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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
55/126

55話

 何とか最初のガノンボアからの突進を紙一重で避けたのであったのだが、いや少し当たったってしまったか。吹き飛ばされて怪我無く乗り越えたのは良かった。


 とにかく無事に一回目の突進を回避できたのだが、問題はその次の突進だ。


 俺たちを吹き飛ばして行ったガノンボアはすぐに止まることは出来ずに少し行ったところで方向を変えてその後狙いを付けたのは、意識を失っている状態のルミエと俺の方だった。


 この場合俺が移動すれば狙う方向が変わる可能性もあるにはあるが、ルミエが狙われていた場合だとルミエのことを守ることが出来なくなってしまう。


 ガノンボアは一度狙いを定めた相手を変えることはしないのだ。まさに猪突猛進という言葉がぴったりである。


 そのため俺はここから離れるわけにはいかないし、突進してくるガノンボアをどうにか止めるか、向きを変えるかしないといけない。


「予定とは違うがやるしかないか」


 近くまで来たリカルドも覚悟を決めたようだ。こういう時の判断は流石ランクが高い冒険者だと思う。


 他の二人とはというと、ホルンはすぐにルミエに寄り添って行ったのでそのままルミエのことを見ている。あの様子だと戦闘に参加させるのは無理だろう。まぁ誰か一人ルミエのことを部屋の外まで運ぶことを考えるとホルンに任せるということでいいだろう。


 そしてカーシャはガノンボア向かって剣を構えてはいるが、ルミエの様子が気になっているようだし、ちゃんと戦えるかが心配である。


「リカルド、私がどうにかして動きを止めるから後ろ足の方はよろしくね」


「無茶なことだとは思うが、それしかないか。わかった、任せておけ」


 カーシャには何も言わなくてもいいか。どうせやることなんてないし。そもそも話している余裕なんてないのだ。勝手なことをしないことを願うだけだ。


 今にも突進して来そうなガノンボアを見ながらもどうすればいいか必死に頭を働かせる。今まで夜のみんなが寝ている時間に考えた戦い方も参考にし、今出来る最良の方法がないか考える。


 ガノンボアをまた脚に力を入れたのがわかった。動きを見逃さないようにしているので、わかりやすい動きはわかる。細かい動きは今後練習が必要だな。


「突進来るぞ!」


 リカルドが叫び、みんな構えるのがわかった。ホルンはルミエを抱えて動けるようにしているし、カーシャも剣を構えて向かい撃つような態勢を取っている。


 そんな中俺は大量の水を生み出してガノンボアに向かって飛ばしていく。ガノンボアに当てるというよりかは地面に広げていくという感じである。


 そしてちょうど水がガノンボアに到達すると同時に地面を蹴って突進して来た。


 俺は生み出した水をガノンボアの足の方からだんだんと凍らせていく。


 俺は今まで水を気体にしていくことだけを考えて来た。霧を発生させたり水蒸気での探知をして来た。なので逆の固体化も出来るのではないかと思ったのだ。


 流石にぶっつけ本番では出来なかったのでこっそりベッドの中で練習していたのだ。


 水を出しながらもどんどん凍らせていく。


 その間もガノンボアも突進して来ている。脚のところから凍らせていって、近づくにつれてガノンボアに当たる水の量も増えていくのでそれを利用して足から胴体へと凍らせていく部分を広げていく。


 威圧感はすごいが俺は怖くないということもあって、そのまま続けていく。


最初は勢いは止まらずそのまま進んでいたのだが、進んで行くうちに勢いがなくなっていき最後には止めることが出来た。


 凍らせていっても進む勢いが止まらず、凍らせても氷を削りながら進んで来る姿を見ている時はどうしようかと思ったのだが、それも半分まで進んできたころには少しずつであったがその勢いがなくなって来たのがわかったので、安心することが出来た。


 しかしその止まった距離は本当に目の前のところだった。手を伸ばしても流石に届きはしないが、少し歩けば到着してしまう距離である。


 身体の半分は氷に阻まれていて動くことが出来ないようだった。


「ふー、上手くいったー」


 実際止まるかどうかわからなかったのだが本当に止まってくれてよかった。


「リカルド、後はよろしくね」


「ああ、わかった」


 俺のやったことに驚いている様子だったリカルドは俺の言葉によって戻って来た。ガノンボアの後ろに回っていった。


 カーシャもすごく驚いている様子で未だに固まっている。どうやらホルンも同じ様子だった。そんなんじゃ俺が失敗していたら動けずに二人とも吹き飛ばされていたに違いないな。


