表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
46/126

46話

 俺とリカルドが屋敷に帰ると、リカルドは休憩もしないですぐに女性たちの買い物に付いて行くために一緒に外へ出て行ってしまった。


 俺はというとユアの手伝いもちょうど終わったみたいで、今日も晴れていることもあり庭でまた泡を出してそれを割るということをして遊んでいた。


 すぐに他の子どもたちもやっているのを嗅ぎつけて来て、一緒になって遊ぶことになった。


 娯楽が少ないのでこうした遊びが子どもたちにはとても楽しく思えてくるのだと思う。この世界で遊び道具は見たことがない、というかあるのかないのかさえわからないでいる。今度聞いてみるかな。


 ユアにとっても他の子どもたちと遊ぶことは良いことなので、出来るときには積極的にやっていきたいと思う。この前も一緒に遊ぶことになったが一回だけでは足りないようだったし、早く他の子とも遊んだり会話したりして欲しい。


 俺もこれが子どもたちと関わる数少ない状況になっているからな。俺に慣れてもらうという意味でも有意義な時間だと思う。


 しばらく遊んでいると女性たちとリカルドが帰ってくるのが見えた。玄関も通ることだし、ちょうど区切りが良くなるのでこのタイミングで遊ぶのは終わりとする。


「それじゃあ今日はこの辺で終わりにするね。続きはまた暇なときにね」


 俺のその言葉に素直に返事をする子どもや残念そうにする子どもなど様々な反応を見せていたが、みんな駄々をこねることなく終わることとなった。


 みんないい子過ぎてこれでいいのかとも思ってしまうが、前の世界とは環境が違うのだ。そのためもっとわがままを言うようになって欲しいとは言わないが、その分俺や大人が気を付けてみないといけないと思う。


 何かやりたいことを見つけてくれるといいのだが、それは追々ってことになるかな。


 今は先に俺のランクを上げることしか考えられない。とりあえず上げれば少しは余裕が出て来ると思う。


 色々理由はあるがとにかく早くランクを上げたいな。もしかしたらランクを上げると一人で冒険者活動出来るということもあるかもしれない。そうすれば好きなところに気にすることなく行けるようになるかもしれない。


 そんなことも考えることが出来るので、楽しみでしょうがない。


 その後はいつも通りユアと一緒にご飯を食べ、お風呂に入り、ベッドの中に入った。


 そして夜の時間を過ごし、朝となった。


 今日は本当にダンジョンへと行く日である。どんな感じなのかは大まかに説明はあったが、実際に行って自分の目で見ないことにはわからないだろう。


 今日は昨日と違って、ゆっくりすることはなく男たちと一緒に出ることになる。


 買い物に付き合う方ではないクリムとギルがダンジョンに一緒に行こうかと言っていたのだが、今日は様子見も兼ねて軽く行くだけなので大丈夫だとリカルドが断っていた。


 俺の意見など最初からないので俺も気にしない。というかしなくなってしまった。


 ダンジョンに入るにはギルドで許可をもらう必要がある。どのくらいまで行く予定ということも言わないといけない。


 急に何も言わずに潜って長い間その人のことを見ないと、その人が死んでいる可能性も考えられるのでそういった心配を無くすという意味でも報告が必要になってくる。


 おそらくは昔の人がそういったことで問題でも起きていたのであろうな。


 許可は受付で貰うので、例のごとくアーシャのいる列に並んだ。順番が回って来てやっと俺たちの番になる。


「いらっしゃいませ」


「ダンジョンに入る許可を頼む」


「かしこまりました。本日はダンジョンへ行くのですね」


 アーシャは一枚の紙を渡してきた。その紙に必要なことを書くのだろうな。行く階層やどのくらい潜っているのか、面倒そうだが決まりなら仕方がない。


 まぁ書いているのはリカルドなので俺は待っているだけなんだけどさ。


「ああ、これで頼む」


「お預かりします。大丈夫ですね。それでは気を付けて行ってらっしゃいませ」


 リカルドは特に会話することなくいつも通り行ってしまう。混んでいるのでこの対応はあっているとは思うのだが、少し寂しく思ってしまう。


 俺は一礼してからリカルドの後を追った。


 ダンジョンは街の西側にあり、街の外まではいつも通り歩いて行くことになる。そこからダンジョンへとは馬車が出ているのでそれに乗って移動できる。


 ダンジョンへと行く馬車は他のところとは違って、行く人がいると馬車を動かすというということになっている。


 しかも行く人が来てもすぐに出発するというわけではなく、少し待ってから行くことになる。


 今日は俺たちの他に行く人はいないようで、馬車は俺たちだけとなった。


 このことからもダンジョンに行く人がとても少ないことがわかる。まぁ確かに森で魔物が狩れるから行く意味がないことはわかっているが、流石に少な過ぎなのではと思ってしまう。


