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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
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36話

 俺はユアと屋敷の庭へと出て、何で遊ぼうかということを考えていた。


 遊び道具があるわけでもないし、何か道具を使ってやるということは出来ない。こういう時ボールの一つでもあればいいのだが、今度探してみるかな。


 しかも少なくとも今の段階では俺とユアしかいないため、複数人で出来ることも二人では出来ない状態だ。目標としては他の子どもたちも巻きこんで遊びたいのだが。


 前の世界でしていた遊びなんかも、外での何も使わないような遊びは、複数人でやるものばかりで二人だとなかなか良い案が思い付かない。


 何かあるかなと、考えていたら屋敷の周りを一周して玄関のところへと戻ってきてしまった。


 俺が魔法で水を出して水遊びをするのも、そこら中が水浸しになってしまってだめだと思うし。


 んー、これなんかはどうだろうか。


 俺はそこら辺の地面に座って、手の平の上で丸い水を出した。


 そしてそこから、大きな泡を生み出したのだった。


 イメージしたのはシャボン玉である。これがまた難しく、ちょうどいい薄さに出来ずにすぐに落ちてしまったり、割れてしまったりする。


 ユアは俺のやっていることに興味津々でじっと見てくる。その期待に応えたいので俺も諦めずに頑張ろうと思う。


 数をこなしていくうちに、徐々に出来るようになっていき、ついには綺麗なシャボン玉を作ることが出来た。


 後はこれをたくさん空中に浮かべたら完成だ。


 ユアも浮かんでいるシャボン玉を見て、目を輝かせている。うずうずしているが動けない、そんな様子だ。


 そんなユアの目の前に一つのシャボン玉を持って行き、顔の前でそれを割った。


「わっ!」


 驚いた様子だったがそれが面白かったのか、俺の方を輝いた顔で見て来た。俺はそんなユアに向かって頷いてやると、立ち上がって次々とシャボン玉を割っていった。


 それに対して俺も負けじとシャボン玉を生み出していった。そしてただ生み出していくだけでは面白くないので、その出したシャボン玉を操作してユアから逃げるようにする。


 逃げていくシャボン玉を追いかけて割っていく姿はまさしく猫のようでとても可愛かった。


「とー」


「ていっ!」


「やぁ!」


 そんな声を出して割っている姿はとても楽しそうであった。


 獣族だからだろうか、飛んでいるシャボン玉を見つけては素早く移動して、良い身のこなしで割っている。


 その楽しそうな声が屋敷の中まで届いていたのか、中から子どもたちが顔を出してきた。


 身体は出さずに顔だけ出して、こっちを見ていた。


 俺は手招きをすると、気づいていないと思っていたのか、驚いた様子で顔を引っ込めたがすぐにまた顔を出してきた。


 再度手招きしてやると、少しずつだがゆっくりとこっち方へと向かってきた。


 それからは早かった。


 ユアと同じようにはしゃいでシャボン玉を追いかけては割っていく、ということを楽しそうに繰り返していた。


 俺は人数が増えたので生み出す数も増やすことになるので、少し大変で力の制御の良い訓練になってしまっていたけど。


 子どもたちの動きは時々思いもよらないような動きをするので、それを予測して逃げるというのも面白かった。


 流石に数人同時というのは厳しいものはあったのだけれどね。


 しかし俺の頑張りがあったおかげであろう。ユアと他の子どもたちが今では仲良さそうにどうやってシャボン玉を割るかを相談していたりしている。


 今からこんなことをしているなんて、将来冒険者にでもなったら有望になるに違いない。


 まぁ出来るのであれば安全な職に就いてもらいたいのだが、俺やリカルドたちのことを子どもたちも見ているから、憧れるというのは自然な流れだろう。


 特に男の子はそう言って傾向が強いと思う。


 マリーなども女性たちのこともあるので、ぜひそっち側の真似をして安全な職に就いてもらいたいものだ。


 なんというかすっかり俺もこの子たちの親目線になっていて、なんだか面白くなってしまった。


 しばらく遊んでいると、お昼ご飯の時間となり、食事が出来たことをマリーが知らせに来てくれた。


 俺たちはみんなで手を洗い、綺麗にしてから席に着いたのだった。


 朝とは違って、屋敷の中に居る人みんなで食べるようにしているらしく、今日は男たち以外で食事を一緒に取ることになった。


