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水しか使えない最強生物  作者: 猫宮るな
30/126

30話

 リカルドたちを街の外へと見送り、ギルドマスターに付いて行った先は、街の外に出る門のすぐ近くだった。


 街の外には出ないが、外から近いところに居るようだ。


 そこにはすでに机が置いてあり、その上にはこの街の東側から南側にかけての地図が広げてあった。


 おそらくここが作戦本部みたいな場所ということなのだろう。


 周りには数人の冒険者に普段はギルドの受付をしているアーシャの姿もあった。


 地図の上にはゴブリンたちを示すものと冒険者たちを示すものがそれぞれ置いてあり、今の状況がわかるようになっていた。


 冒険者の位置は道に沿っているのと壁の上にいるというように分かれていた。


 考えられるのは壁の上が魔法や弓矢などを使う、遠距離でも攻撃できる人たちがいて、道沿いの方は剣などの近接で戦うことができる人たちに分かれているのだろう。


 そのことはわかったが、置いてあるのは東の門から南の門までのちょうど半分いかないくらいまでであった。


 南側の方には何も置いていないので、どういうことなのだろうかと思ったが、みんな真剣な様子なので話しかけることは出来ず、聞くことはできなかった。


 俺はギルドマスターに付いて来たはいいが、ギルドマスターはここに着くと同時に指示を出したり、状況の確認をしたりと忙しそうにしていた。


 俺はその隣でひっそりと佇んでいるしかなかった。


 もしかすると、俺の気配を消す技術がこれで上達するかもしれないな。今も誰も気にすることはないようだし、なかなか上手くなっているかもしれない。


 さっきは邪魔されたが、今ならできる。


「レヴィさん、ゴブリンたちの場所はどこらへんですか?」


 またお前か、ギルドマスター。


「今、先頭がこの辺りですね」


 しょうがなく地図のゴブリンたちを動かして、その場所を教えた。


 もう少しで配置している冒険者たちのところに辿り着きそうな位置である。


 今残っているゴブリンたちの強さはどのくらいなのかわからないし、どんなふうにこの大量のゴブリンたちを倒すのかというのもわからないが、全員無事に帰ってきて欲しい。


 素直に心配しているのと、野良の住処のお金のためにも怪我することなく帰ってきて欲しいものだ。


 そうしないと俺がその減った分頑張らないといけなくなるしな。


 さて、冗談ではないような冗談を言ったところで、俺の仕事はゴブリンの位置を知らせることだけで、暇なのだ。


 なのでついついどうでもいいことを考えてしまう。


 それにしても南側といい、この東側の道も途中までしか冒険者を配置していないようだが、道を越えて北東の森の方へと入って行ってしまったらどうするのだろうか。


 南側も誰かいるのだろうか。そう言えばこの街の領主もいるのだから、そこから誰か出しているのかもしれない。


 騎士とかいるのだろうか。あの重そうな甲冑を装備しているのかな。


「ふー、とりあえずは後はゴブリンたちの到着を待つだけですね」


 どうやら準備は整ったみたいだ。


 ギルドマスターも一息ついていた。


「改めまして、ありがとうございました。レヴィさんのおかげで十分に時間を取ることができました」


「いえ、私は別に出来ることをしただけですから」


「その出来ることがとても助かったのですよ。ちょうどリカルドから報告を少し受ける前に森の奥の方に行っていた冒険者たちからもゴブリンたちのことを知りましてね。その冒険者たちは自分たちだけでは抑えることができないと判断し、真っ先に報告をしてくれたわけです」


 奥に行っていた人たちもゴブリンのことはわかっていたんだな。確かにあの数を直に抑えるというのは無理だろうな。


「しかしその冒険者たちも森からゴブリンたちが出て来ないように、何人かが一定の間隔で途中に道で残って見張ってくれていたんです。そのこともあって、街で待ち構える冒険者の数も高いランクの人も少なくなっていました」


