を集めていたのか手には木の実を持っている。


 熱はすっかり下がったのか顔色も良さそうだ。


「昨日は助けていただいてありがとうございます。あなたがいなければ命を落としていました」

「そいつは良かった。俺はアレン・ぶらっど……」


 名乗ろうとして、もうブラッドフォート家の人間ではないことを思い出す。

 これからは母さんの姓を名乗った方がいいだろうな。


「俺はアレン・タイラー。訳あってこの森に住んでいる。そっちの名前は?」

「わたしはフィーナ。幻狐族げんこぞくの獣人です」

「幻狐族……変化、幻影系のスキルが得意な種族か」

「はい。よくご存じですね」


 亜人種の中でも獣人は国家を築くほどの力を持っているので、各種族の文化やスキルについてはよく勉強させられた。


 王都の獣人は奴隷しかいないので、まともに話したのはこれが初めてだが。


「それでフィーナさんはどうしてこんなところで生き倒れていたんだ?」

「詳しくはお話しできないのですが……ある人間たちに追われているんです……」


 奴隷商から逃げていたんだろうか。。

 一人旅をしている獣人はよくターゲットにされていると聞くしな。


 まあどうやってここに辿り着いたのかは疑問だが。


「それは大変だったな。大したもてなしもできないが体を休めてくれ。そっちが気にしないなら泊まってくれてもいい」

「いいのですか? 治療してもらった上にそんなことまで……ご迷惑ではないのですか?」

「気にするな。ずっと一人で話相手が欲しかったんだ」

「ありがとうございます……本当にありがとうございますアレン様」

「アレン様ってアレンでいいぞ。フィーナさん」

「わたしの方こそフィーナでかまいません。あなたは命の恩人ですアレン様!」


 俺には呼び捨てを頼むのに、様付けはまったく変えるつもりはないようだ。


 可愛らしい見た目に反してけっこう頑固そうだな。


「わかった。よろしく頼むフィーナ」

「はい。わたしにできることならなんでも言ってくださいね」


 なんでもという言葉に普通の男なら邪なことを考えてしまうだろうが、俺は元王子だ。

 欲望に任せて軽率な行動を取ったりはしない。


「そうだ。マッサージをしましょうか? 疲れが溜まっているみたいですし、わたしマッサージ得意なんですよ」

「お、おう。じゃあ頼もうかな」


 ベッドにうつ伏せになって背中を指圧してもらう。

 うん……けっこう気持ちいいな。


 フィーナ手の温かさが直接肌に伝わってくる。

 たまに聞こえる吐息が妙にエロい。


 女性と二人っきりのマッサージに普通の男なら邪なことを考えてしまうだろうが、俺は元王子だ。

 欲望に任せて軽率な行動を取ったりはしない。


 ……今のところは。





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