 俺は屋敷では夜しかみんなで食べることはしていなかったので、仲良くやっていると知れて良かった。


 リカルドたちと共に魔物を倒しに行けなかったことは残念だったが、そのおかげでこうして知らなかったことを知ることが出来て良かったと思う。


 それに俺もユア以外の子どもたちと会話できるようになれたし、ユアも少し話をしているようでそのことについても良かったと思う。


 いくら俺やマリーがいるからと言っても、同年代の友達も作るというのは大切なことだと思う。


 一緒に遊んだり、競ったりしてお互い成長するということもあると思う。


 俺やマリーだと、年上なので競うということは出来ないからな。


 こういった時間もこれからは作っていこうと思えたのだった。お金を稼ぐことも大事だが、コミュニケーションを取ることも大事だな。


 お昼を食べ終わり、子どもたちはお昼寝の時間となった。


 あれだけ遊んでいたこともあって、みんな眠そうな顔をしていた。


 ユアも少し眠たいのか、目を擦っている。


 俺はいつも通り眠くはないし、そもそも寝ることは出来ないのだがどうしようか。


 ユアも少し寝かせた方がいいけど、それには俺も一緒に行かないといけないだろうし。


 悩んだ末にマリーや他の女性たちに言われて、俺の部屋でユアを寝させることになったのだった。


「レヴィ様も一緒におやすみになってください」


 と言われたが、俺は寝れないし、疲れてもいないんだよなー。


 そのような本当のことは言うことが出来ないので、大人しくユアと一緒に俺の部屋へと行き、ユアのお昼寝の時間に付き合うのだった。


 寝すぎると今度は夜に寝ることができなくなるため、程よい時間をみてユアを起こした。


 ユアが寝ていた間、俺はいつも通り魔力の制御などをしていた。


 これに関してはかなりの上達をしており、今までの戦いなどのことを考えると俺の想像力が大事になって来ると思う。


 水は自由に形を変えることが出来るが、それゆえに自由過ぎて俺の発想が乏しいとその分だけもったいないことをしていることになってしまう。


 今度からはそっちの方も考えて行こうと思ったのだった。


 お昼寝が終わり、午後からもお手伝いをすることになった。


 場所は二階の廊下である。


 さっき俺の部屋をやった時と同じく、バケツに水を汲んで雑巾で拭いていく。


 窓の縁から壁、そして床だ。床では俺が小さいときによくやった競争するやつをユアに教えてやった。


 この屋敷の廊下は長いのでそれなりの距離をやることになるが、ユアも元気そうだし俺も疲れないので大丈夫だろう。


 ユアも一回やると気に入った様子で、もう一回! と言って二人で競争しながら廊下の床を往復していったのだった。


 後ろから見た、楽しそうに振っている尻尾は可愛かったと追記しておく。


 廊下の掃除が終わってしまえばユアの今日のお手伝いは終わりである。


 最後にバケツと雑巾をもとの場所に戻して、終了だ。


 その頃にはすでに男たちの誰かが帰ってきていたのだろう。屋敷の一階では美味しそうな匂いが漂っていた。


 そして俺たちは他にやることもないので、食堂でのんびり過ごしているとリカルドたちが帰って来たようだった。


「ただいま」


「おかえりー」


 そうするとすぐに夕食の時間へと移っていく。そこからは俺も知っている時間の流れ方だった。


 みんなでご飯を食べ、お風呂に入り、空いた時間はのんびりと過ごす。そんないつものと変わらない穏やかな時間だった。


「そうだ。今日の狩りであらかたゴブリンを倒すことが出来たからな。明日からはレヴィも外に出ても大丈夫になるぞ」


「ほんと? じゃあ明日からは冒険者活動が再開できるんだね」


 そういうことであれば、張り切っていこうじゃないか。すぐに今のランクから上のランクへと上げられるように頑張りたい。


 ユアとはまた離れることになってしまうが、ユアはもうマリーとだけしか会話できないというわけではない。


 他の子どもたちとも話せるようになったと思うし、ユアの方から行かなくとも今日の様子を見ればあっちから来そうな感じもする。


 ユアは動くことが好きなのでそこは男の子たちと仲良くできると思うし、大人しい一面もあるので女の子たちとも上手くやっていけるだろう。


 俺がまた明日から行ってしまうからか、少し不満そうな顔を見せているが、こればかりは俺もどうしようも出来ないのでそれをごまかすようにユアの頭を撫でてやるのだった。


 そうして今日も終わりを迎え、明日へと日が変わっていくのだった。


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