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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
33/126

33話

 屋敷へと戻り、その後はお風呂に入ったり、ご飯を食べたりして、みんなのんびりと過ごしていた。


 今日は魔物の進行があり、明日もまた残りを倒しに行かないといけないということで、いつもとは違い先に男たちがお風呂に入ることになった。


 いつもは子どもたちのこともあって、女性と子どもたちが先に入り、俺とユアが入り、その後に男たちが最後に入るという感じにしている。


 今日は男たち、女性と子ども、俺とユア、というような順ということになった。


 まぁいつもと言ってもまだそんなに経ってないけどね。


 俺も先に入った方がいいと言われたのだが、それだと子どもたちが眠そうでそれまで待つことが出来なさそうだったので、俺は最後でいいと言ってそういう順番になったのだ。


 俺はリカルドたちと違って明日は行くことが出来ないからな。ユアが眠くなりそうだが、その時はその時だな。


 待っている間はユアやマリーと話をすることとなった。他の女性たちは後片付けや子どたちを見ている。


「聞きたかったんだけど、帰ってくるときいつもさ、というかまだ二日だけど、ユアがちょうど出迎えてくれるのは待ってるの?」


「それはですね。なぜかユアはレヴィ様が帰ってくるのがわかるみたいなのですよね」


「え? どういうこと?」


「私もわからないのですが、ユアには不思議とわかるみたいですね」


 それは俺の匂いとか声とかが近くに来るとわかるということかな。


「なんでわかるの?」


 わからないことは聞けばいいということで、直接聞いてみた。


「んー。教えてくれるの!」


「教えてくれるの? 誰が?」


「わかんない!」


「誰だかわからないけど教えてくれるの?」


「うん!」


 さっぱりわからないな。誰がユアに教えてくれるというんだ?


 マリーの方を向いて見ても、首を振っているので誰かが近くにいるということはないのだろうし。


「私の声とか匂いとかが近くに来るとわかるとかじゃなくて?」


「んーん。なんかね、誰かがね、レヴィが帰ってくるよって教えてくれるの!」


 どうやら聞いてもわからなかったな。教えてくれるって俺たちには見えない何かが見えるのかな。


「教えてくれるって何か見えるの?」


「んーん」


 どうやらそういうことでもないらしい。よくわからないな。


 結局このことはよくわからないということで、マリーと後日リカルド辺りに話すことになった。


 なんか変なものに取り憑かれているとかでなければいいのだが。


 この世界ではそういうことも普通にありそうで怖いな。


 そこまで話していると、男たちがお風呂から上がってきたようだ。


「マリーも入って来なよ」


「そうですね。いえ、私もレヴィ様とユアと一緒に入りましょうかね。私がいなくとも大丈夫でしょうし、今日はお世話いたしますよ」


「大丈夫なら別に一緒に入るのはいいけど、お世話はしなくてもいいかな」


 あれ? よく考えれば女性の裸を見るということになってしまうのでは?


 ユアはまぁ子どもだし気にしないでおいて、これはいいのか?


