41話
俺が霧を発生させてゴブリンキングの視界を潰して攻撃していたのだが、剣を大きく振られ俺が一回距離を取った隙にリカルドの方へと身体の向きを変えた。
そのことでリカルドの位置がわかっていることがわかった。俺の攻撃も防いでいることからもそうではないかと思っていたのだが、確信出来ないでいた。
しかし今しっかりとリカルドの方へと身体の向きを変えて向いているのでそっちにリカルドがいることがわかっていることがわかった。
少し離れたところに居るが、ゴブリンキングであればすぐにリカルドのところに着いてしまうだろう。
ゴブリンキングは真っすぐに進んで行き、リカルドに目掛けて剣を振り上げた。
それを防ぐべく俺も急いでリカルドの方へと向かった。
俺が出来る最大限に魔力を高めて身体強化をし、ゴブリンキングよりもリカルドのところへと辿り着かないといけない。
霧のせいもあってリカルドはゴブリンキングが近づいてくることはわかっても、どこから現れるのかがわかってはいないみたいだ。
このままだとリカルドが切られてしまう。そう考えると俺は余計なことを考えずにただ真っすぐ進みその攻撃を防ぐことだけを考えて進んで行った。
水の剣を伸ばして攻撃しても、背中に刺さるだけで攻撃を止めることはできないだろう。脚を攻撃してもそれは同じである。
つまり止めるにはゴブリンキングの身体を完全に止める必要がある。中途半端に止めようとしても勢いが付いてしまっていてすでに止めることが出来なくなっている。
水を爆破させてその爆風で止めるのもリカルドを巻き込んでしまうので出来ない。
すぐにゴブリンキングはリカルドのもとへと辿り着きその持っている剣を振り下ろすのが見えた時、俺は全力で足に力を入れて地面を蹴った。
「リカルド伏せて!」
ゴブリンキングを見て驚いていたリカルドはその攻撃は防ぐことは出来そうになかったが、俺の声は届いた様子で咄嗟にその身体を地面に伏せた。
これで剣がリカルドに当たるまでほんの少しだが時間が出来た。しかしそのほんの少しが今はとてもありがたかった。
俺はその時間を使ってゴブリンキングのもとまで辿り着いて、リカルドと剣の間に手を突っ込んだ。
そうして振り下ろされた剣が当たったのはリカルドの身体ではなく、俺の腕に当たることとなった。
魔力で強化していたこともあって簡単には切断されることはなく、それを見ていたリカルドの顔もゴブリンキングの顔も共に驚きの表情を見せていた。
そして俺はその突っ込んできた勢いを使って、そのまま反対の手でゴブリンキングの首を目掛けて水の剣を振るった。
すると何の抵抗もなく、ゴブリンキングの頭が宙を舞った。そして俺の腕も限界だったようで切られたところから先が地面に落ちていった。
「ふー」
やっと戦いが終わったことを感じながら気持ちを落ち着かせていき、高めていた魔力も低くしていった。
ゴブリンキングを見て改めて起き上がってくることがないことを確認してから、リカルドの方へと振り返った。
まぁ首を切って起き上がってきたらホラーでしかないのだけれど。
「大丈夫かい?」
俺は笑ってリカルドに話しかけた。
「大丈夫かどうかはお前の方だろ! レヴィ! 腕を切られたんだぞ! 早く止血しないと、早く腕を出せ!」
すごく必死な感じでリカルドは俺に言ってくる。全身傷だらけで血も出ているリカルドに言われたくはないのだが、そう言えば腕が切られていたんだっけな。
「大丈夫だよこのくらい」
俺は切られた方の腕を振りながら大丈夫なところを見せようとしたのだが。
「このくらいって腕を切られたんだぞ! 大丈夫なわけあるか!」
俺が言葉を発するたびにリカルドの機嫌も悪くなっているような気がするので、俺もこれ以上からかうのは止めることにする。
まぁ俺もリカルドに言われるまで腕がないことを忘れていたんだけどね。だって全く痛くないし、それくらい必死だったということでもあるな。
「ほら、この通り大丈夫なんだって」
俺は腕を上げながら無くなった腕より先の部分と服をもとの状態に戻して、リカルドにそれを見せてみせた。
「は?」
「すごく間抜けみたいな顔しているよ?」
それを見たリカルドはそんな表情をして固まってしまった。これはわけがわからなくて思考が停止している状態だな。
俺が冷静にリカルドの様子を分析していると戻って来たようで、瞬きをしてまじまじと俺の腕を見てきた。
「本当に大丈夫なんだな? 腕が切られたのは見間違いってことなんだな?」
「いや、本当に切られたよ。リカルドも私の腕が生えてくるのを見たでしょ」
「確かに見たが意味が分からないんだが。まだ切られたのが俺の見間違いという方が納得がいくんだがな」
言ってて思ったが面倒になって来たな。ここまでいくとごまかすのは無理だし、正直に言うか?
