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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
52/126

52話

 ダンジョンの四階層へと続く階段で一回休憩を取ることにした。まだお昼には早いのでちょっとした休憩だけだ。


 俺はいつものようにマジックバックから水筒を取り出してリカルドへと渡した。


 それを見ていた三人は驚いた様子で俺の持っている鞄を見ていた。


「それってマジックバックか?」


「そうだけど?」


「なんでそんなもん、お前が持ってるんだよ」


「リカルドが持っとけって言われたからだけど」


「それ、リカルドさんのなのか! やっぱりリカルドさんはすごいですね! でもこんな奴に持たせて大丈夫ですか? 何なら俺が持ちますよ」


 ホルンが興奮したように言ってきたので少し驚いてしまったが、確かマジックバックは高価なものだったのでそのことで驚いたのかもしれない。


「レヴィに持たせているのは後衛であまり動き回ることがないからだ。前衛が持っていると邪魔になってしまうだろ。というかそれくらいわかるだろう?」


「それでしたらルミエに持たせましょうよ。そこのチビよりかは安心して持たせることが出来ますよ」


「はぁ、ずっと黙って聞いていたがそろそろレヴィに対してのその態度と言い方を止めろ。流石に不愉快になる。レヴィも黙ってないでないで何か言い返したらどうだ?」


 煩わしいと思っていたのか。それは知らなかったな。どうでも良さげに聞いていたから何も思っていないのかと思っていた。


 ホルンの方は驚いていて何も言えないようである。


「言い返すのも面倒くさいから別に言わせておけばいいかなって思っていたんだけど。私も言われたからって特に思うことはなかったし」


「それではだめだろう。まぁでも目立つ位置にしなかったのは俺もこいつらのことを見たかったということもあったから、今まで黙っていたが」


「それでわかったの?」


「まぁ大体のことはな」


 俺とリカルドが話していると、カーシャが話しかけてきた。ホルンはまだ戻ってきてないようだ。そんなにリカルドに言われたことが衝撃だったのかね。


「あの、リカルドさんにとって彼女はどういった存在なのでしょうか。対等に話している感じもしますし、それだけ大切な存在ということなのでしょうか?」


「大切というか冒険者として対等な立場だとは思っている。そりゃあ俺の方が経験がある分俺が決めることが多いが、実力ではむしろ俺の方が劣っているとさえ思っている」


「そんなことはあり得ません! こんなチビがリカルドさんよりも強いなんて!!」


 やっと復活したのか、ホルンが叫んだ。


「確かにまだレヴィの実力はちゃんとは見せていないからな。そう思うのは当然だと思うが」


「何を言っているんですか!!」


「ホルン! 少し黙ってろ!」


「カーシャ!?」


 ホルンが興奮した様子で話しているとカーシャがそれを止めた。こんなカーシャを見るのは初めてだったので少しだけ驚いてしまった。


「リカルドさん、彼女の実力はそこまですごいのですか?」


「ああ、まぁ得意不得意はあるが魔物を倒すことだけを考えれば、レヴィの方が優れているぞ」


「そんなのですか。しかし実際に見ないことには何とも言えませんね」


 ホルンと比べてカーシャはすごく冷静のようだ。リカルドも俺のことをそんなに持ち上げて何を考えているのんだろう。


 別にリカルドと比べなくても、もっと言い方というものがあっただろうに。案の定ホルンは騒ぐことはなくなったが、ずっと俺のことを睨みつけている。


「あ、あの」


 小さな声であったがみんなに聞こえることでルミエが言いたいことがあるようで、話しかけてきた。


 そのことにホルン以外の全員が視線を向ける。


 視線が集まったことにより、少しビクッとなったが引き続き話し始めた。


「今気づいたのですが、後ろから魔物が来ませんでしたよね」


「あっ!」


 その言葉を言うと、カーシャは何かに気付いたように俺へと視線を向けた。


「たまたま来なかっただけじゃないのか?」


 ホルンはまだ納得したくないのか、しかしさっきとは違い険しい顔をしている。


「んー、どうせ見ていなかったのなら私が何を言っても無駄だと思うから、これまで何をしていたかなんて関係ないでしょ。これまで問題なく進めたんだし、今からこの先に行くんだからその時確認すればいいんじゃない?」


