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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
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5話

 ずっと森の中を進んでいたが、道を見つけて右側の方へと進んでいるのだが、まぁ予想はしていけどすぐには街に着くことはなかった。


 そればかりか、景色もずっと森と森の間をひたすら歩いているだけで代わり映えのない道で退屈だった。


 人はおろか動物などの生き物も見つけることもなく、やることと言えば、歩くのはもちろんだが水を出して動かしたり、水蒸気による知覚範囲を広げたりすることだけで、結局場所は違えどやっていることは同じだった。


 これぞまさに、ながら歩きってやつだな。周りには人はいないし、前もきちんと向いて歩いているので危険はないわけだが。


 森の中に入って何か面白そうなものがないか探すのにも、せっかく見つけた道から逸れて変なとこに行ってしまうことを考えるとこの道を歩いて行くしかない。


 はぁ、暇だ。暇すぎてさっきよりも大分、知覚範囲は広がったし、水の操作も良くなったほどである。


 ぼーっと歩いていたところ、後ろから何かが近づいてきていることに気付いた。見えなくても分かるのは水蒸気知覚様様である。


 やっと望んでいた暇つぶしである。


 それは大きさは車よりも大きいみたいだが、しかしそれよりも遅く何か生き物が引いているようなものだった。


 遅いと言っても俺が歩くよりかは速いので、俺のことを抜いて行くことは明らかだった。せっかくの暇つぶしだが、どうやらすぐに終わってしまうようだ。


 轢かれでもしたら嫌なので、ずっと真ん中を歩いていたが端によることにする。


 それからすぐに何が近づいて来たのかが振り返って見ることが出来た。


 このことからも分かるが俺の知覚範囲はまだまだ十分とは言えなく、さらなる練習が必要だ。


 現れたのは二頭の馬が引いている一台の馬車だった。


 馬車なんかこっちの世界はもちろん、前の世界でも一度も見たことがなかったから思わず、まじまじと立ち止まり見入ってしまった。


 地面が悪いからかすごく揺れているのことが外からでもわかり、これは乗っているのはしんどそうだと思ってしまった。


 馬を操るための御者は一人の男だけ座っており、他には馬車の左右に馬に乗った人たちがいた。


 馬に乗っている人たちはどちらも男で腰には剣のようなものがぶら下がっていた。そしてどちらも顔が怖かった。


 左右の男たちのことがわからなかったのは、まだ俺自身が自分の能力を使い切れていないからであろう。馬車に夢中で気づかなかったのだ。


 馬車の中は布で覆われていて、あれが帆馬車というやつなのかな。本物を見たことがないためわからないが、全て覆われているため中に何があるのか確認できなかった。


 そこまで確認した俺は絡まれるのはごめんなので、振り返って見るのをやめて前を向いて再び歩きだした。気持ち先ほどよりも端によって存在感を薄くしようとしたが。


 いやだって顔が怖いんだよ、絡まれたくないじゃん。


 ふと、俺の水蒸気での知覚だが、馬車の荷台の中を確認できないかと思った。


 あの中も水蒸気が同じようにあるはずだし、範囲内であれば知覚できると思ったのだ。


 それに知覚出来るのであれば今後も街などで生活していく上でより便利になると思い、思い立ったが吉日という言葉もあることだし、試してみることにした。


 そんなことを考えていたこともあり、馬車は俺のことを追い越す直前まで迫っていた。


 そのことをわかっていた俺はちょうどいいとばかりに、中も様子も知覚出来るかやってみた。


 その結果、馬車の中でも普通に知覚出来ることがわかった、まぁ練習中なため精度はあまり良いとは言えないが、しっかりと中の様子が分かった。しかし問題はそこではなかった。


 まだ精度は良くないため、真横を通り過ぎて距離が近かったためわかったことだと思うが、どうやら馬車の中には子どもが何人かあるようだった。


 しかも子どもたちが入っているところは檻みたいになっていて、頭によぎったのは奴隷という言葉だった。


 それだけでは終わらず、通り過ぎて行ってしまうかと思った馬車は、なんと数メートル離れたところで止まったのだった。


 そうなってくれば後の展開なんてわかりきっていることだ。


 なので俺は馬車に合わせてその場に止まり、この後どう行動することがいいのか考え始めた。


「本当に捕まえるんです?」


「ああ、それがあいつからの指示なんだ、一応あんなやつでもあの商人の部下だからな。従わないと後で何言われるかわかったもんじゃない」


「そうですか。ガキ一人くらい無視して早く街に入った方がいいと思うんですがね」


「それは俺も思ってるよ。だからさっさと入れちまうぞ」


 馬車の方からこちらの方に来たのは、さっき馬車を挟んで馬に乗っていた男二人だった。


 まぁ予想通りだが、御者をしていた奴が俺のことを見ていい商品になるとでも思ったのだろう。


 フードも被っていなかったし、一人でこんなところを歩いているのだ。見た目からしても子どもで、こんなに可愛いんだ。とても良く目に映ったに違いないな。そのことに関しては自信がある。


