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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
98/126

98話

 グレイウルフキングの姿が変わってからはその動きも変わっていた。


 最初と比べるとさらに素早く力強くなっている。しかも爪も鋭くなっているので攻撃を受けてしまうと、さっきよりも傷が大きく出来てしまうのだ。そのためさらに慎重になる必要がある。


 しかしこのことは事前に知っていたし、部屋に入る前にも聞いていたので驚きはしなかった。他のみんなも少し嫌な顔をしただけで、冷静に対処出来ている。


 グレイウルフキングがこの状態となったとしても俺がやることは変わらない。横や後ろに回りこんで魔法を撃つ、それだけである。しかしさっきよりも上手くいくことはなく、ことごとく攻撃が避けられてしまっていた。


 前衛の二人はサイズからの支援魔法のこともあって、攻撃を捌いていたがさっきほどの余裕はない。


「レヴィちゃん、何かいい方法ない?」


「んー、動きを止めるのにも気づかれ出来ないし、範囲が広い攻撃も前衛の二人がいるから伝えないと出来ないし、何度も出来ない。それにこっちに来たらかなり面倒なことになると思うし」


「そうなんだよねー」


 狙われていない俺とメリアナは比較的余裕があったので、牽制の魔法を撃ちながらも会話することが出来ていた。


 一度はこいつを倒しているのだからその方法を取ればいいのではと思ったが、それをしないのには何かしらの理由があるのだと思うし、聞くことが出来ていなかった。とりあえず俺が思い浮かぶもの言って見ることにする。


「無難に前衛が距離を取った隙を見て広範囲の魔法を撃っていくとか?」


「それだけだと私の魔力の方が尽きちゃうわね」


「落とし穴を作ってみるとか?」


「私、土魔法使えないんだよね。レヴィちゃんは?」


「私も使えないよ」


 後は、何だろう。


「私も前衛に加わって、攻撃の手数を増やすとか?」


「そうだねー。それが一番いいのかな。でも大丈夫なの?」


「大丈夫だと思うよ。後ろから動きも見ていたし。今の段階でもスカルノとハスターナも戦えているし」


「そうね。そうしましょうか。一回大きいのを使うわ!」


 決まったところでメリアナは大きな声で伝えると、そのまま魔法を使う準備に移った。


 そしてすぐに前衛の二人がグレイウルフキングから距離を取ると同時にメリアナの魔法がグレイウルフキングを襲ったのであった。見た目はトルネードと言ったとことだろうか、グレイウルフキングを囲うようにその魔法は放たれ、上手い具合に動きを制限できているようだった。


 そのうちに合流して作戦を伝えた。それを聞くと、スカルノも許可を出した。


 魔法が治まるとグレイウルフはその身体に多くの傷を付けて立っていた。本当にメリアナの魔法だけで倒せないのかと思ったのだが、まだ元気そうに大きな声で吠えたのを聞いて気を引き締めた。


「行くぞ! レヴィは基本的に攻撃だけ集中してくれ、他は俺たちがどうにかする!」


「わかった!」


 スカルノの言葉に頷き、三人でグレイウルフキングのもとへと向かった。するとその最中に支援魔法が俺に掛けられたのであった。初めての支援魔法に身体が軽くなるのを感じで、こんなふうになるのだと思い、今は集中するときだと考え目の間の敵に意識を集中するのであった。


「レヴィ、私にあまり近づくなよ」


 ハスターナの声に驚いたが、真剣な表情をしていたので俺は距離を取ってスカルノノ方へと近づいて行った。


「あれやんのかよ。まぁ確かに使った方が良いのかもしれないけどよ」


 スカルノの方は何をやるのかわかっているようで、少しげんなりした表情でそんなことを言っていた。そして次の瞬間、ハスターナがつぶやいた声によって俺も大体のことはわかったのであった。


「狂気化」


 そうハスターナがつぶやいた後、今までと比べられないほどの速さで一気に駆けて行き、その大剣を振り下ろしたのであった。ハスターナが言った狂気化という言葉だったことから、彼女のクラスは狂戦士ということなのだろう。


 つまりいきなり強くなったのは自信の意識が無くなる代わりに身体能力が向上するという狂気化の能力である。とても強くはなるが誰かれ構わずに攻撃してくるという面倒くさい能力とセットで付いて来るものだ。


