84話
トロールガーディアンを倒した後、みんなとゆっくり話しながら街へと帰っていた。すでに暗くなり始めていたが、急ぐことはなく歩いている。正直なところみんな疲れているのだろう。
「そう言えば、レヴィがすごく強くなってたな。俺たちのこともう抜かしたんじゃないか?」
「そんなことないと思うけど」
「謙遜も過ぎれば嫌味になるぞ」
そんなことをギルに言われたが、本当に俺はまだ知識も経験も足りていないと思っているのだが、そんなことは実力があれば関係なくなると言い返されてしまった。
「確かにそういったものも必要ではありますが、それらがなくても倒すことは出来ますからね。ですから俺たちよりも強いことは確かですよ。もしかしなくてもリカルドさんよりも強いかもしれませんしね」
「そうだな。今日見た感じだと、そうなるな」
リカルドもみんなの意見に同意してしまった。
「そうなると、ずっとこのままというわけにはいかないよな」
「なに?」
「いや、何でもない」
リカルドが何かつぶやいたがそれは俺は聞くことが出来なかった。
その後からは街のどうでも良い話などを先輩面して話す大人の姿や自慢話などをしているのを眺めながら、歩いて行ったのであった。
やっとのことで街へと辿り着いた俺たちはまず門番に無事倒したことを伝えて、ギルドに向かった。門番は街の兵士で冒険者ギルドとは関係のないことなのだが、街の安全のためなのでこうした連絡は必須のことなのである。
門番の方も連絡を受けていたようでとても感謝をしていた。
ギルドの中へと入ると、依頼を終わらせた冒険者たちが大勢いて受付までものすごい距離の列が出来ていた。これは時間が掛かるなと思っていたのだが、そんな思いとは余所に関係なく奥の方へと進んで行った。俺もそれに置いて行かれないようにわけがわからないまま付いて行った。
そして受付の近くまで来ると、
「待っていましたよ! みなさん無事で何よりです。ギルドマスターがお待ちですのでそのまま上がって下さい」
「わかった」
受付にいた人にそう言われて、上へと上がって行った。この人数ギルドマスターの部屋に入るとは思えないのだが、大丈夫なのであろうか。
三階まで上がって行きギルドマスターの部屋の扉をノックする。「どうぞ」と言う声が聞こえると、扉を開いて中へと入って行く。
「こんなに多いのですね。流石に場所を変えましょうか」
こんなに多くの人が来るとは思っていなかったのか、少し驚いた様子でギルドマスターがそう言って来たのであった。
移動した場所は同じ階の少し大きめの部屋であった。ここであれば全員余裕で入ることは出来るし、椅子もあるみたいだった。そして全員が座り終わると今回のことの報告が始まったのであった。
まずトロールガーディアンの発見から始まり、援軍を呼び、リカルドたちが来て、俺が来た。そして無事に討伐という流れであった。そしてその証拠の解体したトロールガーディアンの一部を見せて、報告することは終わりである。
俺やホルンたちの子ども組は何も話すことなく終わってしまったので、俺たちはこの場には必要なかったと思う。ただ話を聞いているということは退屈で早く終わらないかなと思ってしまうほどであった。
なぜあんなところにトロールガーディアンが居たのかという子も気になるところだが、それは追々調査するようだ。どこからやって来たのかというのを知っておけば今後の対応も変わってくる。
まぁそんなことはギルドのお偉いさんやそれらの調査を仕事にしている人たちに任せておけばいい。俺は何も気にせずに何か起こればそれに対処するということで良いと思う。というかほとんどの冒険者がそうだと思う。
というわけでギルドマスターとの話は終わったので、トロールガーディアンを売ってその報酬の山分けをすることになった。あの場では全員が役に立っていたので、もらった分を人数分にそれぞれ等分すればいいだけの話である。
そのことについてホルンたちが何やら言っていたが、大人たちによってその言い分は却下されて、最初に言ったその配り方になったのであった。
目立っていなくてもやったことには変わりはない。ルミエは支援魔法で役に立ったし、カーシャも魔法を使って攻撃をしていた。ホルンはトロールガーディアンには何もしていなかったが、周りを見て他の魔物が来ないかなどを見てくれていた。
そうしたことによって、大人たちが戦いに集中することが出来たので、きちんと貢献したと言えるであろう。冒険者の中には戦っていないのだから報酬を少なく渡す奴もいるが、うちのクランの人はそんなことをするはずもなく、ちゃんと評価してくれる人たちなのである。
多くのお金をもらいみんな帰って行くこととなったのであった。といっても半分以上のメンバーが同じ家へと帰って行くのではあるが。
「あっ! 忘れてた!」
「どうした?」
帰っている最中、ギルが突然大きな声を出した。リカルドもわからないようで首を傾げていると、
「あ、そう言えば、今日の買い物当番は俺たちでしたね」
クリムがそんなことを言って来た。
「何のんきに言ってんだよ。大丈夫なのか? もしかしたらまだ買い物に行けてないという可能性だってあるんだぞ?」
「今から急いでも変わることはないですし、もしそうであれば何か外で買ってくればいいのですよ」
まぁ確かにクリムの言う通りだな。今回はしょうがないだろう。
とにかく帰ってみないことにはわからない。それでもみんなの進む速さは変わらず、どうにでもなると思っているのだろう。だから余裕を持って帰ることが出来るのだ。
屋敷へと帰るといつものようにユアが出迎えてくれた。ユアには不思議と俺が帰ってくるというのがわかるというのだが、どういう原理なのかわからず終いには、愛の力だろうということになってしまった。まぁ否定も出来ないので何とも言えないが。
そして屋敷の中からは美味しそうな匂いが漂って来ている。それに対して帰って来たみんながわからず、首を傾げていたがすぐにマリーが姿を見せた。
「みなさんお帰りなさい。ご飯は出来ていますので、食堂に早く来てくださいね」
それだけ言うと、また食堂の方へと戻って行ってしまった。
俺以外のみんなはいつも通り部屋に戻り着替えてから食堂へと来た。そこにはすでに食べ物が並べてあり、いつでも食べることが出来るような状態になっていた。
「食材はなかったと思うんだが……」
「ふふふ、はい、なかったので買って来たのですよ」
俺たちが驚いている姿が面白いのか、少し笑いながら当たり前のことのようにそう返してきた。
「女性たちだけで?」
「はい、三人ほどで行ってきました。みなさんが頑張っているのですもの、私たちも頑張らないといけないと思いまして、何とか行くことが出来ました」
「すごいじゃないか!!」
本当にすごいことだ。女性たちだけで今まで男がいるような場所は行くことは出来ていなかった。それは彼女たちの境遇を知れば当たり前のことだと思う。しかし今日それを完全とは言えないかもしれないが、克服することが出来たのであればそれはすごいことに間違いない。
それは他の男たちも同じ気持ちのようでその後は、食事をしながらになるが祝うことになったのであった。
「最近は良いことばかりだからな。この野良の住処も良い感じになって来たんじゃないか?」
その言葉にみんな頷き、笑い合ってみんなそれぞれに対して礼を言い合ったのであった。
子どもたちも最近は色んなことを学んで覚えたりしているということで、そのことも向上心というか、未来のことも見えてきたということなので良いことだと思う。子どもたちにはなるべくやりたいことを出来るようにして欲しいからね。
その後も話し合ったりして盛り上がり、賑やかな夜となったのであった。