 なるほど。一応ゴブリンたちが広がっていかないように気を付けていたんだな。


 それなら道のことを気にするというよりも、積極的に吹き飛ばしていた方が良かったかもしれないな。


 そうすれば、今よりももっと数が少なくなっていただろうし。


 知ることができなかったのはわかっているが、そう思ってしまっても仕方がないことだろう。


 過ぎたことを言ってもしょうがない。


「しかしレヴィさんが時間を稼いでいただいたおかげあって、こうして準備万端の状態で待つことができたのですよ」


「そこまで遅らせることは出来ていなかったので、私がいなくても数は多かったかもしれませんが、間に合っていたと思いますよ」


「そうですね。もしかしたら間に合っていたかもしれません。しかし冒険者がこの場所に辿り着くことができるのはギリギリで、現状のような余裕はなかったことでしょう。ですからレヴィさんの行ったことはとても助かっているのですよ」


「そうなのですか」


「さて、そろそろゴブリンたちも来ますね」


「はい」


 その返事を返すと同時に俺は机上のゴブリンの位置を動かした。


 それをギルドマスターが見ると、近くにいた伝令役の冒険者を走らせた。


 少し経った頃離れたところから、戦闘音が聞こえ始めたのだった。


 それからはギルドマスターのところに報告が来たり、その報告に対して伝令を走らせたりと、忙しくなった。


 そうなると俺の役目も無くなり、忙しそうにしている人たちの邪魔をしないように眺めているしかなかった。


 街の外の様子を確認しようとしても、正確なものはゴブリンや冒険者がごちゃごちゃしていて、何が何やらわからない状態になっている。


 大まかに説明するのであれば、俺が思っていた通り、壁の上にいる人たちは道の近くにいる冒険者に当たらないように、森の中央に向かって魔法や弓矢を撃ってゴブリンたちを倒している。


 見た感じ魔法は範囲が広いものを使っているようで、爆発するものや、広範囲を風の刃で切る人などがいた。


 そして魔法を交代で使っているようで、三交代くらいで一周する感じだ。


 あの規模であれば俺だったら連続で使うことができるが何か理由があるのだろうな。


 何が理由なのかわからないが、この状況なのだからさぼっているとかではないのだろうし、俺の知らない何かがあるのだろうな。


 それにあれは何を飲んでいるのだろうか。魔法使いたちは休憩しているときに何かを飲んでいる。


 魔法の威力を上げるものなのか、魔法に関係しているものだとは思うのだが、魔法、魔法、何だろうな。


 もしかしたら魔力が関係しているのかも。前の世界のゲームでも魔法を使うために魔力みたいなものを消費して使っていたし。


 この世界も魔力があり、魔力を使って魔法を出すという感じになっている。


 しかし俺はその魔力が無くなったことはないし、あの津波を出したときでさえそう言った感覚はなかった。


 だが、俺のこの身体は特殊だ。そもそも魔力と水で作られているようなものだし、他の人とは違うということは大いにあり得る話だ。


 つまりあの飲んでいる物は魔力を回復させるもので、交代して撃っているのはそんなに連続して撃つと魔力無くなってしまうからと考えることができる。


 このことを確かめようとしても、みんな忙しそうで聞けそうにないし、こんな時に何を聞いているのかと言われてしまうかもしれないからな。


 今は大人しくしておこう。


 次は道の方の冒険者の方を見てみようか。


 こっちの方が直接ゴブリンたちとやり合うわけなので、危険なのはこちらの方だ。


 進んできたゴブリンは街の壁へと当たり、これ以上進めないことを確認すると、横へ行き道の方へと方向を変えた。


 それによって後ろのゴブリンたちもその方向へと行けないことがわかったのか、道の方へと進路を変え始めた。


 そうして冒険者たちはゴブリンたちと正面からかち合う形となったのであった。


 ゴブリンたちの強さには問題なく対処出来ている。冒険者の方もランクが高い人を中心に倒せていっていた。


 しかしここで問題となったのは倒したゴブリンの方であった。


 倒れたゴブリンは消えることはないので、そのまま残り続けることになる。


 そのため足の踏み場が無くなり、倒せば倒すほど戦いにくそうになっていた。


 一方ゴブリンの方は倒れていった仲間たちのことなど気にした様子もなく、ひたすら突っ込んで行くというように、進んでいた。


 この様子では壁の上の魔法使いたちも魔力が無くなり、道にいる前衛職も余計な体力を使ってしまいいつまで体力が持つかどうかわからない。


 このままでは時間が経つにしたがって、こちらの方が不利になってしまうことは容易に想像できた。


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