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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
78/126

78話

 ダンジョンを攻略した俺は外へと向かって歩いていた。最奥には出口に一気に出られるようなものがなかったので、歩いて戻らなければならない。


 これでは他のダンジョンではいくらボスがいないとは言え、せっかく攻略しても帰り道で力尽きちゃうということも十分に考えられることのような気がする。


 それは大きなダンジョンであるほどその可能性は大きくなると思うし、最後のボスを倒すのにも全てを使って勝つということが出来ず、帰りのことを考えて戦わないといけないということは厳しいというか、面倒というか。


 他の人からしてみれば、ダンジョンというのは面倒なものなのかもしれないな。だからこそこのダンジョンも攻略されずに残っていたのかもしれない。


 中の魔物は外に出て来ることはないし、倒しても魔石しか残すことはない。ボスに勝っても報酬を貰えるのは最初の人だけ。全て出し切って攻略しても帰り道のことも考えないといけない。


 そうした理由があるからこそダンジョンに積極的に入るという人は少ないのかもしれない。そして聞いた話ではあるが、階層の数が少ないダンジョンは完全に攻略されているところもあるが、階層が多くなるにつれて攻略されているダンジョンの数は少ないということも、往復のことを考えて攻略するのは無理という判断がされているという可能性もあるな。


 リカルドも積極的にダンジョンに入る人ではなかったようだし、こうした情報は聞いていなかったのでわからなかったが、まぁ納得できる理由であろう。


 なのでこのアルンのダンジョンが極端にダンジョンへと行く人が少ないのも、そうした理由も重なっているか良ということも考えられるな。そして完全に俺が攻略してしまった今、このダンジョンの価値は一気に下がり余計に誰も来なくなるという状態になってしまった。


 入る理由があるとしたら、俺からの情報を聞いて最奥まで辿り着き力を与えられるということだけだな。まぁその力も俺ほどは与えられることはないのだろうけど。


 でも今までは全く情報がなかったのだから、前よりは攻略しやすくなるだろう。実際に行く人がいるかどうかはまた別の問題だとは思うけどね。


 さてと、ダンジョンの外に出ると空は明るくとても良い天気だった。地面が少し濡れているので俺がダンジョンに入ってから雨でも降ったのであろう。しかしそこまでの強さではなかったのか、水たまりなどは出来ていないので歩きにくいということはなさそうだ。


 そして時間帯は朝であろうか。太陽の位置がそこら辺だからおそらくはそうだと思う。もちろんダンジョンに馬車が来ることはないので、歩いて街に戻らないといけない。面倒だが少しゆっくりとしたいので散歩がてら歩くという気持ちにもなれば少しはましだろう。


 そうして街まで歩き、街に入った後はギルドへと向かって行った。報告しないといけないのでギルドに行くのは必須である。その後のことを考えると歩く速度は自然と遅くなってしまうが、行かないわけにはいかない。


 冒険者ギルドに入ると、人の数は多くなくすでにみんな依頼を受けて出て行った後のようだ。とりあえず人の数が少ないという点は良かったことだろう。そして受付のアーシャがいるところまで行った。


「あれ? レヴィさんお帰りなさい。お早い帰りだったのですね。まだ丸一日くらいしか経っていませんよ」


 丸一日ということは一応夜は二回ほど明けているということか。その辺の時間感覚はよくわかっていなかったのでありがたい。


「そうだったんですね。でも一応ダンジョンは攻略出来ましたので帰って来ました」


「なるほど。どこまで攻略されてきたんですか? まさか、最奥まで攻略されてきたわけではないでしょう?」


 アーシャは笑いながら言ってきた。それに対して俺も笑顔で答えた。


「はい、一番奥、最後まで攻略して来ました」


「へ? 最後まで?」


「はい」


 アーシャはわけがわからないという顔からだんだんと理解できるようになったのか。驚いているような顔に変わり、周りを見渡すと小さな声で、


「ギルドマスターに伝えてきますので少し待っていただいていいですか?」


 と言って来たので、俺もそうなることは予想していたので素直に頷いたのであった。


「わかりました。待ってますね」


 俺は近くに椅子に座り待っていることにした。


 すぐにアーシャは戻って来て、ギルドマスターの部屋へと案内するということになった。久しぶりにギルドの上の階へと上がって行くので少し懐かしさを感じながらも、アーシャの後を付いて行った。


 促されるまま部屋の中に入るとすでにソファに座っているギルドマスターの姿があった。


「どうぞ、座って下さい」


 その言葉に従い座ると、すぐに飲み物を持って来てくれて目の前に置いてくれた。お礼を言うと、一礼して部屋を出て行ってしまった。


 この部屋には俺とギルドマスター、そしてアーシャの三人となった。アーシャは座らずに立ったまま話をすることとなった。少し俺としては気まずい感じになってしまうのだが、示しというかそういったものがあるのであろうから何も言うことは出来ない。


「話は聞きましたが、あのダンジョンを完全に攻略されたようで。本当ですか?」


「はい。えーっと、魔石とかでも見せましょうか?」


「そうですね。すみませんが見せていただいてもよろしいでしょうか。後宝箱にあったものを一つ何か見せていただきたい」


「わかりました」


 俺は指輪の中から魔石と手に入れたものを出した。宝箱に入っていたものは正確にどんなものが入っていたか見ていなかったが、どれが入っていたかということはわかるので適当に出すことにする。


「確かにこれほどの魔石はここら辺では取ることは出来ませんね。それにこれは素晴らしいもののようだ」


 俺が出したものは一振りの片手剣だった。今回も入っていたので比較的宝箱から出て来ることが多いものなのかもしれない。確かにその剣はすごそうに見えるものだが、そこまですごいものなのであろうか。俺が不思議そうにしているのがわかったのか説明をしてくれた。


「この剣はまず素材からすごいものですよ。ミスリルと黒曜鉄の合金で出来ていますので魔力を込めやすいですし耐久性もあります。それに込められている効果も切れ味や耐久力を上げるものはもちろんのこと、魔力を込めるほど攻撃力を上げるというものまであるのでとても良い武器ですよ」


「そうなんですね。まぁリカルドにでも上げることにしますよ」


「む、確かに自分で使うことがなければそれもありですが、売れば多くのお金が手に入りますよ?」


「特にお金に困っているというわけではありませんし、リカルドに上げれば喜んでくれると思いますし」


「レヴィさんがそれで良いのでしたら良いのですが。とにかくダンジョン攻略の確認はこれでお終いです。そして結果ダンジョンを攻略できたということで間違いないと判断しました」


「はい」


「他のギルドにもこのことは伝えますが、ランクアップはまだできないでしょうね。本当であれば一人で攻略したとなれば上がるものですが、信じられないという答えが返ってくると思いますし」


「大丈夫ですよ。目標にしてたランクCになることは出来ていますし、これ以上はゆっくりでもいいですから」


「わかりました。ですが一応は打診してみますね」


「はい」


 そうして報告は終えて、ダンジョン内の情報はまた今度ということになった。ダンジョンに行く人はほとんどいないのでゆっくりで構わないそうだ。簡単にはどんな魔物が居たのかということを言っておいたのでその情報があれば他のギルドの人に伝えるのは十分ということだった。


 ギルドでやることは終わったので、屋敷へと帰ることにした。この時間帯は他の冒険者が少なかったのと、話をしたのがギルドマスターの部屋ということもあって前みたいな攻略を祝って騒ぐということが起きなくて良かったと思いほっとするのであった。


 俺が攻略したということも発表すると言っていたので、次冒険者ギルドに来たときは大変そうだと思い、今は考えないように帰路に着くのであった。



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