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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
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7話

 扉を吹き飛ばしたことで視界が悪くなってしまったが、俺たちが前を見えなくなるが同時に相手の方もこれでこっちのことが見えなくなるので、結果として良かった。


 俺には目を使わなくとも周りの様子が関係なくわかるからな。


 そのまま俺は走り出し、後ろから付いてきていることを確認しながら、前の方へと意識を向けた。


 扉の近くと少し離れたところにそれぞれ一人ずついたようだったが、まとめて吹っ飛ばしてしまったようだ。


 扉の近くにいた奴は当然無事ではなく、少し離れていたところに居た奴も何かにぶつかったのかうずくまっていた。


 目で見て確認することは出来ないが俺は見なくても知覚出来るので、見えなくても関係なく対処ができる。


 しかし後ろに付いて来ている女性たちは周りがどういった様子なのかということがわからないと思うので、俺は走りやすいように邪魔な扉の破片や、倒れている人を端に寄せながら走っていった。


 進んでいると視界もすぐに良くなり、後はただひたすらに邪魔してくる人たちを倒しながら進んで行くだけだ。


 途中曲がり角に潜んでいるのがわかった俺はそこへ近づく前に扉と同じように水を当てて、吹き飛ばしたりもした。


 出口の方へと進んで行くと扉が見えてきた。この扉が外に出るための手前の部屋へと繋がっている扉だ。


 そして再び扉を思いっきり吹き飛ばしながらも次の部屋へと入って行った。


 そこの部屋には剣だけではなく防具なども付けて完全武装と言った感じの男たちが何人もいた。


 俺たちの脱出を阻止するために装備しているのかとも思ったのだが、どうやら違うらしい。


 ほとんどの男が外の方へと武器を向けて、警戒している様子が見て取れた。


 もちろん俺たちに気付いて、驚いている人もいるみたいだが、扉に比較的近くにいた数人だけだった。


「何がどうなってやがんだ!」


 この建物の中に入るときに見た偉い感じの厳ついおっさんもいて、こっちの方を少し見ているのがわかり、この状況に驚いている様子だった。


 何かしら外で起きていることはわかったが、それが俺たちにとって良いことなのか悪いことなのかがわからなかった俺は一瞬止まりそうになるが、ここは一か八かで突っ込んでみることにする。


 この場で止まるのは良くないと思ったからだ。


 俺も地下にいるときは外までは知覚範囲が届かず、どんな状況かがわからなかった。


 そして今も、通ってきた通路からまた別の人が来ないかとか、この部屋にいる人らがどんな行動するのか、というようなことに気を配っていて、外の状況を確認している余裕がない。


 まぁただ突っ込むだけでは芸がないので、ここは一工夫するつもりではあるが。


 俺は左側にいる角の人の腕を掴んで、後ろを少しだけ振り返って指示を出した。


「全員、前の人に捕まって!」


 そう言って俺の方も準備を始める。


 すぐに俺の腕を掴む一つの手を確認したところで、後ろの方も大丈夫だと信じて準備が出来ていたものを発動した。


 俺が出したのは俺を中心にこの部屋の中全体に霧を発生させたのであった。


 目の前の状況もわからないほどの濃い霧を出したので、俺にしか周りの状況がわからないような空間が出来上がった。


 これで外へ出る準備は出来た。


 男たちは周りが急に見えなくなったことで、戸惑う声やそれを静める声を出して、混乱しているようだった。


 上手くいったようなので、後は外に向かいながら進行方向にいる邪魔な人たちを蹴散らしながら外に出るだけだ。


 やっとの思いで出口へと辿り着き、建物の外に出るとそこに待っていたのは、建物を囲うように武器を構えている大勢の人たちであった。


 えーっと、これはどうしたらいいんだ?