「そうだな。並びは変えずにこのまま進んで行くことにする。俺はまだ手を出さないでお前たちだけでやってみろ」


「わかりました」


 ホルンはまだ険しい顔で、カーシャは悔しそうで、ルミエは心配そうにしている。


 それぞれ思っていることが簡単にわかって笑ってしまいそうになったが、すぐにみんな前を下へと向かった顔を向けたので気づかれることはなかった。


 さて、みんなの意識が少し変わってどのようになるのかはわからないが、まぁ大丈夫だろう。


 俺も四階層までしか行ってなかったので、早く次の階層へと行きたい。俺のやることは変わらず周囲の状況把握と後ろから来る魔物の対処だ。


 後ろを気にしてどんな行動に移すのか気になるところだが、実際に見てみないとわからないことだろうな。くれぐれもリカルドの機嫌を損なうことをしないで欲しいと思う。


 これ以上空気が悪くなるのはごめんだからな。


 休憩を終えた俺たちは荷物をしまって、残りの階段を下っていったのであった。


 四階層では今までよりもさらに後ろから魔物が来て前と後ろで挟まれるということが多くなってくる。そのため必然的に俺の役目も増えて来るということだ。


 これまでは一切後ろのことを気にする様子を見せていなかった三人だったが、さっき言われて気づいたからであろう。ちょくちょく後ろの様子を確認している。


 それで前が疎かになってしまっては意味がなくなるが、そんなことはなく問題なく倒せているようだった。


 四体同時に魔物が来ても問題なく対処することが出来ているので、はっきりしたことは俺も行ってことがないので言えないがボスの手前までであれば問題なく行けるのではないかと思う。


 そうなれば今日の内にボスに挑戦してあわよくば倒すということが出来るかもしれない。ここまでリカルドも手を出していないことを考えれば余裕で行けるかもしれない。


 もちろん憶測だし、リカルドとも離れているので相談することは出来ないが、もしそうなれば早くダンジョンを進んで行けるということにもなるので、彼らには頑張って欲しいものだ。


 とにかく俺の今の目標はランクを上げることなので、その他のことは後回しだ。


 今までの戦闘で三人のことを見てきたが、カーシャは前衛と後衛のどちらもするので忙しいなと思った。それならば中衛として剣ではなく槍など遠くまで届く武器がいいと思うのだが、武器もその人の適正というものがあるからな。


 そういった意味で剣を使っているのかもしれないな。しかし剣を使っているので中衛というよりかは、前衛二人と言った方がいいのかもしれない。


 ホルンと比べて前に出てはいないし、指示も出すために少し後ろにいることも多いがやはり前衛という印象が強い。


 まぁ俺は戦闘のことに関してはまだまだ素人なので、俺の意見が合っているのかどうか知らないけど。


 この三人の問題を上げるとしたら人数不足ということになるのであろうと思う。タンクや後衛の攻撃担当を入れると今よりももっと楽に魔物を倒すことが出来ると思うのだ。


 そんなことを実際に言ったら文句を言われることは目に見えているし、それで俺が入れとでも言われでもしたら面倒なので黙っていることにする。面倒ごとはごめんなのだ。俺は自由にやっていきたい。


 そんなこんなで今は問題なくダンジョンを進んで行けているのでこの四階層も問題なさそうだ。


 ということで五階層へと向かうことになった。ちなみにダンジョンの地図はずっとリカルドが持っているので、リカルドの匙加減で階段へと向かうのか、別の場所を歩くのか決まってくる。


 昨日行くことが出来なかった五階層なので俺にとっても初めての階層なので、少しわくわくする。と言ってもまだ出て来る魔物の種類は同じだし、少し強くなったりするだけなので特に変わっているところなんてないということだったけれど。


 まぁ初めての場所ということだけでわくわく出来るので特に問題ない。


 俺たちはそのまま五階層へと休むことはせずに進んで行った。


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