49話
四階層へと向かう前に一度休憩することにした。休憩と言ってもダンジョンに休憩所などがあるわけではないので、適当な場所で魔物を警戒しながらになってしまうが。
魔物が近づいて来ないようにする便利なものがあればいいのだけど、リカルドは特に何も言ってなかったし、例えあってもものすごく高価なものだと思う。
もしあればそれ持ってダンジョンに行けば、簡単に攻略できるのでは? つまりそういったことを言ってなかったってことはないのではないかな。
あったとしても運ぶことが出来ないタイプのやつかな。どちらせよあれば楽に探索できるようになるだろうな。まぁないから関係のない話だけどね。
何が言いたいかと言うと、休憩中は常に魔物が来ないように俺が周りの状況をみていないといけないのだ。
もし近づいて来てしまったらそれをリカルドに知らせてどうするか判断を委ねる。
そうするとすぐにその魔物の対処をすることになる。と言っても基本的に俺が対処することになるんだけど。
目視出来たら俺が水を生み出してそれを放つということをしている。近づかれる前に倒す、これをしないとリカルドまでも動いて魔物の対処をしないといけなくなる。
リカルドは俺とは違って、立ち上がって武器を持って近づいて倒さないといけない。しかし俺だけならば座った状態で攻撃することが出来るので、わざわざ立ち上がったり近づいたりする必要はない。
なので別にリカルドがサボっているというわけではないのだ。楽はしているが俺も練習になるし、いちいち動くのも面倒だし。
倒した魔物が残した魔石もそのままの状態で放置しているし。後でまとめて回収すればいいので意外とのんびりと出来ている。
現れる魔物も四体までしか同時に現れないので落ち着いて確実に当てていけば近くに来ることもないのだ。そういう位置に俺たちがいるというのもあるが、俺が探知に力を注げるということもあると思う。
これでわかったがこの階層までなら俺が一人でも問題なく来ることが出来る。接近戦も出来るので近づかれても問題ない。一人で来ることを許してくれるかは別だけど。
この休憩で軽めのお昼ご飯を取った。今日もお弁当は食べやすいように片手で食べられるように、パンに挟むものだった。これについてはパンが硬かったり味が物足りなかったりするが俺も食べ物を作れるわけではないので、どうしようもない。
パンを柔らかくするのをどうしたらいいのかわからないし、味付けもどれを使って作るのかわからない。ただの学生だった俺には全く役に立たない知識しか持ってないのだ。
もっと役に立ちそうなことを学んでいたらとは思うが、今それを考えてもしょうがないんだよな。今更言ってももう遅いからな。
食べ終わってからも少しだけ休憩してから、四階層へと降りて行った。
「今日はもう少しだけ潜って、暗くなる前に戻ろうと思う」
「わかった。てかどうやって時間がわかるの?」
「長年の感覚というか、何となくというか、まぁそんな感じだな」
「さっぱりわからん。私もいつかはそんなふうにわかるようになるのかね」
「そうだろうな。俺の知っている中でもわかるやつとわからないやつがいたしな」
「そうなんだ。私の場合はわからなそうだね」
そんな曖昧なことを言われてもわからないし、簡単にわかったらいいのにな。
どうしたら時間の問題が解決出来るか考えながらもリカルドの後を追って、四階層への階段を下っていった。
基本的にはこの四階層も上の階までと同じだ。この階層も少し魔物の強さと出現頻度が上がるだけで他のことは変わらない。
そして魔物の倒し方も同じである。近づいてくる魔物に俺が二体先に倒して、その後リカルドが近づいて行って倒すという流れだ。
俺が全て倒してもいいのだがそれだとリカルドがいる意味がなくなってしまうので、全て倒すことなく残している。リカルドとの連携も大事なのでそういう意味でもリカルドが倒す分も必要になって来る。
この階層も問題ないということですぐに階段のところまで行き、五階層へと降りていくのだった。
とりあえず最初の目標は八階層のボスの攻略ということなので、そのことを考えると後三階層分は行かないといけない。
