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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
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51話

 昨日と比べて俺とリカルドの他に三人ほど増えた状態で、今日はダンジョンへと入って行くことになる。


 馬車の中では得意げに色んなことを話してくれたおかげで、この三人の大体のことはわかった。


 名前はホルン、カーシャ、ルミエだ。うるさい少年がホルンで、冷静な少年がカーシャ、心配そうにしていた少女がルミエである。


 ホルンは前衛でリカルドと同じタイプなので剣を使って前に突っ込んで行くという感じで、カーシャは中衛で剣を持っていて近接戦闘も出来るし魔法も使えるという感じだが、どちらかと言ったら後衛寄りではある。ちなみに指示を出すのはカーシャの役割だそうだ。ルミエは後衛で攻撃というよりかは支援魔法を使うという感じであった。


 バランスがいいのかどうかわからないが、この三人でずっとやって来てランクDになれたということなので今の時点で問題はないのだろう。


 ずっと自慢話のように聞かされていたのでうざかったが、自分たちを売り込んでいると思うと邪魔するのも少しだけ悪く思ってしまう。


 まぁ基本しゃべっていたのはホルンで、それに少しだけカーシャがその話を補うという感じだった。ルミエは終始話すことはなかった。


 リカルドの方も特に返事を返すということはせずに黙って聞いている様子だった。リカルドも話を聞くよりかは自分の目で見たものを信じるタイプなので、ダンジョンで実際に見てみないと何を話しても何も決めることはないと思う。ハードルを上げているだけかもしれない。


 所々で俺のこと馬鹿にするようなことを言っていたが、別に怒るようなことでもなかったし言い返したら面倒になるので俺も黙っていることにした。


 年齢もみんな十六歳ということだったのでそういう歳なのだろなということで済ませられた。絶対に前の世界で同じようなことを言われていたら言い返していたと思うと、この身体になったから冷静に黙って聞けていたのだと思う。


 なんか余裕が持てるというか、一歩引いたところで聞くことが出来るというか。何とも不思議な感覚である。


 そんな感じで三人のことを知りながらダンジョンまでやって来た。


「今回はこの五人でダンジョンを潜ることになる。パーティリーダーは俺がやるが他のやつも意見を言ってもらって構わない。俺がそれを聞いて判断して良いと思ったらそっちを採用するつもりだ。基本的には俺に従ってもらうつもりだがな」


「わかりました!」


 ダンジョンに入る前にリカルドが最後の確認をするために言っているが、元気に返事しているのはホルンだけであった。他は俺も含めて頷くだけだった。


「隊列は、そうだな。俺とホルンが前でその後ろにカーシャとルミエ、最後にレヴィで行く」


「近接戦闘が出来るホルンが最後尾にいなくていいのですか?」


 隊列に疑問を持ったカーシャがリカルドに質問をした。この三人で考えることの担当はカーシャなのだろう。


「レヴィも近接戦闘は出来るし、いざとなれば俺が後ろに回る。ホルンとカーシャで組ませた方がいいからな。レヴィを前に持ってくることも考えたが、それでは一緒に潜る意味がなくなりそうだしな」


「そうですか。わかりました」


「よし、他に質問がなければ行くぞ」


 その言葉を聞いて俺以外の三人は真剣な表情になった。それを見てこの三人は本当に冒険者なんだと感じるのであった。


 さっきこの三人に聞かれないようにリカルドと相談した結果、俺は最後尾で後ろから来る魔物を全て倒してしまっていいということになった。歩きながらでも倒して魔石を回収することは出来るし、問題ないだろうということだった。


 リカルドは前にいるが特に何もすることなく、三人の実力を見ることにしたようだ。俺の探知も知らせる必要はなく、自分のためだけに使えと言われた。


 でもまぁもし非常事態になったら遠慮なく知らせろとも言われた。俺も探知はいつも通り周囲のことをみているので早めの対処ができると思う。問題はどの程度なら知らせるのかを俺がわかっていない点だろうか。


 その辺は適当でいいか。


 そんな感じでダンジョンへと入って行ったのだった。


 今日も初めてダンジョンに入る三人がいることや初めてのパーティメンバーということで、一階層で様子をしばらく見ることになった。


 一階層で様子を見た結果、ランクDの冒険者ということもあって、問題なく魔物を倒せていた。思っていた通り、ホルンが魔物に突っ込んで行ってカーシャがホルンのサポートをする。ルミエは支援魔法でホルンの素早さと攻撃力を上げていた。