 馬車で揺れること数分、どうやらダンジョンに到着したようだ。


 馬車から降りるとそこは遺跡のようになっていた。とても古く、歴史のある感じのものだった。


「これがダンジョン?」


「ああ、こんな見た目だがここはちゃんとダンジョンだぞ。あそこの入り口から入るとダンジョンの中に入れるんだ」


 入り口は大きく、こんなんで本当に外に出てこないのかと心配になるほどである。まぁ出て来ることがないということなので出て来ないのだろうな。


「一階層は弱い魔物しか出て来ないから、そこでどんな感じなのかを理解してもらって。それから行けるところまで行くって感じだな」


「うん。了解」


「それじゃ、行くぞ」


 遺跡もといダンジョンの中へと入って行くのであった。


 リカルドが前で俺が後ろという形である。しかしダンジョンでは後ろに回り込まれてしまうということも起きるので、後ろの方にも注意が必要である。


 いつも通り、リカルドの腰には剣があり、今回は投げナイフもどこかに装備している。俺はマジックバックを肩にかけて、手ぶらのいつもと変わらない。


 ダンジョンの中の様子は周りの壁や天井、床は全て土で出来ており遺跡という感じは全くなくなってしまっていた。


 外見を装ってはいたが中身はただの洞窟のようだった。一応綺麗に歩きやすくなっているという点は違うと思うが、それがなければそこら辺の洞窟にいると言ってもおかしくない状態だった。


 この中も空気が通っていて、水蒸気もちゃんとあるので俺の探知は外と変わらずに使うことが出来ていた。


 そのことに安心し範囲を広げていく。俺の知覚できる範囲では迷路のようになっており、普通に歩いていたら迷うってしまう。しかし今回は地図を持っているので問題ない。


 もちろん地図を持つのは俺である。リカルドは前衛なので手が塞がってしまうというのは良くないため、俺が持つことになった。それに俺であればどこに魔物があるのかということを目視しなくても分かるということも理由の一つだ。


 見なくてもいいし、手が塞がっていても攻撃が出来る、そんな奴に地図を持たせない方がもったいないというものだろう。


 こんな感じで俺たちのダンジョン攻略は始まったのであった。


「魔物だ。前から数は一体で四足歩行のやつ」


「四足歩行というと、猪だろうな。真っすぐ突っ込んでくるのと牙に気を付けろよ」


「了解」


 進むとすぐに目視できるようになり、こっちに向かって進んできた。こいつは突進が強くなかなか正面から相手するのは面倒くさい。そのためこいつの対処法は。


 進んでくる猪をリカルドは余裕で避けて、すれ違いざまに剣を一振りした。狙った場所は後ろ脚である。脚を切られた猪は走ることが出来ないどころか、立つことも出来なくなりその間にリカルドが剣を突き刺して猪の魔物を倒した。


 倒された猪の魔物は動きを止めるとすぐに身体が全て灰になり、消えていった。その場に残ったのは小さめの魔石だけだった。


 このようにこの魔物は一回避けてしまえば横ががら空きなので動きを止めて攻撃することが大事なのである。動きもそこまで速いということもなく、真っすぐにしか来ないので準備をすれば普通に避けることが出来る。


「ほんとに消えるんだね」


「やっぱり、死体を気にする必要はないが稼ぐことには向いてないな」


 俺には初めてのことだったが、リカルドには慣れたものなのだろう。特に気にした様子もなく魔石を拾って俺に渡し、そのまま奥へと歩いて行った。


 俺も驚いたままではいられないので受け取った魔石を鞄の中へと入れ、リカルドの後を追って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