74話
休日にしようと決めた日、俺は早速街へと出歩いていた。
クランのみんなからは一人で大丈夫かという言葉も言われたが、他の人もやることはあるので一緒に行くのも迷惑だと思ったので一人で行くことにしたのだ。
いくら大丈夫だと言っても大通りを歩くようにとか、男には簡単に近づいてはいけないとか、散々出かける前に言われてしまった。
別に知らないところに行くわけではないので迷うようなことはないだろう。
今日の予定はアクセサリーを何か買って、それに何かしらの良さそうな効果を付与してもらうことだな。今回はお金もそれなりに持っているので、全部使う勢いで良い装備を手に入れることが出来たら良いなと思っている。
一応指輪にしようと思っているが実際に見てみて他に良いものがあれば変えようと思おう。指輪は邪魔になりそうだと思っていたのだが、この異空間収納が出来る指輪を手に入れてこれを手放すことは出来ない。それならば一つも二つも同じことだろうというふうに思ったのだ。
それによく考えたら戦闘でも剣を振るうのにも形を自由に変えることが出来るし、普通に生活をするにしても余り何かをするということはないので、そこまで邪魔にならないのではと考え付いたということも理由の一つだろう。
まぁそれでも邪魔だと思うのであれば、異空間収納が出来る指輪に入れておけばいいのだから持っておいて損はない。
そしてまず辿り着いたのは装飾品を売っているお店だ。中に入ってどんなものがいいのかなと思って色々見てみるがよくわからない。値段が高ければいいのか、それとも他に見るものがあるのか。前回はリカルドに任せっぱなしだったのでさっぱりわからない。
わからないものを永遠と悩んでも仕方がないので、自分で考えるのは諦めてお店の人に聞くことにした。
「指輪で後で魔法関係の効果を付与したいと思うのですが、どんなものが良いのでしょうか?」
普段であれば絶対にこんなことはしないのだが、これも戦力強化には必要なこと。頑張って声を掛けたのだ。
店員さんは優しくどんなものがいいとか、さらに詳しく聞いてくれたので俺も話しやすく、結果納得のいく良いものを手に入れることが出来た。
ミスリルという金属の指輪で、小ぶりだが青い宝石がはまっているものだ。ミスリルは想像通りのもので、魔力の通りが良く効果を付与するには最適なものらしい。そして青い宝石も良いもののようで、純度が高く高い効果を付与できるであろうということだった。
もちろんその分値段は高くなるが、何とか予算内で買うことが出来たので良かった。まぁもっと良いものもあるらしいが今の俺には買うことは出来ないような値段らしい。
いつか買いに来たいと思いつつ、とりあえずはここでの用事は終わったので次へと行きたいと思う。次は付与してくれるところである。
そしてお店へと着いたのはいいのだが、前回のことがあるそのことで少し身構えていたのだが、全くの無意味であった。
お店へ入り指輪を出すとすぐにどんな効果を付与できるのかを確かめてくれて、一覧が乗っている紙を見せてくれた。悩んだ末に一つ決めるとこれまたすぐに指輪に効果を付与してくれて、お金を払って終わってしまった。
俺の顔は覚えてくれていたのだろう。そんな感じの動き方であった。これはリカルドのおかげで俺もスムーズにやってくれているのか、もともとそういう人なのかわからないが、まぁこれはこれでありだと思うのであった。
肝心の効果はと言うと、水属性攻撃上昇にしてしまった。単純に俺に必要となる効果は少ないし、一番効果が出ると思ったのがこれだったのだ。効果自体はブレスレットよりも高い効果が付与されていて、流石あの値段と言った感じであろうか。
これでまた一つ俺の火力が上がったということで、ゴーレムを倒すのが簡単になったと思う。その分弱い魔物に対してや人に対しては手加減が必要になるのでそっちの方が大変になってしまうのではないかと思うのであった。
自分が思っている以上に高い威力が出てしまうということを気を付けないといけない場面も出て来ると思うので、そういった練習も必要なのかもしれない。
攻撃力を上げることばかり考えていたがこれからはそっちの面のことも考えていこうと思ったのであった。
まぁとりあえずは買い物は終わったので、屋敷へと帰ることにする。お昼の時間となっているが今日は食べなくていいだろう。外で食べて来ると言ってあるし、食べるのにもお金が掛かるので今日くらいは節約として食べないことにする。本来食べなくても問題ない身体だしね。
屋敷へと戻ったら色々とダンジョンのことを整理しないといけないから、それを頑張ることにしようか。地図のことやゴーレムの強さなどリカルドたちにも情報共有しておいた方が良いと思うし、そうなるとまとめておいた方が良いのでそういったことに今日の午後は費やそうと思う。
やらないといけないことを頭に浮かべながら俺は屋敷へと帰って行くのであった。
帰った後は部屋に籠って地図を見やすいようにするために描き直していったのであった。ダンジョンを進みながら地図を描くというのは難しいもので、いくら魔物が近くにいないということがわかっていても、すぐに描き終えたいと思うのが当然のことだと思う。
そのため素早く描くとなるとその分雑になってしまう。自分でもわからなく描くのは流石に意味がないことはわかっているのであるが、逆に言うと自分さえわかれば良いというような地図が出来上がるのである。
それは他の人が見たらものすごく見にくくなっているのは当たり前のことだし、正直見返しても自分でも見にくくわかりづらいようなものになってしまっている。
なので自分のためにも他の人のためにもきちんとしたものに描き直さないといけないのである。
こういったことをこれからもしないといけないと考えると少しだけげんなりとするが、これもまた冒険者としての面白さだと考えるとまだやる気になれたのだった。まぁそれでも他の人に任せられたらどんなにいいかと思ってしまうのだが。
その後も頑張ってやっていたのだが、外から子どもたちの声が聞こえて来ると俺も嫌になってしまい、外に出て一緒に遊ぶことにした。まぁ急いで終わらせなくても大丈夫だろう。
久しぶりに一緒に遊ぶのが嬉しいのか、ユアはもちろんのこと他の子どもたちも嬉しそうにしてくれた。そして毎回恒例のシャボン玉を作り競いながらも割るという遊びをしたのであった。
これも毎回のことだが、ユアがその高い身体能力を生かして次々と割っていく中、他の子どもたちがそれに対抗しようと協力して割っていくという姿が見られるのだ。そんな微笑ましい動きを見ている俺だがついつい悪戯心というものが出てしまい、子どもたちに割らせないようにシャボン玉を動かして中々割らせないようにしたのだった。
そして少しやっているとユアが俺の方へと近付いて来た。
「もういいの?」
「うん、いいの」
そう言って俺の隣へと座った。しかもその座った位置は俺にくっ付くような距離である。いつも通りと言えばいつも通りなのだが、今日はいつにも増してくっ付いているようなそんな感じがするのだ。
それ以降は話すことはなく、ただ静かに子どもたちがはしゃいでいる姿を見ながらその場に座っていた。お互い話すことはなかったが、不思議と嫌な雰囲気になることはなく居心地の良い雰囲気であった。
そんな二人の良い空気は冒険者組が屋敷へと帰って来るまでずっと二人で楽しんだのであった。
それからはいつも通りである。そんな感じで今日という日は過ぎていき、また新しい日がやってくるのであった。