「大丈夫なの?」


「ああ、ある程度は制御で来ているみたいだから、こっちから下手に手を出さなければ大丈夫だ」


 俺の言いたいことをすぐにわかったスカルノはそう返してきたのだった。制御できるんだと思い、スカルノにくっ付いてグレイウルフキングとの戦闘に加わったのであった。


 間近で見るとその威圧感が違って感じるが、俺は怖いという気持ちは感じずに不思議と落ち着くことが出来ていた。スカルノの動きに合わせて動き、ハスターナの反対側へと回って行った。


 ハスターナが脅威だと感じたのか、グレイウルフキングの意識はハスターナの方へと向いていて、俺たちに方はそこまで気にしていないようだった。それでも攻撃してくることを防ぐためか、尻尾などで俺たちの行動を制限していた。


 俺が攻撃することは伝えられていたので、スカルノという盾を使って俺もグレイウルフキングの懐へと近づいて行った。そして俺は全身の魔力を制御できる限界近くまで一気に高めた。


 すると同時になぜか今までハスターナを意識していたのに、俺へとその意識を変えてその場から離れるような気配を感じた。しかし俺はそのことを気にすることなく、攻撃を与えようと全力で剣をグレイウルフキングに向かって振るったのであった。


 俺が剣を振るうのと同時に地面を蹴ったグレイウルフキングは距離を取ることは出来ていたが、その身体には小さくない傷が胴体に出来ていたのであった。


「あれを避けんのかー」


 息を吐きながらも俺がそうつぶやくと、


「何だ今の? とてつもない魔力を感じたが……それに今グレイウルフキングが脅えていなかったか?」


 と言う声が後ろから聞こえてきた。そしてハスターナもその動きを止めてこちらの方を見ていた。


「ん?」


「いや、今は倒すのが先だな」


「そうだね。一気に倒しちゃおうか」


 その後はスカルノが動くと同時にハスターナも動き出して、三人で攻撃を繰り返した。やけに俺に脅えるグレイウルフキングにスカルノとハスターナの攻撃が通ることもあって、時間を掛けることなく無事に倒すことが出来たのであった。


 俺はと言うとなぜかものすごく警戒されていたので、注意を引くことに専念していた。


 そうして無事にグレイウルフキングを倒すことが出来たのであった。


「とりあえず、一回戻って休憩を取ることにしようか」


 スカルノのその言葉で全員部屋から出て、休憩を取ることとなった。みんな何やら考え込んでいる様子で、そのことから俺のことで何か聞きたそうにしているかと思ったので、どうしようかと考えながら俺もみんなの後を追ったのであった。


 しかし休憩中俺のことを気にする気配はあったものの誰一人と尋ねて来ることはなく、意図していなかった全く違うことを言い出したのだった。


「二十階層をこうして攻略出来たわけだが、この先はどうする? 進むか、戻るか」


「ここまで来たなら進みたいって気持ちもあるけれど、今日ので少し鈍っていたことを自覚したから引き返すというものありね」


「私は引き返す方に賛成だ。このまま進んでもどこかで止まってしまう。それなら一度引き返して勘を取り戻してからもう一度挑戦するのが良いと思う」


 スカルノの言葉にメリアナとハスターナがそう返したが、サイズとカイは他のみんなに従うようで黙ったままだった。


「レヴィはどうだ?」


「えーっと、どっちでもいいかな。あーでも、鈍っていると感じているのなら無理に進む必要もないと思うよ」


「そうか。確かに護衛依頼やカイを育てるために簡単なものしかやってこなかったからな。流石にここまで鈍っているとは思っていなかったけど、今回はここで帰ることにしようか」


「そうね」


 ということでダンジョンを上って引き返すこととなったのであった。俺も楽に行けるのであればこのまま行きたいのだが、そういうことであれば無理に行ってもしょうがない。そうした理由から引き返すことに賛成したのであった。


 ダンジョンの帰り道、よほど鈍っているのが嫌だったのか。俺とカイはただ付いて行くだけで、戦闘は他のメンバーだけで行っていたのであった。楽ではあったがただ付いて行くだけというのも退屈なものだと思った帰り道であった。


 帰りは行きよりも時間を掛けることなく上っていくことが出来た。これも戦闘勘を取り戻そうと頑張っていたことが関係しているのかもしれない。


 そうして無事にダンジョンから出て、街へと帰ることが出来たのであった。



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