37話
新しい朝が来た。
今日はやっと街の外へと魔物を倒しに行くことが出来る。
とは言っても、出来なかったのは昨日一日だけだったけれどね。
朝食を食べ、俺たち冒険者組は屋敷を出て、冒険者ギルドへと向かって行った。
この後は今日も昨日と同じようにユアは俺の部屋や廊下を掃除したりして過ごすのだろう。
俺も負けずに頑張らないとな。
向かっている途中、リカルドに俺のランクを積極的に上げていきたいと思っていることを伝えた。返って来た言葉は、
「けど、まだ冒険者としての知識とか経験とかないから、急がなくてもゆっくりでも良くないか?」
というものだった。
「でも昨日みたいな私だけ参加出来ないということはもうないようにしたいんだけど」
最低でもそこのラインを確保しておきたいところなんだよな。
そう思っていると後ろを歩いていた人も会話に参加してきた。
「ランクCくらいまでなら手っ取り早く上げてもいいんじゃないか?」
振り返ってみると、その声の主はギルだった。
「リカルドも昨日のあれは見ただろ、あれだけの惨状を起こすことが出来るんだ。それなら低いランクにしておくよりも少しは上げておいた方がいいだろ。知識がなければ俺らが教えればいいんだし、経験なんて数をこなさないとだめだしな」
「確かにそうかもしれないが」
お、いい感じだな。後一押しって感じか、ぜひ俺のためにも頑張って欲しい。
「それに聞いた話ではゴブリンでは簡単に倒してしまっていて、物足りないという話だったではないですか。弱い魔物を倒すのであれば、ランクを上げてからでも出来ますから上げてしまっても問題ないかと思いますよ」
クリムも援護してくれるようだ。それにほかのメンバーも頷いている。
助かる助かる。
「わかった。それじゃあ今日からランクを上げていくことを意識して依頼を受けていくことにする」
「やった!」
良かった、援護してくれたみんな感謝しないとな。
そう言えば、
「具体的には何をすればランクCになれるの?」
依頼を多く受けると上がるというのは知っているけど、具体的な内容は知らなかった。
そこら辺もリカルドに聞けばいいと、後回しにしていた。
「そうだな。基本的に依頼を多く受けるというのはもちろんそうなのだが、簡単なものばかり受けていては上がるのも遅くなってしまう。だから、ランクDの中でも難しいのを受けるということが大事になって来るんだ」
「なるほど」
「それから護衛依頼を必ず一つは受けないといけないな。ランクCにもなれば護衛依頼の数も増えてくる。だからそれが出来ることを証明しておかないといけないんだ。それに信頼ということでも護衛依頼は良い印象を持ってもらえるからな」
「そっか。護衛依頼は近場でもいいの?」
「ああ、大丈夫だ。それでも一番近いところでも一泊はする必要があるから、その時になったら色々と大変になるだろうな」
「あーそれは大変そうだ」
主にユアとか、ユアとか、ユアとかね。
まぁそこはその時どうにかするしかないだろうな。必要なことなんだし。
そんな会話をしているうちに冒険者ギルドへと着いてしまった。
「私たちも手伝いますから、気軽に声をかけて下さいね」
そんなことを言って、リカルド以外の四人はギルドの中へと入って俺たちと分かれて行った。
「んじゃ俺たちも行くか」
「だね」
一日ぶりのギルドの中へと俺たちも入って行った。
例のごとくリカルドが道を切り開いていき、依頼の張っている壁まで歩いて行った。
相変わらずの冒険者の数である。人混みは苦手なんだけどなー。
正直なところ外で待っていたいところではあるが、そういうわけにはいかないのでしょうがない。それにこれも慣れないといけない、これから先もきっと同じなのだから。
少し悩んでからリカルドが依頼を選んで受付へと向かった。
受付もいつも通りアーシャだった。
「おはようございます」
「おはよう」
「今日の依頼はこれですか」
「ああ、頼む」
「かしこまりました。冒険者カードの提示をお願いします」
そうして依頼を受理してもらって、ギルドから出て行く。
「行ってらっしゃいませ」
俺は一礼してリカルドの後を追って、ギルドから出た。これからもこの何とも言えない流れが毎朝続いて行くんだろうな。
「何受けたの?」
「森の奥の調査だ。こういったものはギルドも助かるし、ランクが低くても魔物と戦う必要がないから受けることが出来る。だから重要なことはちゃんと調査できるかということだな。こういったことも信頼に影響してくる」
「なるほど?」