 その人たちの格好は建物内にいた奴らとは違う感じでもっと強そうな格好をしているが、俺たちの邪魔をするのであれば関係なく吹き飛ばしておけばいいのだろうけど。


 男たちもなぜか、驚いたり、戸惑うような表情をして、それでも武器を下すことはなく武器を構えている。


 考えても仕方ないな、とりあえず、吹き飛ばしてしまえばいいか。


 後のことは後に考えればいいのだから。そう決めた俺は右手を前に突き出した。


「ちょっと待て、こいつらは大丈夫だ」


 すると、突然横から驚いたような声を出しながらも、角の人が俺の右腕を掴みながら攻撃するのを止めた。


「なんで?」


 俺には判断できなかったので、とりあえず手を下に下げることなく聞いてみることにした。


「こいつらは見たことがある。冒険者ギルドのやつらだ、奴隷商とは関係ないからもう大丈夫だ。俺たちの味方だよ」


 へー、冒険者ギルドがあるのか、ますます良くある異世界物と同じだな。


 まぁ角の人のことは信じているし、この人が大丈夫と言うのであれば大丈夫なのであろうな。


「わかった。角の人を信じるよ」


「角の人って、まぁいいや。おーい、俺だ、リカルドだ。捕まっていた子どもたちと脱出して来た、助けてくれ」


 角の人はリカルドって言うんだな。リカルドは俺よりも前に出て、手を上げながら冒険者に向けて声を掛けた。


 掴んでいた手はこの建物を出るときに離していたが、俺の腕を掴む手は離すことなく強く掴んだままだった。


 その手は俺のすぐ後ろにいた子どものものだった。俺はその手を腕から離して、手を繋ぐ形に変えた。


 そうしたら、手を繋いだことが良かったのか少し微笑んで見せた。うんうん、子どもは笑っている方がいいよな。


 後ろの方にも追ってくる人らが来ないかと注意をしていたのだが、外に出てくる気配はなく、とりあえずは危険は去ったのかな。


 いやー、良かった良かった。全員無事に外に出て来ることが出来て良かった。


 冒険者との会話はリカルドに任せてしまっていいだろう。俺が話すよりもいいと思うし、俺も話すのめんどいし。


 確認が取れたのか、少し会話してからこちらの方へと戻って来た。


「嬢ちゃん、移動するぞ。とりあえず、冒険者ギルドに行ってからで、細かい話は後にする予定だ。それでいいか?」


「うん、いいよ。それじゃ、みんなも行こっか」


 歩いてすぐのところに馬車が止められていて、それに乗って冒険者ギルドへと行けるようであった。


「それじゃあ、乗ってくれ」


 冒険者の一人がそう言うと、最後尾にいた男四人が手伝いながらも女性たちや子どもたちを乗せていった。


 女性たちは一緒に地下から出てきた男ならばまだ大丈夫らしかった。


 そして女性や子どもたちが全員乗って、俺たちの順番が来たところで俺が進もうとすると手を繋いでいた子どもから少しの抵抗があった。


 そう言えば、まだ子どもは全員じゃなかったな。


 手が震えているようでなぜだろうと思い、子どもの方を見ると馬車の方をじっと見ていた。


 少し考えて思い当たったことがあったので、確かめてみることにする。


「もしかして、馬車が怖い?」


 すると、その子どもは目を見開いてこちらを見ると、すぐにうつむき、小さく頷いて見せた。


「そっか、じゃあしょうがないな。この子と一緒に歩いて行くから、先に行ってていいよ。あ、出来るなら冒険者ギルドまでの道を教えてもらってからでもいいかな」


「ちょっと待っていてくれ」


 リカルドに言うと、今のことを見ていたのか。すぐに馬車の方へと近づいて行き、何か話すとすぐにこっちに戻って来た。


「俺ともう一人、冒険者が一緒に歩いて行くから少し待ってくれ」


「何か、悪いね」


「いや、気にしなくていいさ。嬢ちゃんのおかげで俺ももしかしたら戦闘奴隷をやめることが出来るかもしれないんだ。感謝してもしきれないぜ」


「そう? それならいいんだけど」


 少しして馬車が動き出して、すぐに街の中へと行ってしまった。


 それから少し経って、一人の女性がこちらの方へと近づいてきた。


「リカルド。久しぶりね」


「おう、アル。遅いじゃないか」


 どうやら二人は知り合いのようで、しかも仲良さげな感じだった。


「嬢ちゃん、紹介するな。こいつはアルターナだ」


「よろしくね。適当にこいつが呼んでいるみたいにアルでいいわよ」


 アルターナは綺麗な金髪で瞳は緑色をしていて、とても綺麗な女性だった。そして耳が尖っていた。もしかしたら、エルフというやつなのではない?


 腰にはレイピアというやつだろうか、これまた綺麗なものだった。アルターナにとても似合っているもののように見えた。


 それにしても、この一日だけで色んな種族を見ているな。


「はい、よろしくお願いします。アルさんが一緒に歩いてくれるということでいいんですか?」


「ええ、そうよ。流石に子どもと奴隷だけで歩かせるわけにはいかないからね」


「ああ、なるほど」


 確かにリカルドも大人の男性と言ってもまだ首輪も付いているし、俺も見た目は子どもだからな。この三人だけで歩かせるわけにもいかないか。


「そっちの子は歩けるかな? 私が抱っこしてもいいんだけど」


 アルターナがそう言うと、横にいた子ども俺の手を強く握って後ろに隠れてしまった。


「ふふ、私じゃダメみたいね。ゆっくり行きましょうか」


 それからアルターナとリカルド、俺と子どもというように並んで街の中を歩いて行った。


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