今日は様子見を兼ねているので八階層までは行かないがまだそれだけあると思うと長く感じてしまう。でも次回からは最短ルートで行くことが出来るとわかったのでもっと早く着くことが出来る。
今日はこの後どうするかリカルドと一緒に悩んでいた。お昼も過ぎて微妙な時間となっているのだ。
このまま五階層を歩いてどんなものかを確かめるか、最短ルートではない道を通ってゆっくりと出口に向かって上がって行くか、という二択だった。
八階層のボスがどんな感じなのかはまだわかっていないが、それまでの階層であれば強さや出現頻度の違いはあれど大体は同じ魔物が出て来るので、どういった感じなのかということはすでにわかっている。
そしてそのことから五、六、七階層もおそらく問題なく攻略できるとリカルドも考えているようで、このまま引き返して帰るという選択もあると言ったのだろう。
確かに四階層もすぐに大丈夫だと判断したので次の階層も同じ判断になるかもしれない。それならば引き返しても良いとは思う。
リカルドの体力ということも考えたら特に疲れた様子もない感じだ。まぁ休憩中は俺が全て倒していたのだから当たり前だとは思うのだけどね。
リカルドのことを考えないでいいとなると、本当に俺の気分次第となってしまう。すでにリカルドは俺の返事待ちという態勢になっているので俺の返事を聞いてどちらにするか決めるということなのだろう。
五階層を少し歩き回って魔物を倒し、その後最短ルートで地上を目指すというものか。五階層を歩き回らずに今から引き返してゆっくりと地上へと向かう。正直言ってどちらでもいいのだが、こういう時優柔不断なところが出てきてしまい困ってしまう。
さて、どうしたもんかねー。
少し悩んだ結果、このまま引き返して戻ることに決めた。理由としてはギルドに戻って魔石を売ることもしないといけないし、どうせ明日も来るのだ、今頑張って進むよりも安全に戻る方がいいと判断した。
「ということで戻ることにしよっか」
「何がということでなのかはわからないが、帰るってことでいいんだな」
帰りの道では色んなことを試しながら歩いていた。最初に俺が攻撃するのではなくリカルドが抑えているところを当てないように魔物だけ狙うということもやってみた。しかしこれがまた難しく、思っていたよりも倒すのに時間が掛かってしまった。
まだまだリカルドと連携して倒すのは難しいようだ。魔物自体もそこまで大きいというわけではないのでこの広くない通路ではどうしてもリカルドと被ってしまう。
それでもリカルドが当てやすいように動いてくれたりしてくれるのでどうにかなっているが、どうしても動き回ることになるので中々難しい。
でもまぁこういったことは慣れとか、回数を重ねないとわかっていかないことはわかっているので、焦らずにしっかりと確認していきながら毎回戦うことにしている。
いくら俺が強くても他の人と連携できないとこれから先、ダンジョン攻略していくことは難しくなってしまうと思う。少なくてもリカルドとは上手く戦えるようにしておきたい。
今までも森では一緒に行動していたが、魔物と戦うときは二対複数というよりもそれぞれが一対複数という形になってしまっていた。唯一ゴブリンキングの時は二対一という形にはなったが、その時も俺はリカルドを巻き込むことを恐れて牽制しかできていなかった。
それではきっとこの先通用しないような魔物も出て来ると思うので、もっと頑張っていかないといけないと思ったのだった。
そんな感じで進んで行くと、思っていたよりも早くダンジョンを出て地上へと着いてしまった。行きはダンジョンがどんな感じなのかということを確認するためにも一階層に留まっていたことを考えても、俺が思っていたよりも早く着いたように感じた。
街への馬車は俺たちの帰ってくる大まかな時間は言っていたので、それほど待つことなく来て街へと帰ることが出来た。
街へと帰るとギルドに行き、戻って来た報告と魔石の売却をお願いした。この時間はまだ他の冒険者はそれほど帰ってきていないようで、まだ混んでいるという感じではなかった。それでも一定数は飲み食いして騒いでいる人たちはいるけど。
ギルドでやることが終わった俺たちはそのままギルドを出て、真っすぐと帰路に着くのだった。