 いや確かに今の俺の身体は女だから外から見たら問題ないのだろうけど、なんというか最近は女扱いされてて麻痺していたけど、これはやばいな。


 まぁいいか。うん、あっちから言ってきたことだし、俺が男だったというように言わなければばれることはないし、役得みたいな感じでいいってことにしようか。


「どうかしましたか? やっぱりお世話しましょうか? 頭から身体まで洗いますよ」


「いやいや、それは本当にいいから。自分で出来るし」


「そうですか? それは残念ですね。それでは伝えてきますね」


 どうやら一線は守ることは出来たようだな。そう言えば、


「ユアには確認取ってなかったけど、マリーと一緒に入るのでいい?」


「うん! マリーならいいよ!」


 どうやら俺の知らない間にマリーには心を開くことは出来ているらしいな。


 良かった良かった。


 とりあえずこれでまたお風呂から上がるまで、引き続き待つことになるな。


 ユアのことをリカルドに聞きたいところではあったが、今日は疲れた様子だったし、明日も忙しくなるし、ということで今日聞かなくてもいいかとマリーと話したのだ。


 さてと、何をして時間を潰していようかな。


 隣にいるユアは俺と一緒にいるだけでいいのか、ずっと俺の腕に抱き着きながら幸せそうにしているし。


 ユアとそのまま会話するのもいいのだが、なんか邪魔しちゃ悪いような気がして話しかけることが出来ずにいた。


 頭を撫でたりしてユアで遊んでいたら、マリーが戻って来たのでマリーと話すことにした。


 ユアは俺が撫でると尻尾が速く動くようになるのだ。手を離すと遅くなるのでそれを見て遊んでいた。


 マリーとの会話では屋敷での出来事や俺がいないときのユアの様子、他のクランの女性たちのことなどなど俺の知らないことを色々と教えてくれた。


 女性たちはみんな兄弟がいたり、家での家事を手伝っていたこともあって、一通りできるらしい。


 それでも得意なものが綺麗に分かれていて、掃除、料理、子どもたちの相手、それぞれ得意な人が中心になって行っているということだった。


 その話している様子からみんな仲良くやってくれているのが伝わって来た。


 みんな同じ境遇でひどいこともあったとは思うが、それでもそりが合わなく仲良く出来ないということも考えられたので、そうでなくって本当に良かったと思う。


 ギルドでの生活はどこか特殊な感じがあったし、いざ同じ屋根の下で暮らすということは、四六時中一緒になるということだから、どうしても自分が遠慮しないとやっていけないと思うのだ。


 しかしそれで遠慮し過ぎると自分にストレスが溜まってしまうため、それはそれでだめということになってしまう。


 結婚とかもそういうことが大事になって来るのだと思ったのだった。


 まぁ前の世界でもろくに恋愛さえしてこなかった俺が何を思ってるんだとは、自分でも思うけどね。


 そうして話をしていると、お風呂が空いたらしく俺たちの順番となった。


 マリーの年齢は二十歳くらいだと思う。なので俺もそんな年齢の女性一緒に入るというのは緊張してしまう。


 今もユアが早く入ろう、と引っ張ってくれていることが俺がお風呂へと向かうことができている大きな理由だろうな。


 絶対に俺が男だったことがばれてはいけなくなったな。


 服を脱ぎ、俺は脱ぐのではなく無くすだけだが、いざお風呂という戦場へと入って行った。


 お風呂での一連の流れは、いつも湯船に浸かる前に俺がユアのことを洗い、先に入ってもらっていて俺も洗ってから入るというようにしている。


 しかし今回はというと、俺がユアをいつも通り洗っていると、


「では、私がレヴィ様のお背中を流しますね」


 と、ことあるごとにマリーが俺の隙を狙っているのだ。


「いや、大丈夫だから。マリーも自分のことをしてていいよ」


 確かに洗ってもらうということに魅力を感じていないと言えば嘘になるが、今のマリーは無防備にタオルも巻くことなく裸でいるのだ。


 まだ俺の心の準備が出来ていないというか。急展開過ぎて付いて行けないというか。そんな感じなのである。


 どうしてさっき一緒に入ると言われたとき、何も考えずに入ってもいいとか言ってしまったのだろうか。


 自分でもわかっていない欲望というか、そういうのが出て来てしまったのだろうか。


 とりあえず今はこの状況を無事に何もなく終えることが優先だ。


 マリーが残念そうに洗っている自分のことを洗っている隙に、俺もさっさとユアを洗ってしまおう。


 最悪ばれなきゃ俺は洗わなくても大丈夫だと思うので、湯船に浸かってしまえば俺の勝ちである。


 え? なぜ残念そうにしているのかがわかるのかって?


 それは俺も知らない力が働いてて、目がそっちの方へと行ってしまうのだよ。ああ、異世界恐ろしいな。


 ちなみに周囲のことがわかる例のあれは何かがいるのはわかるが詳細はわからないというふうにしているので、身体のラインとかわからないのである。


 ずっと詳細までわかるようにしていると情報量が多く面倒なのだ。


 それにプライバシーは大事だしね。


 マリーよりも早く洗い終え、俺とユアは湯船へと向かって行った。


 その後すぐにマリーも終わったみたいで、なぜか俺が二人に挟まれるという形になってしまった。


 ここでも試練があるというのか。


 左にはユアが右にはマリーが座っており、しかも二人ともぴったりと俺にくっ付いてくるのだ。


 ユアはわかる、というかいつもだし。もう慣れた。


 しかしなぜマリーまでもがくっ付いてくるのだろうか。


「マリー? もう少し離れてもいいんじゃない? 広いんだし」


「いえ、大丈夫ですよ」


 何が大丈夫なのだろうか。というか俺が言ったからかさらにくっ付いてくるのは止めていただきたい。色々柔らかいところが当たっているからさ。


 えっと、ユアも対抗しなくていいからね。


 今までで一番休まらないお風呂を体験し、やっと上がることが出来た。


 その後も身体を拭くとか、服を着せるとか色々言って来て困ってしまった。そもそも俺は拭く必要もないんだよな。


 そうこうしてやっと解放されて、自分の部屋へと戻ってくることが出来た。


 ユアも眠そうだし、もう寝るかな。


 そんなことを思っていると、扉がノックされた。


 なんだろうと扉を開けてみると、そこには枕を持ったマリーの姿があったのだった。


 どうやらまだ俺の心は休まらないようだ。


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