 まぁとにかく上手くいって良かったよ。


 安心して再び息を吐こうとした時、氷からピキッという音が聞こえてきた。


 まさかとは思うが、ガノンボアと氷をじっくり見ると、少しずつだが音を立てながらも氷にひびが入っているのがわかった。


「リカルド! 早く! 氷が割れる!」


 俺は再び水を出して周りをさらに氷で囲おうとした瞬間、目の前の氷がはじけ飛んだ。


「二人とも早くルミエを担いで部屋から出ろ!」


 俺は後ろにいた二人に対して、そう言うと氷の中から出てきたガノンボアに向き直った。


 俺の声が届いたのか、ホルンとカーシャはルミエを担いで急いでその場から離れていった。


 ガノンボアの後ろにいるリカルドの様子はわからないが、またこいつの動きを止めないといけないみたいだな。


 完全に油断してたな。一回動きを止めることが出来たのだから大丈夫だと思っていた。後ろ脚の力は相当強かったみたいだ。


「ブオォォォォォォ!!!!」


 ガノンボアが怒った様子でとても大きい鳴き声を出し、威圧感はさっきよりもひどくなっていた。そしてその大きな鳴き声が第二戦の開始の合図となった。


 一番近くにいた俺に向かって、ガノンボアは自分の牙を突き出してきた。その太さは俺の身体よりも太く刺さったら一溜まりもないような、そんな凶暴性があった。


 俺は当たらないように横に避けると、ガノンボアも付いて来るように頭を横に振って牙を俺に向けてきた。脚の魔力を高めておいて良かったと思う。高めてなかったらこの攻撃を避けることが出来たかどうかわからないというほど、ガノンボアの攻撃は速かった。


 全く見た目は大きくて突進して来るのだけが面倒だと思っていたのに、予想外だなこれは。


 こっちに突進して来る頃からガノンボアの動きの詳細を知るために、探知の精度を上げていた俺にはそれを躱すことは難しいことでなかった。目を向けずに再び避けるとそれ以上は追ってくることはなく、膠着状態となった。


 俺の目の前にはガノンボアの顔があり、今にもまた突進して来そう。そんな感じである。


 さてと、どうするか。水の弾を当てるだけでは皮膚が分厚そうで攻撃が通るとは思えないし、水の刃でもそれは同じことが言える。傷がついてもそれが内側まで届くことはないだろう。


 氷で突き刺すというのも考えたのだが、氷の状態で生み出すことは出来ず、一回水を出してからそれを凍らせるという段階を踏まないとだめなようだ。これは霧を出す時も同じなのでしょうがない。


 俺は水を操作して、気体や固体に変えることは出来るようだが、気体や固体そのものを生み出すことは出来ないみたいだ。まだまだ自分の身体のことだがわかっていないことが多いので戸惑ってしまうことや高望みしてしまうことが多い。


 これからそういったところもわかっていければいいと思うが、今はそんなことは言っていられないので、何かいい案がないか探す。出来ることと出来ないことをわかっているだけでも戦い方が変わってくるのだ。


 そんなことを考えていたのだが相手がそれを待ってくれるはずもなく、再び牙での攻撃をして来た。こいつは離れていなければこうやって攻撃をしてくるのだな。


 落ち着いて牙による攻撃を避けながらも俺はどうすればいいのかを考えた。さっきと同じように凍らせてもすぐに抜け出してしまうし、今までの攻撃の仕方では通用することなくその厚い皮膚で跳ね返してしまう。


 とにかく動けなかったあの三人という邪魔者もいなくなったことでゆっくりとどう倒すかを考えられるようになったのはいいが、肝心のいい案が浮かんでこない。


 まぁ攻撃を避けながらだからゆっくりと言うのも変なのだが。


 そんなこんなでどう攻撃するか考えながらも、ずっとガノンボアを引き付けていたのだった。


 そう言えばさっきガノンボアの後ろに行ったリカルドはどうしたのだろうか。


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