 さて、こいつらがどれだけ強いのかわからないが、俺が戦ってどうにかなるのだろうか。


「おい! 嬢ちゃんも運が悪かったな。大人しく従えば痛くはしないからこの中に乗ってくれねぇかな」


「えーっと、あなたたちは誰なんですか?」


 いい感じに可愛い声が出せたな、ここはただの警戒している少女と思わせておいた方がいいだろう。


「俺たちはこの馬車の主人の護衛だ。な、俺らも乱暴にしたくはないんだ。大人しく従ってくれよな」


 一人がこちらに話しながら近づいて来て、もう一人が腰にあった剣を抜いて脅すという感じか。それに一応は質問には答えてくれるんだな。


 何か不思議と怖くないんだよな。顔は怖いが、元居た世界でこんなことになったら絶対に怖くて動けなくなると思うのだが、剣や大きい声を出されても今の俺には全く怖いという感情がなかった。


 んー、無意識にこいつらは脅威にならないと思っているからか、そういった感情が無くなっているのかわからないが、まぁ何も考えられないよりかはいいだろう。


 しかし顔は怖いと思っているのだから、どういう基準になっているのか自分のことなのにわからない。


 俺が怖がって動かないと思ったのか、腕を掴んでくる。


 それに俺は少しだけ抵抗してみせて、大きく抵抗はしないでおいた。


 俺だけならすぐに逃げ出せるし、考えていることもある。とりあえずは今は言う通りにしよう。


「ほら! さっさと歩け!」


「やめてください」


 俺のことを脅えさせたいのか、剣を持っている男が大きな声を出しているが全く怖くないな。少しうるさいくらいだ。


 顔が怖いだけでは今の俺を脅えさせるのには不十分らしい。


「おい! まだか、さっさとしろ!」


「もうすぐ終わるよ!」


 馬車の前の方から声がしたので、御者にいた奴だろう。こいつらの主人という人の声なのだろうな。


「んじゃ、入ってくれな」


 押されるように馬車というか檻に入れられた。いや、入ったの間違いか。


 檻には当たり前だが鍵が掛かっていて、普通の子どもには絶対空けられないような感じであった。


 うーん、演技はいまいちだと思っていたのだが、こんなに素直に従うやつが他にいるのかね。まぁ何も言われなかったのだからいいんだけれど。


 さてと、言われるがまま馬車の中に入ったのだが、これまたひどいな。


 中には五人の小さな子どもたちが倒れるように横になっていた。みんな俺が入って来ても反応はなく、呼吸はしているようなので生きてはいるのだろう。


 しかし服はボロボロで、身体も何日も洗っていないようで汚いと感じてしまったほどだ。


 馬車の床も洗っていないのか、すごく汚れていて、おそらくだがこの子たちは何日もの間この馬車に閉じ込められていて、外に出ることは出来ていないことは予想できた。


 そしてこの中が異常に臭いのだ。換気すらしていないのか。


 子どもたちがこの状態なのだから臭うのは当たり前と言ったらそうなのかもしれないが、もっと綺麗にしろと外にいる奴らに言ってやりたいところだ。


 まぁいい、いや良くはないが、どうせ言っても変わらないのだから現状はこのままにしておくしかないだろう。


 俺なら水で少しは綺麗に出来るがそれをやって外にいる奴らに警戒されても面倒なので、今は我慢だ。


 とりあえずはこの馬車は街に向かっているようなのでこれで街までの足は手に入れることが出来た。歩いて向かうよりかは速いだろうし。


 それにただ単にこの子どもたちを無視出来なかったということもあったが、この世界ではこれが当たり前なのかはわからないが、この惨状を知ってほっとくというのは俺には無理だった。


 この馬車から逃げ出したところでどこかですぐに同じようなことが起こるのはわかるので、色々とこれからの計画を今は考えるとしますか。


 大枠はあるが細かいことはまだ考えていないのでそこら辺を考える必要がある。


 外の様子を見ることは出来ない。水蒸気を使ってどんな感じかはわかるが、俺にはここがどこなのかわからないので結局は意味がなかった。


 どのくらい進んだのか、馬車が止まった。


 周りをみてみると、どうやら街に着いたようだった。どうやらそこまであそこから街までは離れていなかったようだ。


 街を囲うように出来ている壁なのだろうそこを通り抜けて街に入って行くようだ。この馬車以外にも人がいることがわかった。


 この現状が犯罪なのかはわからないが、どうやら普通に街に入ったらしい。


 その後はすぐに人が少ない方へと馬車は進んで行く。


 そして止まったのは三階建ての建物の前だった。


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