 支援魔法をというのを初めて見た。


 ルミエが魔法を発動すると、光が飛んでいき、その光が当たると身体が少しだけ光って支援魔法が掛かっていることが見ただけでわかるようになる。光も弱いので近くで見ても問題ない感じである。


 ただ隠れないといけない時や気づかれないように近づく時なんかは使えないと思った。夜や暗い場所では特にそう思う。光は弱いが光っていることには変わりないので、すぐに見つかってしまうだろう。


 良いところもあれば悪いところもある。要は使いどころをきちんと見極めればいいということだな。それは支援魔法だけではなく他のあらゆるものに言えることだけど。


 他にもルミエは回復魔法も使える。というか強化魔法と回復魔法の両方を支援魔法と言うのだ。多少の怪我であれば治すことが出来るのでホルンも怪我を覚悟で前に出るということも出来る。


 しかし毎回そんなことをしていると魔力が足りないのでカーシャがストッパーの役割をして上手く使っているというふうに見えた。


 少し歩き回った後、一階層は特に問題ないと判断されて次の階層へと行くことにした。


 一階層ではリカルドは一切手を出すことはなく、俺もたまに後ろから来た魔物を倒すだけだった。俺が倒していることには誰も気づいた様子はなかったけれど。


 昨日ダンジョンに入っているので魔物の出現頻度はわかっている。そのためリカルドの判断で二階層も最短ルートで進んで行き、三階層へと向かった。


 三階層ではほとんどが二、三体で現れることになるのでここできちんと複数体相手の戦い方を確認しておかないといけない。今まで見た感じでは問題ないように見えたので大丈夫だとは思うけど。


 前から来た三体に向かってまずカーシャが魔法を撃ち、その直後にホルンが突っ込んで行く。その時にはすでにルミエが支援魔法で強化しているので通常よりも強くなっているのだ。


 そうしてホルンが魔物をかく乱させたり少し削ったりしているところでカーシャが一体一体確実に攻撃をして仕留めていく。最後に一体だけになった魔物をホルンが止めを刺すと終わりである。


 一連の行動は安定をしていて長年こうしてやってきたということがとてもわかる動きだ。三人だけではなくせめてもう一人くらい入れた方がいいと思っていたが、この三人であれば変に一人入れるよりはこのままの方が楽なのだろう。


 指示はカーシャが出していてホルンも勝手な行動をすることなくきちんと指示通りに行動している。


 その歳でこれだけ出来るのだから確かに優秀なのだろうな。俺へと当たりが強いのが一名いるというだけで。リカルドの考えていることがまだわかっていないが任せておけばいいと思う。


 そうして問題なく三階層の魔物も対処していった。俺は上の階層よりも魔物が増えてきたこともあって、後ろから来る魔物も増えてきた。しかしやることは変わらず特に何も反応を見せることなく、魔法を撃って倒し魔石を回収するだけである。


 三人は後ろを振り返ることもせずに順調に進んで行った。


 この三人が今足りないところは探知能力であろうか。進むのにも通路の角まで行き魔物がいないか少し顔を出して確認して先へと進んでいる。


 そのせいもあって進む速度はあまり速くはない。いつどこにいるかわからない魔物を警戒するので進みが遅くなることは仕方がないことなのだろう。


 探知能力がなければこうやって進むことは当たり前のことだと思うし、探知能力があったとしても俺のものは特殊なものらしいので俺の考えは当てにすることは出来ない。


 冒険者の普通が俺にはないのだ。


 三人の行動を見て普通の冒険者というのはどういったものなのかを見るということは大事なことだと思うので、しっかりと参考にさせてもらう。


 まぁでも倒す魔物が少なくなっているので暇になっているが探知を怠らずにやっている。もし眠気などがあったのであればあくびを噛み殺しながら行ってるに違いないだろう。


 そんなことを考えながらもダンジョンの三階層は問題ないことがわかり四階層へと進んで行く。そんな真剣な様子の三人を見ながらも俺も大人しく付いて行くのだった。



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