「つまりちゃんと調査が出来ればギルドから信頼が上がる。だが逆に適当に調査していることがばれれば信頼が大幅に下がってしまうってわけだな」
「ランクを上げるためにはそういう依頼も大切になって来るんだね」
「そうだな。ランクを上げるにはいつも通っているギルドとは別のギルドにもこの人は上げても大丈夫だということを証明しないといけない。だからそういった依頼を受けることが必要なんだ」
面倒だが理解はできるので、少しずつだが確実にランクアップを目指していきたいと思う。
街にいるギルドであれば自分はこういう人間です、ということはわかってもらいやすいが、他のところではわからず実際にその人がどんな依頼をしているのかということだけしか見てもらえないのだろうな。
調査をするため南側の門を出て、森の奥の方まで載せてってくれる乗り合い馬車へと乗る。
今回の馬車の料金はギルドが負担してくれている。調査にはこの馬車で奥まで行かないといけないため、その分のお金は出してくれるのだそうだ。
この乗り合い馬車は一日に何度か往復しているようで、朝と日が落ちる前が一番多く馬車を動かしている。
乗り合い馬車なので知らない他の人と一緒に乗るわけだが、一緒に乗っている人たちはあまり自分から話しかけるような人が少ないようで、馬車の中では仲間内では少し話くらいで話しかけられるようなことはなかった。
俺も沈黙の中でも普通に過ごせるので、この静かな空間も苦にはならなかった。
ちなみにリカルドも同じで、あまり話すタイプではない。
森の間の道を走って行き、少し経つと馬車が止まった。どうやら着いたようだ。
俺とリカルドは南から東にかけてのゴブリンの進行があった森を調査する。
一緒にここに来た冒険者たちはいつもの狩場がここなのだろう。こちらを気にする様子もなく、慣れた感じで森の中へと入って行く。
「よし、俺たちも行くか」
「うん」
「この前と同じように、俺が前でレヴィが後ろ、そして魔物の探知を頼む」
「わかった」
そうして短い打ち合わせをした後、俺たちも他の冒険者に出遅れて森の中へと入って行った。
森の奥は街の近くのところよりも少しだけ暗く思えた。しかし多くの冒険者が入っているからか、歩きやすかった。
俺たちはまずゴブリンたちの痕跡を見つけるところから始まり、それを辿ってさらに奥の方へと入って行く。
ゴブリンたちが通ったであろうところでは、木以外のものは全て踏み倒されていて、茂みなど一切なかった。
それが広範囲に広がっていることから改めて今回の出来事はすごいことだったということがわかった。
魔物の数は普段はどのくらいいるのかはわからないけど、少なくあまり見かけることはなかった。
いたとしても遠くの方でわざわざそっちまで行き倒すほどではないということで、すべて無視をすることとなっている。
さらに奥へと入って行くが、特に何かあるわけではなくずっと同じような景色が広がっているだけだった。
ゴブリンたちが来たであろうところは、ちょうど森の真ん中、街から見て南東の方からやって来ていた。
今まであの数になるまで気が付かなかったということはここまで冒険者たちが森の中心まで来ていなかったのか、さらに奥の方でゴブリンたちがいてそこまで入って行かなかったからか。
しかし見た感じだと、森の中心部分までは確かに距離はあるが入って行かないほどの距離があるとは思えなかった。
そのため、前者の理由で気が付かなかったのは考えられないだろうな。
俺の探知範囲は他の人と比べて広いらしいが、それでも離れたところがわかるという人は多くいるので、その人たちが気が付かなかったというのは考えづらい。
ということは冒険者が普段入らないほど奥からゴブリンが出てきたことになる。
そこで疑問に感じるのはそこまで奥にいて、他の魔物に襲われることはなかったのかということだ。
あの数になれば自分たちよりも強い魔物でも数で圧倒できるかもしれないが、増える前は数は少なかったであろうことは当たり前のことだ。
そのゴブリンたちはどうやって奥の方まで冒険者たちに見つかることなく来ることが出来たのかということがわからない。
今考えても仕方がないが、どうも自然と考えてしまう。
とにかく俺たちはどんなふうになっているのかを確認して、それをギルドへと報告するということが今回の依頼内容なので、更に進んで行くしかない。
どこであの数まで増やしたのか、どうやって生き伸びていたのか、それを知ることが出来れば依頼も良い感じで終われるだろうしな。
そんなこんなでリカルドの後を追いながら、周りに注意を払い俺たちは森の中を進んで行くのだった。