リカルドになら言ってもいいとは思う。これからも一緒に冒険者活動をしていくのであれば、今日みたいのではなくとも俺が攻撃を受けることはあると思うし、そのたびに何か言い訳をするのは面倒くさいから正直やりたくない。
さてなんて言うか、転生とか言ってもいいのかわからないしな。
ずっと忘れていたが俺のクラスを言えば何とかなるのではないか。それを使えば嘘かどうかの微妙なラインでの説明は出来ると思う。
俺がそんなことを考えていると、
「いや、とにかく大丈夫なのであればそれは後だ。先にゴブリンたちの魔石を回収してこの場から離れよう。ゴブリンキングがいなくなったことによって他の魔物も近くに寄って来るかもしれないからな」
そう言ってきた。そしてすぐにその傷だらけの身体を動かしてゴブリンキングの身体にナイフを突き刺した。
流石長年冒険者をやっているだけはあるな。気になっていることよりも安全を選ぶことにするその考えは学んでいきたいところだ。
「じゃあ私はあっちのゴブリンたちのものを取って来るよ」
そう言うと返事も待たずに俺はさっき倒したゴブリンたちのところへ向かった。
そして向かう途中探知範囲をいつも通りに戻して周りをみてみたが、魔物はいなかった。そのことに安心をして、魔石を回収しながらどう説明するかを考えるのであった。
もしかしたら俺に考える時間をくれたということでもあるのかもしれない。ただの考え過ぎかもしないけど。
回収し終わった後、この場から離れて休憩することにした。リカルドの身体を休める必要もあるし、あれだけ動いていたのだからお腹も減っているだろう。
水筒と弁当をリカルドに渡して俺も一息つくことにした。
「鞄の中に回復薬があると思うから、それを取ってくれ」
いつの間にそんなものが入っていたのか。俺はそれらしきものを取り出しリカルドへと渡した。
それを開けて中の液体を飲むと徐々にリカルドの身体の傷が無くなっていった。こういうものもあるんだと思い、つくづくファンタジーだと思うのであった。
それからはお互い話すことはせずに、遅めの昼ご飯を食べたのだった。
食べ終わったことを見計らってか、リカルドが俺に話しかけてきた。
「それであれはどういうことなんだ?」
やっぱり聞かれるか。流石に何も話すことなく終わるとは思っていなかったが、いざ聞かれると少し身構えてしまう。
「えーっとね。説明しますと、、、」
俺のクラスがレヴィアタンという名前で、このせいで身体が水になってしまっていること。しかし普通に生活をする分には問題ないこと。
食べたり飲んだりしなくても生きていけること。眠りに付くことが出来ないこと。
ということをリカルドに説明していった。どういう反応をするのか気になって話していたが、話しているときは黙って特に何も反応することなく聞いていた。
「そうだったのか。それにしても聞いたことがないクラスだな。しかもすごい能力だ。牢屋から出た時もどうやって出たのか気にはなっていたがそれなら納得できるな」
思っていたよりも冷静に話しているな。もっと驚きがあってもいいと思うのだが、なんというか予想外だ。
「しかしそうなると、ゴブリンキングを倒したこともそうだが、今の時点で俺よりもレヴィの方が強いということになるな。それならばランクも早く上げても大丈夫か」
あれ? そこか? まだ俺のランクを上げることを渋っていたんだな。まぁなんにせよこれでリカルドも前向きに俺のランクのことを考えてくれるであろうと考えてもいいだろう。
冒険者という人たちがこうなのか、リカルドがこういう性格なのかはわからないが、俺のことはそれ以上詳しく聞かれることはなかった。
その後はゴブリンキングのことをギルドに報告しに行くために街へと戻って行くのだった。道中本当にあんな会話だけでいいのか気にしながらも自分からは話せず、微妙な気持ちで戻って行ったのであった。




